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「サイボーグでも大丈夫」 [映画(2007)]

見るからに韓流スターの追っかけと思われるオバサン軍団が大挙して押し寄せた劇場で、肩身の狭い居心地の悪さを覚えつつ鑑賞。直前までペチャクチャと騒々しかった場内も本編が始まると漸く静かになってくれた。

精神病院に入院したばかりのヨングン(イム・スジョン)は自分がサイボーグだと思い込んでいる。人間には心を開かないが蛍光灯や自動販売機などの機械類とには話しかけたりする少女。サイボーグである彼女は食事の代わりに電池を舐めたり触ったりして充電している(つもりでいる)。そんな彼女を気にかけるようになった同じく入院患者の青年・イルスン(チョン・ジフン)。彼は食事をしないで弱っていくヨングンに心を痛め、何とか彼女に食事させようと試みるのだが…。

まぁ、こんな単純な話じゃないんだけど、大雑把にまとめるとこうなる。何しろ主人公が精神病で、そんな彼女の妄想やら回想やらが挿入されるので一筋縄ではいかない。難解という程ではないがややこしく、とっつき難いことこの上ない。しかし、中盤から視点がイルスンに移っていく。彼は患者の中ではまともな部類なので、こちらの混乱も少なくなり、ささやかな恋物語が浮き上がってくる。イルスンはヨングンを治そうとは考えない。あくまでサイボーグと思い込んでいる彼女の気持ちを尊重して、サイボーグであるように扱い、その中で良い方向に導こうと試みる。

この二人の関係が果たして恋なのか友情なのかはよく分からない。しかし弱々しい二人が身を寄せ合う姿は儚くも美しい。とは言え、昔のATGを思わすような作りで、とっつき難い作品であることは間違いないので、観る際は頭の中がクリアになっていないと取り残される羽目になってしまうかもしれない。

映画が終わって狐に摘まれたような表情だったオバサンたち、ちょっとキビシかったんじゃないだろうか。あくまでこれはパク・チャヌク監督のクセのある世界なので、ピ(=チョン・ジフン)が観たいだけの人にはお薦めしない映画である。

 


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coco030705

こんにちは。
丹下段平さんの記事を読んでいると、かなりおもしろそうな映画だなと
思いました。最近は韓流映画はトンとご無沙汰です。前は「冬のソナタ」に
はまって、ヨンさまがいいなあとおもっていたんですが、(映画「スキャンダル」はかなり良かったと思います。)今は、ぜんぜん・・・。(^^)
この映画はDVDで見てみようかしら。
by coco030705 (2007-09-23 17:53) 

アートフル ドジャー

 韓国映画ってたまにザッピングって言うか物語の同時進行的な映画を好きで作りますよね~。サスペンスやちょっと芸術っぽい作品でその傾向っが・・。 
by アートフル ドジャー (2007-09-23 20:42) 

丹下段平

ココさん、こんにちは。
面白そうと思っていただき光栄ですが、書いた通り変則的な映画なので好みが分かれるところです。
本文ではATGと書きましたが、具体的には寺山修司辺りの撮りかたにも近い気がしました。彼の『書を捨てよ町に出よう』『田園に死す』なんかを観てみて気に入るようでしたら、この映画も楽しめると思います。
by 丹下段平 (2007-09-23 21:45) 

丹下段平

アートさん、どうもありがとう。
この映画は同時進行するタイプではありません。むしろ回想や主人公の妄想が入り乱れるので芸術映画タイプですね。名のある監督の作品は芸術映画的傾向が強くなっているような気がしますね。
by 丹下段平 (2007-09-23 21:56) 

キキ

私が行ってた先週の映画館では軍団は「HERO」に吸い込まれるように入って行ってましたよ。^・^
この映画の主演の方は人気がある方なんでしょうか。韓流には疎いんです。
by キキ (2007-09-24 08:48) 

丹下段平

僕も韓流には疎いです。でもたまたまテレビの芸能ニュースで“ピ”という韓国の歌手が来日したというのを観て、変な名前だなぁ、と印象に残っていました。こんな名前なら林家“ペー”の方がよっぽど立派に見えるぞ、と思ったものです。
by 丹下段平 (2007-09-24 10:22) 

chikat

おはようございます。
TBありがとうございました。

パク監督の復習3部作、「復讐者に憐れみを」はみていませんが、「オールドボーイ」も「クムジャさん」も嫌いな作品ではありません。
監督としては癒しの世界を描いたらしいですが、監督の癒しが受け止められず残念に思いました。
やっぱり癒しは難しいですね。
復讐なんて意外と簡単にうけいれられちゃうのに、人間って怖いです。
by chikat (2007-09-25 09:15) 

丹下段平

chikatさん、コメントありがとうございます。
癒しよりも復讐の方が単純な感情なのでしょうか。癒しとなるものは人夫々千差万別ですし。
それとこの映画の主人公の女の子はサイボーグなので(?)無表情で感情が掴みにくいため感情移入し難かったというのも受け入れにくい要因かもしれません。
by 丹下段平 (2007-09-25 23:23) 

パク ミョンミ

絵が・・・!!
美少女なのに・・・。でも、たしかにその絵のとおりです!
by パク ミョンミ (2007-12-16 19:35) 

丹下段平

髪の毛多くて、眉毛無く、無表情といった印象で描きました。
by 丹下段平 (2007-12-17 00:37) 

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