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「檸檬のころ」 [映画(2007)]

期待の若手女優・谷村美月が出演しているという一点のみで観に行った。彼女は今まで癖のある人物の役が多く、本領を発揮できるのもその方向であろうと思うのだが、この映画のポスターを見る限り、今回は普通の女の子役(何をもって普通というのかは漠然としているのだが…)という雰囲気なので、これをどうこなすのか見てみたかった。

であるから、映画自体にはそれほど期待はしていなかったのだが、これが

予想をはるかに上回るいい映画

で驚いた。

榮倉奈々演じる秋元加代子のエピソードと谷村美月演じる白田恵のエピソードが並行して進行する。この2人は同じ高校のクラスメイトという設定であるが、ほとんど交わることが無く、2つのエピソードは独立した話である。大学受験を控えた高校3年生の恋のときめきや将来の夢に心が揺れ動く様を丹念に描いている。ストーリー自体は極めてシンプルで、言い方を変えればありきたりで特筆すべきものは少ない。時代色も全く無く、制服のスカートの丈は長く20年くらい前な雰囲気。もちろんこれは作り手の意図で、平凡なストーリーに時代色を排除することによって、いつの時代にも通用する普遍的な作品となっている。おそらく20年前に観ても20年後に観ても違和感を覚えない、そんな映画である。

この映画の素晴らしさは演出に尽きる。1カット1カットに注ぎ込まれたであろう情熱は、美しく哀愁を帯びた画面に昇華されている。長回し気味のスタイルも、映画の中のリアルタイムで揺れ動く主人公たちの心の変化を捉え効果的である。特に白田恵のエピソードは谷村美月の好演もあり、退屈→ときめき、充実→落胆、絶望→希望という心の変化がリアルに伝わってくる。

監督はこの映画がデビュー作(短編は創っていたが劇場で公開される長編は初)の岩田ユキ。そのタッチや方向性から、数年後には「日本のエリック・ロメール」と呼ばれているかもしれない。

最後に唯一気になったこと。

榮倉奈々でか過ぎ。

背の高い女性が良くないというのではなく、共演者の男性と並ぶと何となくバランスが良くないのだ。カップルになっても、観ていて「この2人別れるだろうな」と思えてしまう。こればかりは本人にもどうにもならないことではあるのだが、共演者選びに注文がつく女優なのだろう。

 


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コメント 8

ta-ka-ya-0914

こんばんは。
檸檬の頃、オーソドックスでスローな映画だけど、
ホッとする作品ですね。ジャンルも展開も違うけど、
僕の中では「かもめ食堂」と同じカテゴリーです。
出演者が若く、単館系ですから、大ヒットはしないでしょうが、
監督、出演者の今後が楽しみです。

舞台が栃木らしいので、離ればなれ感が微妙に?なのと、
僕のように上京組みには響くのですが、地方の人、ずっと東京の人には
どう映るんでしょうか。

あと、確かに栄倉さんは階段芝居か、座りか、セッシュがないと辛いですね。
by ta-ka-ya-0914 (2007-04-11 02:36) 

丹下段平

コメントありがとうございました。
確かに栃木って微妙な距離ですね。それ程遠くないし。映画の中では特に栃木とは出していなかったと思いました(クレジットのみだった気が…)。特定せずにどこかの田舎町と曖昧にしたかったのだと思います。
上京組ではないので、こんな田舎の高校ライフもいいのかな~って思いましたし、上京するというエポックな出来事も体験してみたかった気がします。まぁ、無いものねだりなんですけど。
by 丹下段平 (2007-04-11 22:32) 

現象

コメント&TB失礼します。
僕もそれほど期待しないで見に行ったのですが、
思わぬ掘り出し物に出会い、晴れやかな気分で映画館をあとにしました。
榮倉奈々たしかにでかいですね。
小さい谷村美月と並ぶと異様なまでの身長差で違和感ありました。
by 現象 (2007-04-12 16:43) 

丹下段平

現象さん、コメントありがとうございました。
本当に掘り出し物って感じの映画でしたね。
榮倉奈々は相手選びが難しい女優さんですね。誰と並んでもバランスが悪くなってしまいます。使い方次第なのかもしれませんが。
by 丹下段平 (2007-04-14 00:08) 

さるぼぼ

はじめまして。
同じ感想を持つ方がいらっしゃるとは!
私も、栄倉奈々の背が大きいのに違和感を感じてました。
映画自体はすごい感動モノだったんですけど。
モデルだから仕方ないのかなぁ~。
by さるぼぼ (2007-04-15 20:22) 

丹下段平

さるぼぼさん、はじめまして。
榮倉奈々は幾つかの映画に出演しているので、多分役者志望なのでしょう(事務所の方針?)。志は良いのですがスタイルが良過ぎですね。本来誇れるものが逆に足を引っ張るってのも皮肉なものです。
by 丹下段平 (2007-04-16 01:10) 

kimion20002000

TBありがとう。
なるほど、石田君は、「カナリア」では、谷村美月といいバランスだったけど、榮倉奈々相手では、ちょっと釣りあわないかな。
電車の中で、檸檬味のリップスティックを手にとるシーンは、じーんときましたけどね。
by kimion20002000 (2007-12-21 02:45) 

丹下段平

榮倉奈々はちょっと現実離れした感じで、リアリティに欠けるイメージがありますね。一方男優陣はどこにでもいそうな雰囲気がある上、榮倉と並ぶとチンケな感じになってしまい、バランスが悪いですね。共演者選びが難しい女優だと思えます。
by 丹下段平 (2007-12-22 00:16) 

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