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「路上のソリスト」 [映画(2009)]

この『路上のソリスト』も最近多い実話の映画化なんだそうな。新聞『ロサンゼルス・タイムズ』に『弦2本で世界を奏でるヴァイオリニスト』というタイトルでスティーブ・ロペスによって書かれたコラムが発端になっており、好評で続編も書かれて最終的には単行本になり、それが基になっている。

スティーヴ・ロペス(ロバート・ダウニーJr.)は『ロサンゼルス・タイムズ』に人気のコラムを持つ記者。最近は自転車で転倒して大怪我を負ったことも記事にしている。その傷が癒えぬある日、公園で2本の弦しかないヴァイオリンで音楽を奏でている黒人のホームレス(ジェイミー・フォックス)に出会う。彼に話しかけると名はナサニエル・エアーズで、ベートーベンを敬愛し、名門のジュリアード音楽院出身であることなど一方的に捲し立てられた。スティーブがこの出来事と彼を独自調査したことを記事にしたところ大反響で、感銘を受けた読者からは、ナサニエルが本来手にしていたチェロがスティーヴに送られてきた。そのチェロをナサニエルに渡すべく公園を探すが、彼の姿は見えない。ようやく地下道で見つけたナサニエルにチェロを渡すと、彼の手から素晴らしい音楽が奏でられ…というお話。

なかなか面白い話なのだが、正直なところ、どうも好きになれなかった。それはおそらくスティーヴ・ロペスとナサニエル・エアーズの関係にあったように思える。スティーヴの好意はあくまで取材対象としてのものであり、ナサニエルの音楽的な才能は認めているものの、人間としては終始見下している感が否めない。共に何かを成し遂げたり笑い合ったりするエピソードに欠け、友情が芽生える瞬間が描かれないので、観ているこちらに訴えかけてくるものが弱く感じられた。実話の映画化なので、これでリアルに描いているのかもしれないが、残念ながら感動するまで至らない作品であった。

どこかしら突き放した視点と、時折見せる大胆な手法。何となくアメリカ映画的ではない雰囲気があると思ったら、監督はイギリス人のジョー・ライトだった。だから良いとか悪いとかではないのだが、イギリスの俊英にとって必ずしもアメリカ進出に成功したとは言えない作品であったと思う。

路上のソリスト.gif


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漢

なるほどなるほど……。
by 漢 (2009-06-04 11:34) 

薔薇少女

>人間としては終始見下している感が否めない。共に何かを成し遂げたり笑い合ったりするエピソードに欠け、友情が芽生える瞬間が描かれないので、観ているこちらに訴えかけてくるものが弱く感じられた。
うぅぅ~ん、すごいです、丹下段平 さんの文章力が・・
実話と言うのは、忠実に再現し過ぎると、平坦になってしまうのでしょうか?

自分の言いたい事を文字にするのって難しいですね。。。
私のブログ記事やコメントなんて、幼稚園児の絵日記みたいで恥ずかしいです(笑)

by 薔薇少女 (2009-06-04 23:06) 

薔薇少女

あっ、又銀箱見っけたっ!!!
by 薔薇少女 (2009-06-04 23:09) 

丹下段平

漢さん、こんにちは。
あまりお薦めな作品ではありませんが、機会がありましたら観てみてください。
by 丹下段平 (2009-06-05 07:57) 

丹下段平

薔薇少女さん、こんにちは。
お褒めいただきありがとうございます。でも高校生くらいの文章力じゃないでしょうか?

今回は銀の箱でした。景品当ててくださいね!
by 丹下段平 (2009-06-05 07:59) 

コッスン

スティーブロペスさんが、彼にとって良いと思ってしていたことが
私には、強引に感じて、違うんじゃない?と思いながら見てました。
スティーブロペスさんは、判断力があって間違ったりしたことがないのかな?
とか思いながら見ました。
テーマは良いと思ったけど作品としてはイマイチですね。
なんでかな?
ローバート・ダウニー・JRはジェイミー・フォックスより好演してたと思った。

by コッスン (2009-06-06 21:17) 

丹下段平

コッスンさん、こんにちは。
ロバート・ダウニーJr.とジェイミー・フォックスの仲があまり良くなくて、それが画面に出てしまったのかなぁ? 感動できそうでできない作品でした。
by 丹下段平 (2009-06-07 03:14) 

クリス

なるほどなーって思いました。
私もハマれなかったんですよね・・・。
そこに友情があるようでなかった。そういうことかと思いました。
ナサニエルが奏でる音楽に、神がかり的なものを感じられなかったのも原因だったと思います。
by クリス (2009-06-11 23:13) 

丹下段平

クリスさん、こんにちは。
せめて音楽を奏でる喜びがもう少し伝わってきたなら、違った印象を受けたかもしれませんね。
by 丹下段平 (2009-06-13 00:28) 

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