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「青燕」(@東京国際映画祭) [映画(2006)]

韓国映画の新作『青燕』を開催中の「東京国際映画祭」にて鑑賞。

1930年代、朝鮮半島が日本に占領されていた頃、空を飛ぶことに憧れていた朝鮮の片田舎の少女(キュンウォン)が、やがて日本に渡り、バイトをしながら立川の航空学校に入学。ここで才能を発揮し、学校でもトップクラスの実力者となる。同じく朝鮮半島から来た財閥の放蕩息子・ハン・ジヒョク(やがて日本帝国軍に入隊)、その訳有りの妹(元お手伝い)、朝鮮から来た学校の友人に囲まれて、貧しいながらも充実した毎日を送っている。

そんな中、全国の飛行学校の技能を争う大会が行われることになり、キュンウォンも選手に選ばれるが、直前になって外務大臣の愛人・木部雅子の横槍で代表の座を彼女に奪われてしまう。大会当日、キュンウォンの友人が練習中に墜落してしまい、彼に代わってキュンウォンが急遽代役で出場し、彼女の大活躍でチームは優勝するが、友人は亡くなってしまう。

大会での大活躍で一躍時の人となったキュンウォンは、マスコミの前で彼女の夢である祖国への長距離飛行を語るのだが、周囲から受け入れられない。一方、恋人となったジヒョクの父が衆議院議員に当選し、立川の飛行場に現れるが、ジヒョクの友人である新聞記者が…。

まず、この映画の冒頭で、家の手伝いをさせられ学校に行かせてもらえないキュンウォンが、次のシーンでいきなり大人になって、日本の飛行学校にいる大胆な省略に驚かされる。学校に行かせてもらえない少女がどうやって日本の飛行学校に辿り着いたのか、が全く描かれていない。日本での出来事に焦点を当てるための省略なのか、その部分を入れると大長編になってしまうために泣く泣く切ったのか分からないが、その間には彼女の余程の苦労と努力があったと思われるが、本当にきれいさっぱりその部分が無い。

しかも大人になったキュンウォンはさっぱりとした男勝りで明るい性格なので、冒頭の少女時代の境遇を考えると、どこかしらオーバーラップしにくい。彼女を含め登場する朝鮮出身者が皆日本での生活を楽しんでいる様子で、むしろ母国よりも日本の方が楽しそうにも見えるため、後半でキュンウォンの朝鮮への長距離飛行に対する想いが強く伝わってこない。勿論故郷の空を飛びたい気持ちはあって当然だが、故郷に良い想い出があったとは思えず、せめて少女時代の部分でひとつでも母国に対する強烈なエピソードを入れられなかったものだろうかと感じる。大胆に端折ってしまった分、この部分が薄くなってしまったと思うのだが。

と、文句を書いたものの、映画全体としてはしっかりとした作りをしており、昔の日本も頑張ってセットを組んで作っているのは伝わってくる。役者も主役のチャン・ジニョンを筆頭に好演しており、最初はライバルだが、やがて一番の理解者となる日本人の女性も見事な存在感を見せている。但し教官役の仲村トオルだけが現代的過ぎる印象で、とてもあの時代の人には見えず、せめて髪型とかもう少し何とかならなかったものなのか。そしてキュンウォンとのエピソードで、もう少し心の通い合う部分があってほしかった。

きっと膨大なエピソードを削って削って完成したのであろうこの映画、退屈はしないものの、どこかしら長編ドラマの総集編的な印象が残ることは否めない。

 


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アートフル ドジャー

 ハリウッドだと編集マンの意図とか製作会社の思惑で大胆にカットってあるけど・・・。邦画だけじゃないけど、史実に忠実に製作されてない映画って以外に多くて観てるこっちは、おおいにシラケます。 1週間ぶりの映画評楽しく拝見しました。大いに、参考にしてますんで宜しくです。 当方も音楽ネタが続きましたが久々映画評投稿しましたので・・暇な時でも、御訪問御待ちしてます
by アートフル ドジャー (2006-10-26 06:59) 

丹下段平

実は記事を書いた後からこの映画のことを調べたら、未だ日本での配給会社が決まっていない様子。それならもっと良く書けばよかったかな、と思っています。主役のチャン・ジニョンは本当に良い演技してますので、オクラになってしまうには勿体無い気がします。
最近、競馬ネタが続きましたが、まだまだ映画の記事も書きますので、見捨てずお付き合いください。
by 丹下段平 (2006-10-26 07:47) 

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