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「カナリア」 [映画-DVD]

 

友人に薦められて「カナリア」を観た。監督は「黄泉がえり 」「この胸いっぱいの愛を 」で知られる塩田明彦である。しかし名前の通った映画よりも、むしろ「カナリア」のようなマイナー作品の方が、この監督の作家としての本質に思われる。

最初はあまり話題にならなかったが、次第に口コミで広がり、評判を聞くようになった頃には劇場公開は終わっていた。友人は数少ない(?)劇場で見た客で、彼に薦められたはいいが、しばらく観る機会が無かったが、ようやくDVDで鑑賞できた。

ストーリーは明らかにオウムをモデルにしたカルト教団に母に連れられ妹と共に入れられた主人公が、教団の崩壊後、妹だけ祖父に引き取られ、自分は関西にある児童相談所に入れられ、そこを脱走するところから始まる。逃げた直後に12歳で売春まがいのことをしている少女に出会い、彼女と共に妹を取り返そうと東京に向かう。その過程で幾つかの出会いがあり、次第に人間らしい気持ちを取り戻していくのだが、大人との距離は縮まらない。最後は祖父と対峙する事になり…。という、日本では比較的珍しいロードムービーになっている。

行き場の無い少年と少女の道行きに登場する大人の薄っぺらさ、情けなさを冷めた表情の少年と少女によって浮き彫りにされてゆく。大人に愛されない2人の心の彷徨いと再生が綴られていく。観終わった時の閉塞感と微かな希望、そして不安。いろいろな感情が折り重なって、しばし呆然としてしまった。「カナリア」は観るというより体験する映画なんだと思う。まだの人は是非体験してもらいたい。

尤も途中に現れるレズのカップルの所なんかは「何だかなぁ…」と思ったりしたが、全体的には緊張感溢れる映画になっている。

この映画の最大の魅力は主人公の2人だろう。主人公の光一を演じる石田法嗣は演技は上手くないが表情がいい。屈折した無口な主人公にリアリティーを感じさせるものがあった。そして、この映画を薦めてくれた友人の最大のお薦めの、もう一人の主人公である由希を演じた谷村美月! 男の子が無口であるため、彼女が一人で喋ってる印象があるのだが、本当に演技が上手い。男の子が静のキャラクターなら彼女は動で、ストーリーに躍動感を与える演技で映画を盛り立てている好演を見せている。昨年はライバルが多く強力だったため、あまり映画賞には輝かなかったものの、彼女はきっと日本映画を支える女優に育ってくれるものと期待したい。

カナリア

カナリア

  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • 発売日: 2005/10/28
  • メディア: DVD


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コメント 2

アンソン

 いつも鋭い似顔絵ですが、今回は
何か、藤原竜也にも見えます。
 或いは怪獣王子、子供時代のターザン?
意外に谷村は、難しいですね?
by アンソン (2006-05-20 03:35) 

丹下段平

アンソンさん、いつもコメントいただき、ありがとうございます。今回は確かに似てません! 修行して出直してまいります!
by 丹下段平 (2006-05-20 20:27) 

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