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「櫻の園」(2008) [映画(2008)]

櫻の園前売りB.JPG1990年に創られた前作を封切り当時に観ている。お嬢様学校の創立記念日に演劇部によって必ず上演される『桜の園』。舞台の幕が上がるまでの1日の出来事を丹念に綴った、騒々しくも穏やかな時間が流れる中に、インモラルな含みを持たせた出色な出来で、映画を漂う空気に魔力さえ感じられるような不思議な作品であった。そして、その監督である中原俊が18年ぶりに再び挑むセルフリメイク作品。果たしてあの1990年度版を超えることが出来るのか…

とまぁ、そんな興味を抱いて観たのだが、タイトルは同じながら、映画自体はセルフリメイクではなく、同じ高校の演劇部が舞台ながら、時代を経た今の演劇部であり、姉妹編と言ったところ。出てくる役者も前作のようなリアリティを感じられるようなタレントではなく、オスカープロモーションのタレントの顔見世興行のようであった。

音楽の道を諦め、名門お嬢様高校に転入してきた結城桃(福田沙紀)。堅苦しい校風に馴染めず、嫌気がさした時に見つけた「桜の園」の古びた台本。調べてみると以前は創立記念日の恒例行事として演劇部によって上演されていたものであったが、ある年に部員による不祥事のために上演できなくなり、それ以来封印されてしまったことが分かった。しかも上演中止になった年には担任の坂野先生(菊川怜)や姉の杏(京野ことみ)も係わっていたらしい。桃は同級生の赤星真由子(寺島咲)や学園のアイドルの葵(杏)らと共に、学校に内緒で『桜の園』を上演しようと張り切る。しかし彼女らの行動が厳格な教頭(富司純子)にばれてしまい…というお話。

物語自体は悪くないし、前作を知る者にとっては「あれから数年後の話」というのは興味を持たせてくれるものであった。しかし…

何かが足りない

ように思えた。前作のような魔力を感じられないのは何故か。タレント臭さが漂う役者が多数出演していたため、リアリティが希薄になってしまったせいなのか、あるいはお嬢様学校の世界観が今の時代とはかけ離れてしまったためなのか。

それらはどちらも当て嵌まっているような気はする。しかし、根本にあるのは中原監督の「やる気」の違いだったような印象を受けた。前作が「やりたくて創った」作品だとすれば、今回は「依頼があったので創りました」というスタンスであったような気がする。おまけに無理して出さなければならないタレント(米倉涼子や上戸彩など)が何人もいて、あまり気乗りしなかったのではなかろうか。1990年度版とは別の物語なのだから比較すべきものではないのかもしれないが、タイトルが全く同じなのだからしょうがない。比較は覚悟の上で同じタイトルにしたのだろう。

残念ながら前作のような魔力はなく、数段落ちる出来。前作を知らなければ受け止められるのかもしれないけど…

櫻の園.jpg


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コメント 4

マヌカン☆

予告編を何度かみた限りでは「見ごたえ有りそうかな、でもスルーだなぁ」だったのですが、やっぱりスルーでよさそうですね。
だけど、代わりに 元の映画を見たくなりました^^
by マヌカン☆ (2008-11-20 08:56) 

baldhatter

お引っ越しも一段落したご様子。何よりです。

タイトル作、前作は観ました。映画としてはいい出来だと思いました(特に、邦画が少しずつ復調しつつある時代だったので)が、吉田秋生の原作が頭にあると、やはり原作付き映像化の限界を感じてしまいました。
by baldhatter (2008-11-20 17:06) 

丹下段平

マヌカン☆さん、コメントありがとうございます。
この作品はスルーしても特に問題ないと思います。旧作は機会がありましたら観てみてくださいね。
by 丹下段平 (2008-11-20 23:21) 

丹下段平

baldhatterさん、ありがとうございます。
ようやく自宅でインターネットができるようになりました。しかし、まだ新しいパソコンに慣れないため、イラストも上手く描けません。もう少し時間が経たないと完全復活とは言えない状況です。
by 丹下段平 (2008-11-20 23:25) 

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