「さよなら。いつかわかること」 [映画(2008)]
本当に大切な言葉ほど、なかなか言い出しにくい…『さよなら。いつかわかること』は、母親がイラクで戦死したことを娘達に告げられないでいる父親とその二人の娘たちの物語である。
スタンレー(ジョン・キューザック)は二人の娘と暮らしている電化製品の販売員。妻は女性兵士としてイラクに駐留中で、永らく家を空けている。ある日突然、スタンレーは妻のグレースが戦死したと知らされる。その現実を把握できず途方に暮れている内に娘たちが学校から帰宅する。母の死を伝えようとするが言葉が出てこないスタンレーは、娘たちと外出することにする。次女ドーンの希望で行き先は遥か彼方のフロリダにある遊園地。厳格な父の突然の行動に長女は徐々に疑問を抱き始める…という物語。
極めて深刻な現実を告げられないまま、シカゴからフロリダへと向かう母親を失った一家のロードムービーという映画。夢や希望に溢れたテーマパークに向かいながら、その先にあるのは深い悲しみというギャップがあまりにも切ない。厳格な父と二人の娘たちとの間には深い溝があるのだが、旅を続けていくうちに、スタンレーは若かりし日の自分を思い出し取り戻していく。それと同時に娘たちの気持ちが理解できるようになっていく。一方娘たちもいつもと違った父の姿を見たり、途中立ち寄った父の実家で会った叔父に、知らなかった父のエピソードを聞いたりしていく内に、少しづつスタンレーに親近感を覚えるようになっていく。母親の死を分かち合うためにはお互いの溝を埋めていく必要があったのではないかと思える。自宅のあるシカゴからテーマパークがあるフロリダまでの長い道のりはその猶予期間であり、お互いを理解していくプロセスになっている。
主役のスタンレーを演じたのがジョン・キューザック。彼が若い頃に出演した『シュアシング』から観ているが、当時は若いのに飄々としたキャラが多く、好きなタイプの役者であった。そんな彼の姿を観るのは久しぶりだったが、味のある素晴らしい役者になっていたことが嬉しい。
とても地味な作品であるが、重くも深い人間ドラマとして印象に残る。上映している劇場は限られるが、多くの人に観てもらいたい佳作である。ちなみに音楽はクリント・イーストウッド! 低予算の小品でありながら、これはかなりのサプライズ。
こんばんは。
私もジョン・キューザックはいい役者だと思います。彼が弁護士の卵か何かを演じた映画、「トゥルー・カラーズ」以来のファンで、「セレンディピティ」
「ハイ・フィデリティ」そして、ウディ・アレンの「ブロードウェイと銃弾」などが好きですね。この映画もよさそう。時間があれば見たいです。
by coco030705 (2008-05-18 22:11)
重く深い人間ドラマという表現・一度観てみたいです。
by ばん (2008-05-18 23:03)
ココさん、こんばんは。
ジョン・キューザックは『ブロードウェイと銃弾』以来でした。なぜかその間ご縁がありませんでした。当然ですが結構オヤジ臭くなっていました。
by 丹下段平 (2008-05-18 23:30)
ばんさん、コメントありがとうございます。
機会がありましたら観てください。でも、そろそろ劇場公開終わっちゃうかも…
by 丹下段平 (2008-05-18 23:32)
こんばんは。田舎なので単館系作品は上映されたとしても数ヶ月ほど先になりますが、観に行きたいです。でも、悲しくなりそう...
by nexus_6 (2008-05-20 22:29)
nexus_6さん、コメントありがとうございます。
単館系が観られるのは首都圏に住む強みですね。でも、数ヶ月先に上映されるならよろしいんじゃないでしょうか。
悲しいですが良い作品なので、上映されたらご覧ください。
by 丹下段平 (2008-05-20 23:16)