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「少林少女」 [映画(2008)]

チャウ・シンチーが好きで、『少林サッカー』もお気に入りの映画だったのでこの『少林少女』を観ることにした。と書いてしまうと実にあっさりしてしまうのだが、「好き」と「観ることにした」の間に、チャウ・シンチーは名前を貸しただけじゃないのか、とか、監督が本広克行なら大した映画にならないだろう、とか予測できるのはマイナスなことばかりで不安感いっぱいであった。残念ながらこの予測はズバリ的中、いや的中どころではない

酷過ぎる

映画であった。ある程度の酷さは覚悟していたのだが、想像を遥かに超えている代物で、観終わって頭に血が上り湯気が出てしまった。この映画の劇中で先生(江口洋介)が凛(柴咲コウ)に向かって「お前は型ばかり気にして心がない」というような台詞を投げかけるのだが、その言葉をそのまんまこの映画の創り手に贈りたい。目先の派手さばかり気にして人間が描けていない、実に薄っぺらな作品である。

根本的にどうしてこんな安易で陳腐な脚本で、映画製作にGOサインが出たのか不思議でならない。最初から最後まで首を捻りっ放しでむち打ち症になりそうだった。中でも許せないのが敵役の大学学長(仲村トオル)。いったい何のためにあれだけの金と人間を使って犯罪を犯していたというのか。単なる道場破りがあれ程までに酷い仕打ちをし、しかも何の罪に問われないというのか。単に物語を盛り上げようとするために無理矢理入れた、説得力のカケラもない薄っぺらな人物像。悪人には悪人なりの論理がないといけないと思う。こんな悪役で納得できるのはせいぜい小学校低学年の子供までだろう。

それからこの作品の核になるはずのラクロス競技の扱い。これが全く活かされていない。活かされていないどころか、クライマックスがラクロス競技じゃないってのは、創り手にとってこれがどうだっていいものである意識の表れに違いない。試合の様子はエンディングのクレジットタイトルの横で後日談的に紹介されているのだが、どういうつもりでこの競技を取り上げたのか理解に苦しむ。多分創り手はラクロスがミニスカートで見栄えがするから程度の意識で取り上げ、最後まで大した意識もせずに完成させてしまったのだろう。素人の僕が主張するのもなんだが、絶対にクライマックスはラクロスの試合であるべきだと思う。

他にも、凛のスタンドプレーで試合が目茶目茶になってしまった後、メンバーから総スカンになりチームを離れるのだが、大したきっかけもない内に再び仲間に受け入れられるという安易な展開はいただけない。本来はこんな部分をしっかり描かないといけないのだと思う。その点、少し前に観た『うた魂♪』(まだ記事にしていない)は全く同じような事態に陥るのだが、こういう部分をしっかり描いていたので主人公の人間的な成長も分かり感動できるのだが、この映画のような安直な描き方だと納得しろと言う方が無理である。

まだまだ江口洋介がなんでいきなり大学のラクロス部のコーチになれるのか、とか疑問符つけたいところは山ほどあるのだが、このくらいにしておこう。とにかくこんな内容で映画を創った人たちの心の奥底にあるのは

観客をナメている

意識であろう。こんなもんでも観客は喜ぶんだよ、くらいの気持ちしか持ち合わせていないのだろう。柴咲コウ、仲村トオル、岡村隆史、江口洋介ら役者陣は体を張って頑張っているのが分かるだけに、これだけ批判するのは心苦しいのだが、

この映画は金を払って観ちゃいけない

ということだけは今後観ようかなと思っている人に伝えなくてはいけない。チャウ・シンチーは自身の名誉のためにもこの作品から名前を外すよう要求すべきである。

そして最後に宣言する

本広克行監督作品は今後一生観ない!

少林少女.JPG

余談だが、既に観ているのに記事にしていない作品が前述の『うた魂♪』など3本あるというのに、最後に観たこの映画を先に記事にしてしまった。これは早く記事を書くことで自分の中の怒りを鎮めてしまいたいという気持ちからなのだが、良い作品が後回しになってしまうとは何とも皮肉なものである。
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Kei

同感ですね~。今年の最悪映画です。ホントに、観客をバカにしてますね。
「踊る~3」も作って欲しくないです。

TBさせていただきました。
by Kei (2008-04-28 00:51) 

丹下段平

Keiさん、コメントありがとうございます。
観終わってこれほど空しい気分にさせてくれる映画も珍しいです。誠意のカケラも感じられない作品で、こんなの観てしまった自分にさえ腹が立ってしまいました。
by 丹下段平 (2008-04-28 01:49) 

丹下段平

xml_xslさん、nice!ありがとうございました。
by 丹下段平 (2008-04-28 22:12) 

キキ

段平さん、こんばんは。
いや~怒ってますね。それほど酷かったんですか。
段平さんがここまで怒るのも珍しいです。
フジテレビ制作の映画って最近は全部不調のようですが
宣伝だけは怠りないのGWで観に行く人は多いんでしょうね。
by キキ (2008-04-29 23:14) 

丹下段平

キキさん、こんばんは。
ホントに酷い映画です。多分観た人の殆どが怒ると思います。例えば『ブラブラバンバン』のように才能もお金もないってのは酷くてもしょうがないと思うのですが、このような不誠実故に酷いというのは一番頭にきます。創り手の思い上がりがミエミエで、腹立たしいことこの上ありませんでした。
by 丹下段平 (2008-04-30 02:51) 

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