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「北京的西瓜」(今月のおススメ) [映画-今月のおススメ]

いよいよ始まる北京オリンピック。みんな活躍してほしいけど、僕は特に馬術の法華津さんに注目してるよっ!

北京的西瓜 デラックス版ってことで、8月のおススメは『北京的西瓜』。この映画を知らない人は中国映画かと思うかもしれないけど、れっきとした1989年に公開された日本映画。

尾道3部作を経て名作『異人たちとの夏』を創った大林宣彦監督が絶好調だった頃の作品。それまでファンタジー色が強かった大林監督が映画的な技法を封印してドキュメンタリータッチで撮った、どちらかと言うと地味な小品である。主演はこの後大林組の常連になるベンガル。その妻役にもたいまさこ。後は見知らぬ中国人とキャスティングも地味ながら、愛すべき佳作に仕上がっている。

北京的西瓜前売りB.JPG千葉県船橋市で八百屋「八百春」を営む堀越春三(ベンガル)の店に一人の中国人留学生が訪れる。日本の物価が高く生活が厳しいのでまけてほしいというのだ。春三がただ同然で野菜を売ってあげる。それをきっかけに春三は中国人留学生に援助を始める。さらに旅行に連れて行ってあげたり、何かと面倒を見るようになると、近所からは変人扱いされてしまい、家計も赤字になってしまう。最初にいた留学生が帰国した後も、次々と話を聞いて来日した留学生から頼りにされるので、一向に中国人との交流は終わることがない。いつしか春三は中国人留学生から「日本のお父さん」と呼ばれるようになり絶大なる信頼を得るのだが、堀越家の家計は遂に破綻してしまう。堀越家のピンチを知った中国人留学生たちは「八百春」のために立ち上がるのだった…というお話。

これが実話なのだから凄い。こんなに自分を犠牲にして見ず知らずの異国の人に献身的な対応する日本人がいたことに素直に感動してしまう。そして物語はこの後堀越夫妻は帰国した中国人留学生に招かれ北京に向うのだが、このシーンを撮る前にとんでもない事件が実際に中国で起こってしまう。1989年6月の「天安門事件」である。大林監督はこの事実を映画に取り入れるという大胆な試みをした。主演のベンガルにその事実を観客に向って語らせ、物語は再開するのだが、ドキュメンタリー的に技法的なものを廃したドラマに本物のドキュメンタリーが入り込む二重構造で、本来なら素直に感動できたはずのシーンが途端に社会派の雰囲気になってしまう。これは普通の監督なら何食わぬ顔で脚本通り撮るのだろうけど、さすがは自主映画出身の大林監督。アンダーグラウンド的なものを取り入れて他に類を見ないような作品に仕上げ、人情喜劇的な題材ながら一線を画す映画となった。

大林監督のフィルモグラフィーの中では異色作なのだが、僕はこの作品が大好きである。

北京的西瓜.JPG


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