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「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」 [映画(2009)]

観る前に期待のハードルを思いっきり上げてしまい、良作ながらそのハードルを越えられなかった…『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は僕にとってそんな映画である。

老人の体で生まれ、年齢を重ねる毎に若返っていくベンジャミン・バトン(ブラッド・ピット)の誕生から死まで、そのタイトル通り数奇な生涯を描いた作品である。

死の際にある老女デイジー(ケイト・ブランシェット)が、ベンジャミン・バトン自身がまとめた半生記を娘に読んでもらう構成になっており、第三者的な視点が入る分、感情的になり過ぎず、文芸調な落ち着いたトーンになっているのが丁度良い。「老人から若返っていく」という、ある意味難病モノではあるが、その運命を受け入れて逞しく生きていくベンジャミン・バトンの姿に心打たれる。愛するデイジーと40歳でお互いの年齢が釣り合い、子を授かり幸せの絶頂で将来を考えると別れなくてはならない運命の悲しさ。共に人生を歩んでいけない辛さが哀れである。

では、なぜ高くしたハードルを越えなかったのかと考えると、明確な答えが浮かんでこないのだが、おそらくベンジャミンの悲しい運命を見せることが、当り前の人生を送る僕に普遍的な人生の素晴らしさや儚さまで還元してくれなかったからではなかろうか。主人公の悲しき運命が病による特殊な事情によるもので、観ているこちらの人生から多少の距離感があった印象になってしまったことが残念である。もしかしたら僕はかなり無理な注文をつけているのかもしれないが、観る前の期待度がマックスだったので、そう感じてしまったのかもしれない。

それにしても老人から若者まで一人で演じたブラッド・ピットのメイクは凄い。老人の姿の時の小さな体はどのように撮影されたのだろうか。顔だけならメイクの技術で何とかなりそうにも思えるが、全身となると想像の範疇を超えてしまう。しかもそれが全く不自然に見えないことは驚異的である。物語よりもそちらの方に気を取られてしまったのも作品にとってはマイナスだったのかもしれないが。いずれにしてもこのような不思議な話を美しい映像で見せてくれたデビッド・フィンチャー監督の手腕は確かなものであった。

ベンジャミンバトンB.gif

去年観た『僕らのミライへ逆回転』ってタイトル、こちらの映画の方がピッタリに思ってしまったのだけど、ど~でもいいことですよね、ハイ。
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コメント 2

hash

こんばんは。
>そちらの方に気を取られてしまった
オスカーでも技術賞のみの受賞に終わりましたが、映像の印象が強すぎるのかもしれませんね。
by hash (2009-03-09 01:39) 

丹下段平

hashさん、こんばんは。
メイクやCGがあまりにも見事すぎて、「これ、ど~やって撮ったんだろう」ってなことが気になってしまいました。
あまり高度過ぎるのも考え物ですね(って僕だけかな、こんなこと考えてたの)。
by 丹下段平 (2009-03-09 01:54) 

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