「プライド」 [映画（2009）]
どうも入場料の割引デーになると普段なら絶対に観ないだろう作品を観てみよう、って気になってしまう。で、選んだのがこの『プライド』。少女漫画界の重鎮一条ゆかり原作で、ポスターを見る限り「女のプライドを賭けた争い」って感じがベタに伝わってくる。しかも主役のステファニーがいかにも少女漫画キャラだったりするので、いかにも、ってのが時代錯誤的で、「期待できないけどネタとしては面白いかな」なんて、完全にナメての鑑賞となった。
麻見史緒（ステファニー）は豪邸に父と2人住まいの超セレブ音大生。そこにハウスクリーニングのアルバイトで訪れた緑川萌（満島ひかり）。今夜のオペラのチケットが一枚余っているので2人で観に行くことになりとトントン拍子でストーリーは展開する。萌も音大生で、史緒と同じ目標を持っている。オペラが上演されている劇場で出会った史緒の知り合いのセレブぶりに驚き、史緒も伝説のオペラ歌手である故・木原さわこの娘だと知った萌は自分との身分の差を痛感しショックを受ける。
で、この後、史緒の父（ジョン・カビラ）の会社が倒産し、お金のなくなった史緒は念願の留学を果たすため、教授（由紀さおり）の薦めで、優勝するとウイーンに留学させてくれる音楽コンクールに出場することになるのだが、会場には萌の姿もあり…と予想通りの展開。
ここまで観ると高慢ちきな山の手のお嬢さん対下町の可愛い苦学生というベタな構図に思える。二人が夫々通っている学校も三田音大と千住音大と、東京の人ならそのニュアンスが分かる地名が付いている。おそらく多くの人が萌に肩入れしたくなる設定ではあるが、ここから予想を裏切る進行を見せる。この後、萌は表裏の激しい性悪な本性を曝け出していくのである。
まぁ、ここまでの僕の拙い紹介で、読んでくれた人がどんな印象を受けたか分からないが、とにかく出てくる役者がベタな臭い演技を見せてくれる。金持ちはいかにも他人を見下したように振舞い、誰にでも分かりやすい嫌らしさ。まるで昔の大映テレビのドラマを観ているかのような感覚が蘇る。話も金持ち対貧乏人という両極端な分かりやすさ。もうベタベタである。
でも、この映画を否定していると誤解しないでいただきたい。実はこれが
超ハマリ系映画
で、かなり面白かったのだ。演技が臭いとかステレオタイプで御都合主義な物語なんて言葉を無意味なものにするほどの熱気に圧倒される。オペラ以外はちゃんと歌っている二人の歌唱力も素晴らしい。臭い演技と書いたが、配役が見事過ぎて（銀座のクラブのママに高島礼子、レコード会社の御曹司に及川光博なんてまさにピッタリ！）、尚更臭みが出てしまうのかもしれない。
特筆すべきは萌を演じた満島ひかり。彼女の存在がなければ絵空事のつまらない作品になっていたことだろう。天使のような可憐さが一転、悪魔のような邪悪な顔に変貌する凄まじさ。「ヒース・レジャーか満島ひかりか！」は褒め過ぎにしても、大魔神もびっくりの二つの顔。映画がここまで盛り上がったのは彼女の功績が大である。満島と比べると大根なステファニーも、それがお嬢様特有のおっとり感に思えるので、これくらいで良かったのかもしれない。それにしても主役二人のどちらにも共感できないのに先が気になる作品に仕上げた金子修介は凄い。いや、凄いのは一条ゆかりの原作の方か。
大袈裟な芝居、分かりやすい人物像に素敵な音楽が加わり、まるで歌舞伎のようなケレンのある大衆娯楽作になっている。僕自身、こんなに夢中で見入ってしまうとは予想すらできず、終わった後はかなり圧倒されていた、ホントビックリな作品。物語はまだ完結しておらず、続きが創られるのか分からないのだが…
早くこの先を見せてくれ～！
とっても見たくなってしまいました・・・・・・
普段だったら全く興味を持たないジャンルの映画なのですが (~ヘ~;)ウーン
by マヌカン☆ (2009-02-08 23:04)
騙されたと思ってチャレンジしてください！
by 丹下段平 (2009-02-08 23:16)
あらためて17インチの画面でこのイラスト拝見していると 怖いです（笑）
by マヌカン☆ (2009-02-10 00:47)
実物はもっと怖いのでお楽しみに、と言いたいところですが、上映はかなりの地域で終了しているようなので、レンタルDVDが出たら観てみてください。
by 丹下段平 (2009-02-10 01:01)