「落下の王国」 [映画(2008)]
まだ映画がサイレントだった時代のアメリカ西海岸の病院。農作業中にオレンジの樹から落ちてしまい腕を骨折して入院している5歳の少女アレクサンドリア(カティンカ・アンタルー)と、映画の撮影中に橋から落ちて大怪我を負いベッドに寝たきりのスタントマン・ロイ(リー・ペイス)との交流に加え、ロイがアレクサンドリアに語るおとぎ話との二重構造になっており、現実世界の人々がおとぎ話の出演者にもなるという、『オズの魔法使』以来ありがちなパターンだが、ユニークな構成になっている映画である。
現実社会のロイは大怪我以上に恋人を主演俳優に奪われて自暴自棄になっており、アレクサンドリアをおとぎ話でてなずけ、彼女に薬品室から自殺するためのモルヒネを盗んでこさせようと画策している。彼女の興味をひくためのおとぎ話はロイの思いつきだなのだが、彼の心情の変化で酷い話になっていったりするのをアレクサンドリアが物語にも入り込んで修正しようとする様子が健気である。その内容は黒山賊ら6人の戦士が暴君のオウディアス総督を倒しにいく物語。黒山賊はロイ、オウディアスはロイの恋人を奪った俳優が演じている。
こんなユニークな映画なのだが、どこか物足りなさを感じてしまった。ロイによって語られるおとぎ話の映像は、監督のターセムがCMやPVの作家だったためかスタイリッシュで美しく見事な出来で、石岡瑛子のコスチュームも素晴らしいのだが、語られる話自体に深みを感じられないのが物足りない最大の原因だったように思える。語り部たるロイの気持ちの持ちようで変化するストーリーから得られるものが殆どなく、絵空事に留まってしまっている印象である。また、自殺を試みるロイの悲しみの深さが、観客からすれば自殺することもあるまい、と思えてしまうのも映画の興味を削いでいる。もっと絶望の渕にあるような設定ならば、語られる話にもフィードバックして、思わず応援せずにはいられない気持ちにさせてくれたのではないかと思う。
もうちょっと上手くやれば傑作にもなり得た映画だったのではなかろうかと思えるのが、凄く残念である。
昨夜のスマステの月イチゴローで、この映画が1位でした。
仙台だと来週末辺りから公開されるはず。
興味はあるので、これは観てみようと思います。
by ときソラ (2008-09-21 18:34)
映像は見所のある映画だと思います。
ときソラさんは仙台なんですね。
by 丹下段平 (2008-09-21 23:13)