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「天まであがれ!!」 [映画(2007)]

先日訪れた浜松が舞台になっていることと、期待の佐津川愛美が出ているということで、実にひっそりと公開されているこの映画を観ることにした。

父を亡くした天馬は母と共に、浜松の母の実家に厄介になることになった。そこには祖母、叔母、高校生の従妹〈叔母の娘〉の楓(佐津川愛美)がおり、特に歳の近い楓とは直ぐに打ち解け、まるで兄弟のような関係になった。天馬の転校先の小学校で、初日からクラスのガキ大将の力也と対立。そして数日後、父の作ってくれた凧を馬鹿にされた天馬は、力也と喧嘩凧で勝負する約束をする。勢いで約束したが、父の凧を上げてみようとしても全く上がらない。困っていた天馬に通りかかりの老人がアドバイスをしてくれると、凧は勢い良く空に舞い上がった。その老人こそ伝説の凧作り名人・中山(宍戸錠)であった。頑固者で周囲から煙たがられている中山老人に弟子入りした天馬は、凧をさらに強くしていく。そして決闘当日、約束していた時間になっても中山は現れない。中山不在のまま楓に見守られ、喧嘩凧の戦いが始まった…と、物語の冒頭はこんな感じ。

浜松は凧揚げの盛んな土地で、浜松まつりでは盛大な喧嘩凧の大会が行われている。そんな風土の特徴を取り入れた地方映画になっている。天馬の父役は地元出身で元Jリーガーの武田修宏が演じている。まさに地元密着型映画である。しかし、地元に関係ない人間でも楽しめるような水準にはなっている。

実はこの水準に達するには、かなり危ういところが多い映画ではあった。予算の関係なのか、出演者の多くにシロートが混じっており、特に小学校のシーンになると、観ていて相当厳しいものがあり、目を覆いたくなる程である。主人公が小学生であるため、進行上学校のシーンは切るわけにいかない。こうなると映画としては破綻寸前である。まさに荒れた大海の中を漂う小船のような状況の映画を救ったのが、老人役の宍戸錠と楓役の佐津川愛美の熱演であったと言えよう。

この2人が出てくると急に映画は締り、物語が活き活きと動き始める。監督も当然現場でその事に気がついたのであろう。本来は凧をあげる行為で天馬の亡き父への想いが浄化される、というのが物語の核であったはずだが、楓が片思いの相手に酷い振られ方し、その悲しみを兄弟のような関係となった天馬が思いやる、という枝葉のエピソードに重点がかかるような作りになっている。しかし、それは正解で、この映画を救う唯一の方法であったのかもしれない。北朝鮮の脱北者を乗せたボロ船が、荒波を乗り越えて日本に漂着したくらいのミラクルであったのではなかろうか。実際、この映画の一番盛り上がるシーンは、楓を振った相手に天馬が復讐する場面であった。

多くの映画が公開されている中、このような小品を観に行こうという人は相当な物好きなのかもしれない。しかし僅かな役者によって物語を成立させてしまったミラクルを体験する、という観点で映画を体験するのも面白いかもしれない。強く勧めることはできないが、当たり前な映画に飽きたマニアには興味深い映画だと思う。

 


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コメント 2

アンソン

 佐津川愛美というと、丹下さんお気に入りの「ストロベリーフィールズ」に出ていたあの夏美ですね? いいですね。彼女。佐津川さんの存在が大きな作品ならば見なければいけないですね! 
by アンソン (2007-07-22 00:46) 

丹下段平

そうですね、その佐津川愛美です。
先日彼女が出ている『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』を観に行ったのですが、満員で入れませんでした。この映画での彼女への評価も上々な様子で、楽しみにしております。
by 丹下段平 (2007-07-22 01:30) 

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