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「デス・プルーフ in グラインドハウス」 [映画(2007)]

いっや~ヒドイ映画だね! (←褒め言葉)

この映画を楽しめるかどうか、は過去に観た映画の経験値がモノをいうかもしれない。60年代の終盤から70年代中頃までのアメリカン・ニューシネマと、そのブームに便乗して作られた低予算B級映画。そんな作品群を結構観ていれば懐かしく思え「あった、あった、こんなの」という気持ちにさせてくれる。この『デス・プルーフ』は2部構成で、前半があばずれ姉ちゃん危機一髪なB級サスペンス風、後半がカー・アクション満載のニュー・シネマ風なタッチになっている。まぁ、その二つの差なんてそんなにないから、急に映画が違ってしまう訳ではないのだが。劇中の会話にも出てくる『ダーティ・メリー クレイジー・ラリー』『バニシング・ポイント』辺りが好きな人なら、久々に蘇るアノ感覚を追体験できて楽しめるだろう。

僕の場合、『ダーティ・メリー クレイジー・ラリー』は中学生当時、ピーター・フォンダのファンだった同級生のKに付き合わされて観た。『バニシング・ポイント』は浪人生時分に名画座で観たのだが、その時の気分と映画の内容があまりにもマッチし過ぎて、ラストでは血が沸騰して湯気を上げた記憶がある。

元々その辺りの映画は、内容的にも興行的にも行き詰まっていたアメリカ映画界、ベトナム戦争下における社会の閉塞感、マリファナ等のヒッピー文化等が絡み合って生まれてきたものである。しかし、今はイラクの問題があるにせよ70年頃とは状況が違う。そんな中でタランティーノが創り出したこの作品は、時代が産み出したのではなく、彼個人の問題で全くムーブメントには繋がらない。

そう、これはタランティーノの大自主映画なのだ。よく他のブログで自主映画という言葉は否定的に使われているが、僕は全く逆に思っている。ハリウッド製の作品は会社側のプロデューサーの意向が強いため、結果は作り手の作家性を奪われ画一的な映画になっていく。だからルーカス、スピルバーグ、コッポラ等は自分の会社を立ち上げ、自分たちの思い通りの作品が作れるようになった。これって自主映画って事なのだと思う。タランティーノは以前から好き勝手やってきたイメージだが、さすがにこの作品は大手では作れなかった。だから自主映画。やりたいようにやってる。

僕が高校生だった頃の時代、学校の文化祭でクラスの出し物として多くの8ミリ映画が作られていた。そしてどの学校でも一本は必ずブルース・リーまがいのカンフー映画があったものだ。このタランティーノはまさにそんなノリで、

だって、こんなのやってみたかったも~ん

ってな感じで一本作っちまった。気持ちは日本中にいた偽ドラゴンたちと大して変わりがない。自分の好きなものを好きに作っただけ。

でもそれが徹底していれば芸になる。場末の名画座で掛かっている映画の感覚を再現するために、わざとフイルムに傷を入れたり、フイルムがとんだりさせている。そんな無駄とも思えるところに精力を注いでいるのが微笑ましい。

そして、特に感じたのは…

タランティーノ、やっぱりあんた同世代だよ!


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coco030705

こんにちは。
この映画の事はわかりませんが、最後の絵が
クエンティン・タランティーノによく似てます。
でも、誰かにも似てるな~。う~ん、誰とは言えないが・・・。
(三船敏郎?)(^^)/
by coco030705 (2007-09-09 15:36) 

丹下段平

ココさん、ありがとうございます。
でも、最後の絵、タランティーノじゃあありません。全然ちがいますよタランティーノは。カーと・ラッセルのつもりで描いたのですが、正直似てません。すいませんでした。次回にご期待ください。
by 丹下段平 (2007-09-10 00:29) 

coco030705

あら~!失礼致しました。<m(_)m>
ごめんなさいね。カート・ラッセルですか!なるほど似てますね。
これからもイラスト楽しみにしています。
by coco030705 (2007-09-10 17:28) 

丹下段平

その内、三船敏郎にも挑戦してみます!
by 丹下段平 (2007-09-10 22:54) 

アートフル ドジャー

この作品観ようっか?止めようか?只今検討中です。
by アートフル ドジャー (2007-09-14 21:00) 

丹下段平

この映画、わざと超B級のように作っているので、それを踏まえて観れば面白いと思います。センス悪いように見せかけて、実はいいっていうへそ曲がりなところをどう感じるのか、ですかね。
by 丹下段平 (2007-09-15 03:57) 

ももも

こんにちは。TB失礼します。

いやー道徳心のカケラもない映画でしたね!(誉め言葉)
私は「バニシング・ポイント」は観てなかったので本作を通して観たいなーと思いました。

>これはタランティーノの大自主映画なのだ

その通りですね。どのシーンを見ていても後ろでタランティーノがニヤ気テル影が見え隠れしていた気がしましたもん。
カート・ラッセル、見直しました。(笑)
by ももも (2007-09-18 15:16) 

丹下段平

カート・ラッセル、80年代頃はカーペンターと組んでB級道をひた走っていましたけど、今回は久々にハジケてましたね。
今回のキャスティングは、当時の映画へのタランティーノなりのリスペクトがあったんじゃないかなと感じました。
by 丹下段平 (2007-09-18 23:08) 

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