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「パッチギ! LOVE & PEACE」 [映画(2007)]

多くの映画賞に輝き、僕個人としても2004年度の邦画でナンバーワンだった『パッチギ!』の続編。今回は前作で主人公の恋の相手であった在日朝鮮人の女の子・キョンジャとその兄のアンソンを中心とした一家の物語。正直、この設定を最初に聞いた時の「マイナーな映画になりそうだ」と思った印象と、「単に暗い作品になってしまうのでは」と抱いた不安を胸にスクリーンに向かった。

1974年、アンソン(井坂俊哉)、キョンジャ(中村ゆり)とその母(キムラ緑子)、そしてアンソンの息子・チャンス(今井悠貴)の一家は東京に移り住んでいた。それはチャンスの病気を治す病院を探すためであった。東京でも在日朝鮮人の立場は厳しく、イザコザが絶えない。そんな争いの中、アンソンは国電の運転手・佐藤(藤井隆)と知り合う。アンソンの住む江東区枝川を訪れた佐藤は妹のキョンジャに一目惚れしてしまう。そのキョンジャは芸能プロダクションにスカウトされ、タレント活動を開始する。

そんな中、チャンスの病気は筋ジストロフィーであることが判明し、アンソンは絶望の渕に追いやられる。研究が進んでいるアメリカで治療を受けるためには大金が必要である。それでもチャンスの命を救いたいアンソンは危険な仕事に手を染めることになり…というストーリー。

前作はごく普通の日本人の高校生が在日朝鮮人の女の子に恋してしまう、というのが物語の柱にあった。これは観客の視点として感情移入しやすく、物語を観やすいものにしていた。しかもラブストーリーが話の推進役となっており、万人受けする映画となった。

しかし、今回の作品は、その柱と呼べるものが明確になっておらず、しかも難病物という設定が、さらにマイナーなベクトルに観客を引っ張り戸惑わせる。こんな設定の中では、本来はコメディリリーフとして期待されて出演しただろう藤井隆が、いくら滑って転んで笑いを取ろうとしても、ただただ空回りしているだけの印象しか残さない。

また、キョンジャの行動も今一つ理解できるものではなく、これでは感動とは程遠く、上滑りするストーリーを見守るだけになってしまった。

いろいろな事柄を詰め込みすぎた反面、明確なストーリーの柱を創り出せなかったこの作品と、素晴らしかった前作を見比べて判ったことはただひとつ。

ラブストーリーは強し!

ってこと。


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コメント 4

アートフル ドジャー

井筒さんは傑作とそ~でない作品を交互に撮りますね。前作も実はまだ見てないので、早急に観て見ます。
by アートフル ドジャー (2007-06-07 07:06) 

丹下段平

アートさんのご指摘の通り、井筒監督は傑作が続かないですね。
ただ、交互にと言うよりは傑作の数が圧倒的に少ないように思えます。見限ったところで急に傑作を創るので驚かされる、といった事の繰り返し、な気がします。
by 丹下段平 (2007-06-07 07:36) 

ジジョ

“ラブストーリーは強し!”
なるほど☆本当にそうですねー。
時代も人種も超えて共感できますよね、、、ラブ。
そして、今回のイラストも絶妙に似てますね☆☆
by ジジョ (2007-06-08 00:14) 

丹下段平

ジジョさん、ありがとうございます。
そう言えば藤井隆、『バベル』にも出ていましたね。TVの番組で歌っているところが出てました(使われただけですが)。ソフィア・コッポラの映画にもマシューが出ていたので、案外外人受けするキャラなんでしょうかね。
by 丹下段平 (2007-06-08 07:54) 

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