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「奈緒子」 [映画(2008)]

駅伝を題材にしたストレートな青春ドラマ。あまり今風な感じがしない分、オジサンでも素直に観ることができた。
…が、観終わって何やら釈然としないものが残った。この中途半端なモヤモヤはいったいどうしたことだろう。

あれ、これってこんな映画だったっけ?

その理由は簡単。後半、駅伝大会となり、タスキを繋いでいくランナーたちの友情ドラマとなるのだが、考えてみれば主人公はマネージャーである奈緒子(上野樹里)のはずだったのである。なのにドラマの渦中から外れ、存在感が極めて希薄になってしまっている。

『奈緒子』って奈緒子の映画じゃなかったの?

と、観客の多くがそう思ったのではなかろうか。序盤で幼少の奈緒子が雄介の父に助け出された代わりにその父が死んでしまう。時を経て高校生となり、将来を嘱望されるランナーとなった雄介(三浦春馬)と再会してもわだかまりは消えず、奈緒子は責任を感じてしまう。そのお互いの気持ちを払拭させるため、事情を知った雄介の通う高校の陸上部顧問(笑福亭鶴瓶)は、夏合宿に奈緒子を呼び寄せ臨時マネージャーをさせることにした。雄介は奈緒子を心から許せ、奈緒子は負い目を捨てることができるのか…が本来の物語の核であったのだと思われる。

しかし、天才ランナー雄介と、彼に対してやっかむ気持ちを持つ他の部員たち(柄本時生ほか)とが心をひとつにして、一本のタスキをゴールまで運び、大会に勝利することができるのか…にすり替わってしまい、奈緒子のドラマは次第にどうでもいいものになってしまっている。はっきり言えば、『奈緒子』は奈緒子抜きでも成立する映画になってしまっている。

原作のマンガは読んでいないが、多分そんなことはなかったのではなかろうか。長い原作を映画化する場合、映画の枠に収めるため、エピソードを端折ることになるのだが、この映画の作り手は奈緒子のドラマを捨て、雄介と駅伝のドラマにしてしまったのではなかろうか。

まぁ、そのお陰で古風なスポ根モノとして観られるのではあるのだが…

これで良かったのかなぁ?
奈緒子.JPG
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アートフル ドジャー

この作品って漫画が原作のモノでしたっけ・・。
by アートフル ドジャー (2008-02-29 19:37) 

丹下段平

アートさん、こんばんは。コメントと他の記事に沢山のnice!ありがとうございます。まとめて御礼申し上げます。

この作品の原作はマンガだそうです。かなり長編らしいので、映画ではよっぽどエピソードを端折っていると思われます。
by 丹下段平 (2008-02-29 22:03) 

キキ

こんにちは。
この映画は観ていないんですが、実はスピリッツは毎週買っていたので原作は読んでいました。
そして原作もただただ走っていていつまでたってもゴールすることなく、走っている間にいろんな回想が入ったりして、まったく「奈緒子」は存在しないストーリーだったので(でも最後のページには奈緒子の雄介くんに対するちょっとしたナレーションが入る・・・)段平さんの見たと通りのストーリーだと思います。
なのでかなり原作には『忠実』なんじゃないかと思いました(笑)
鶴瓶さんがコーチっていうのが一番違う感じがします。
by キキ (2008-03-01 16:45) 

丹下段平

原作から奈緒子不要だったのですか!? それは驚き。『天才バカボン』が主人公のバカボンを差し置いてバカボンのパパが主役になったのと同じ構図だったのですね。

原作を読んで映画を観ると、どうしても比べて観てしまいますよね。返って読んでいない観客の方が幸せなんでしょう。
その立場から言えば、鶴瓶良かったですよ。
by 丹下段平 (2008-03-01 22:37) 

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