「イントゥ・ザ・ワイルド」 [映画(2008)]
こんな僕でも(?)若い頃に「自分は親の言いなりになって敷かれたレールの上を走らされてるだけじゃないのか?」なんて青臭いことを思ったことがある。この『イントゥ・ザ・ワイルド』の主人公クリストファー・マッカンドレス(エミール・ハーシュ)はそれに加えて家庭環境も複雑だったために、大学を優秀な成績で卒業した直後に父親(ウィリアム・ハート)に反発しドロップアウトして失踪、2年かけて全米を彷徨った最後に辿り着いたのがアラスカの荒野だった。そこで置き去りにされた廃バスを見つけて住み着いて原始的な生活を送る様子に、卒業から失踪してアラスカに辿り着くまでの様子がカットバックされる。
人の気配が全くないアラスカの荒野と空虚な主人公の心の中が重なり合い、カットバックされるクリストファーが出会った人々の喪失感も交じり合い、何とも言えない孤独感に満ち溢れた空気が漂う。こんな世界で彼が何を求め、何を感じ、何を見つけたのかが映画の核になっている。
『イントゥ・ザ・ワイルド』は1992年に実際に起こった出来事を、後にジョン・クラカワーによってまとめられたベストセラーになったノンフィクションの映画化で、感銘を受けたショーン・ペンが映画化権を取得して自らメガホンを握った作品である。ハリウッドの問題児と呼ばれた(今も?)彼が共感して執念で映画にした背景には、ショーン・ペン自身の心情にも重なり合う部分が大きかったのだろう。常にエキセントリックに見えた彼の心の中にも荒野が広がっていたのだろうと思える。アメリカの原風景のようなアラスカの荒野で撮影する彼の心の内にあったものは何だったのだろうか。
どこかアメリカン・ニューシネマ時代の作品に通じるような、インディペンデッドなロードムービーはハリウッド製とは一線を画する娯楽性のカケラもない映画ではある。しかし万人向けとは言えないものの、ショーン・ペンの押さえた静的な演出とエミール・ハーシュの体当たり演技もあり、誰もが抱える心の襞に刺さり込むような作品として印象に残る佳作になっている。
今は敷かれたレールを走っていますか?
by ばん (2008-09-15 21:37)
「心の中の荒野」ですか・・・・・
見に行かなくちゃいけないような気がしてきました。(見に行く積りの作品ばかりが増えていく~w)
「幸せの1ページ」を止めてこっちにしようかな^^
by マヌカン☆ (2008-09-15 22:34)
ばんさん、こんばんは。
まぁ、自分なりに走っているとは思います。時折脱線もしますが…
by 丹下段平 (2008-09-15 23:38)
マヌカン☆さん、こんばんは。
幾つかのブログを読むと、女性よりも男性の方が受けがいい様子ですね。ちょっと女性にはこの主人公の行動が理解し難いように映るようです。
個人的には『幸せの1ページ』よりもお薦めですが、絶対ではありません。
by 丹下段平 (2008-09-15 23:41)
これは観に行きたいです。
ハリウッドと対極にある、内省的な映画のようですね。
by nexus_6 (2008-09-16 12:45)
nexus_6さん、こんにちは。
機会がありましたらぜひご覧ください。
by 丹下段平 (2008-09-17 08:47)
こんばんは。
>ショーン・ペン自身の心情にも重なり合う部分が大きかったのだろう
そんな感じがしますね。
過去の監督作とは違うタッチの作品でした。
by hash (2008-10-05 01:22)
hashさん、ありがとうございます。
ショーン・ペンの乱暴な言動は彼の繊細な神経の裏返しだったような気がしますね。
by 丹下段平 (2008-10-05 01:40)
こんにちは☆
すっかりごぶさたしておりました!
>ショーン・ペンの押さえた静的な演出
↑このあたりが、ショーン・ペン、、、大人になったな〜と、
妙に感慨深く思いつつ観てました(^-^;
by ジジョ (2008-10-17 05:28)