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「故郷」 [映画-DVD]

故郷今から10年以上前、深夜枠のテレビで観て退屈したものの、後々まで何か引っ掛かるものがあり、機会があったらもう一度観直してみようと思っていた映画が何本かある。山田洋次監督の『故郷』もそんな中の一本。

テレビで最初に観た時は、本来のシネマスコープサイズは当然モニターの枠に合わせたスタンダードサイズ。頻繁に入るCMと、時間合わせのためにカットされただろうシーン…。これで映画の良し悪しを言われてしまったら作り手はたまらないだろう。

劇場のスクリーンで観られることが映画にとっては一番良い条件ではあろうが、そんな機会は滅多にないので、今回はDVDでの鑑賞となった。シネスコサイズでノーカット。やっと本来のこの作品を観ることができた。

ストーリーは極めてシンプル。広島県呉市沖にある瀬戸内海に浮かぶ倉橋島で、小さな木造船で切り出された石を運ぶ仕事をして生活している夫婦(井川比佐志と倍償千恵子)が、大型船や陸上輸送の台頭という時代の波に押され、老朽化した船の修理代もままならず、ついに今の仕事を諦めて尾道の造船所に勤めることを決意する。そして最後の航海を終え、美しい故郷の島を後にするまでを殆どロケーションのドキュメンタリータッチで描いている。

やはり、テレビで観た時とは印象が大きく異なった。前に観た時には汚いと思った映像も実に美しかった。シネスコサイズで計算した構図を約半分のサイズに切られてしまっていたのだから、そりゃあ酷いものになってしまうのは当然の事である。驚いたのは昭和47年当時の風景を切り取ったショットがとても多かったこと。まるで主人公が故郷を失うのとリンクするかのように、失われていくだろう日本の原風景を映画に残すんだ、という作り手の気持ちが伝わってくるほどに魅力的なカットが多い。そして、映画が作られた当時は対照的に描かれたのであろう、ゴミゴミとした埃っぽい街の風景さえも、今となっては懐かしく哀愁を帯びている。

大感動する映画ではないが、心にじわりとくる作品。山田洋次監督の作品群の中では地味な一本ではあるが、紛れも無い傑作。

やっぱり映画はちゃんと観ないとね!


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アートフル ドジャー

こ~言う問題って以外に作品の良し悪しを左右しますよね~。最近、キューブリックのフルメタルジャケットをHD DVDで観たのですが・・・、本来は4:3の画角の映像を16:9の映像にした為、構図が変化した為印象が変わって、ガッカリしました。
by アートフル ドジャー (2007-06-24 20:27) 

丹下段平

アートさん、ありがとうございます。
一流のカメラマンの映像ほど、切ったり歪んだりすると構図が崩れて酷くなったりしますよね。それだけ繊細な計算で撮っているってことでしょう。逆にそうしても印象が変わらないカメラは三流の人の仕事なのかもしれません。皮肉なことですよね。
by 丹下段平 (2007-06-25 01:27) 

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