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「ミルク」 [映画(2009)]

初めてゲイのデモ行進のニュースをテレビで目にしたのはいったいどのくらい前だっただろうか。それがこの映画の主人公であるハーヴィー・ミルクによってのものだったかは定かではないのだが、極東の一少年の目には異様な光景に映った。いかにもアメリカ的だという印象とともに、正直なところ嫌悪感も抱いたものだ。もしリアルタイムでこの様子を目の当たりにして、すんなりと受け入れたと言う人がいたら、それは立派だとは思うが、ちょっと偽善的じゃないのかと疑ってみたくもなる。そんな世間的な差別と最初に表立って戦ったのがハーヴィー・ミルクである。

ハーヴィーは1978年に凶弾に倒れ、命を落としている。そのことはおそらくアメリカ人なら多くの人が知っている事実なのだろうが、僕は何となく程度にしか認識していなかったのが本音である。この作品でもそのことは最初に表しているので、ハーヴィーの最後は周知の事実として描かれている。ハーヴィー(ショーン・ペン)が1972年に男の恋人(ジェームズ・フランコ)と共にニューヨークからゲイのメッカであるサンフランシスコに移り住み、そこを起点にやがて政治活動を始め、何度か議員に立候補するが落選続き。ようやく1977年にサンフランシスコ市政執行委員に選出されるも、翌年元同僚のダン・ホワイト(ジョシュ・ブローリン)に射殺されるまでの物語。これを最近ではメジャーから遠ざかった感のあるガス・ヴァン・サント監督が、ドキュメンタリーフイルムも交えながら克明に描写している。

役者も実力者を的確に配し、主役のハーヴィー・ミルクを演じたショーン・ペンはこの作品でアカデミー主演男優賞を手にしているので当然だが、ショーン・ペンが監督した『イントゥ・ザ・ワイルド』に主演したエミール・ハーシュや『ハイスクール・ミュージカル』で人気が出たルーカス・グラビールなど、若手俳優もハーヴィーを支える役で出演しているのが嬉しい。

差別と闘うハーヴィーの姿は実に感動的であるが、果たして今現在はどこまでそれを払拭できたのか。ある意味、これを観た観客が己の差別意識と向き合うきっかけを与えるという意図が、この作品の作り手、そしてハーヴィー・ミルクの願いなのではなかろうか。

ミルク.gif


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コメント 6

ばん

普通のデモ行進はよく目にしますが、ゲイのデモ行進はなかなか日本では目に出来ませんね。
by ばん (2009-04-22 09:23) 

丹下段平

やはり日本はアメリカに比べればまだ封建的な風土が残っているからでしょうね。それでもテレビを観るとそんな人も多くなってきている気がします。
by 丹下段平 (2009-04-22 22:04) 

コッスン

ショーン・ペンのゲイの演技は、結構好感もてました。
ジェームズ・フランコを本当に愛してるように見えました。
また、逆にジェームズ・フランコは年下なんだけど
頼れる感じで、でもヤキモチ焼いてたり。(笑)
キスシーンは、そういう意味で良かったです。

あの当時のアメリカのノーマルな人々の
ゲイに対する態度はひどいですね。
すべての人間は平等と言ってるのにね。
by コッスン (2009-04-23 20:16) 

丹下段平

確かに当時は酷い扱いをする人が多くいたのでしょうね。でもそれも今だから言えるような気もします。インパクトの大きさは凄いものでした。
by 丹下段平 (2009-04-25 01:16) 

クリス

同性愛について、比較的オープンな心を持っていると思いますが、子孫の繁栄が望めない組合せということに対し、やっぱり不自然なのかなという考えもチラチラありました。
だけど、よくよくこの手の話にくわしい友達に聞いてみると、古代エジプトやギリシャ時代から隠密に続けられてきたことらしいと聞いて、これも神様から与えられた人間の性なのかなと思うようになりました。
by クリス (2009-04-29 09:47) 

丹下段平

この同性愛の問題は難しいですね。自分は違うので多少の拒否反応はありますが、彼らを疎外しようという気持ちはありません。
日本でも戦国時代に既にそんなことがあったとか。表立ったのが最近なだけで、案外昔から存在していたのでしょうね。
by 丹下段平 (2009-04-29 09:55) 

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