SSブログ

「色即ぜねれいしょん」 [映画(2009)]

色即ぜねれいしょん オリジナル・サウンドトラックこの『色即ぜねれいしょん』の原作者、みうらじゅんの話を聞くのが好きだ。彼の目のつけどころのユニークさであったり、とことん追求するマニアックな姿勢であったり、いつも興味惹かれると同時に感心させられる。加えて彼の飄々としたトークには思わず笑みがこぼれてしまう。みうらじゅんの場合、同じことでも活字で読むよりも本人のトークを聴く方が圧倒的に面白いので、彼の本はあまり持っていない。『色即ぜねれいしょん』も小説は読んでいないが、彼の語りで似たようなことをラジオで聴いたような気がする。

京都にある仏教系私立男子校に通う純(渡辺大知)は夢想家で音楽好きの高校一年生。セックスにはとても興味があるが、まだ女の子と付き合ったこともなく童貞とおさらばするには程遠い。一人っ子であるためか両親(堀ちえみ、リリー・フランキー)からは溺愛されており、そんな平和でヌルい環境が純のコンプレックスにもなっている。そんなある日、小学校時代に同級生だった足立恭子(石橋杏奈)にあっさりフラれたのを機に、同級生(森岡龍、森田直幸)から誘われていた隠岐島への旅行を決意する。彼らによればそこはフリーセックスの島であるらしい。夏休みになり、意気揚々と出かけた道中のフェリーで、いきなり超色っぽい女の子オリーブ(臼田あさ美)と仲良くなり、期待は高まっていくのだが…というお話。

特に何か大きな事件が起こるわけでもなく、とんでもない展開が待っているということでもない。1974年を生きる高校生の等身大の物語。

でも、これが面白い。

必要以上にノスタルジックな方向へ傾いておらず、スケールは小さくともその年代の想いや悩みを田口トモロヲ監督が丹念に瑞々しく描いている。この類の映画が面白くなるかならないかはキャラクターの描き方に負うところが大きいと思える。主人公の純(=みうらじゅん、なのだが…)は音楽が好きで特にボブ・ディランに傾倒している、その影響でギターを弾くのが得意、通信教育で空手を習っている、一人っ子で両親に溺愛されている等、細かなキャラクターに対する情報が多い分、こちらもその人物に対する理解が深まり共感に繋がっていく。これだけその人物のことが分かっていれば、後は大きな事件が起こらなくても面白く観ることができる。また、その人物設定(みうらじゅん、そのものなのだが…)が個性的であるがために物語が非凡に思えてくるのだろう。

それにしても主人公の純を演じた渡辺大知、隠岐島のユースホステルでヘルパーをしているヒゲゴジラを演じた峯田和伸、純の家庭教師を演じた岸田繁は皆ミュージシャンなのだが、揃って良かった。本業よりも役者の方が向いているんじゃないかと思えるくらいである。特に峯田和伸は「あ~、昔はこんな人、いたいた」と言いたくなるほどの好演。全般的に出演者が活き活きと描かれていたのは、監督が役者の人だからなのだろうか。ちなみに昔は大根の代名詞だった堀ちえみにしても、違和感なく物語に溶け込んでいたことも付け加えておきたい。

色即ぜねれいしょん.gif


nice!(15)  コメント(8)  トラックバック(6) 
共通テーマ:映画

nice! 15

コメント 8

なぎ猫

あの時代特有の青春時代の感じはありますが、
時代は違ってもこの年代の男の子ってこうなのね~、
と愛おしくなりました。キャストも秀逸で、岸田繁の
家庭教師とか串田さんのうさんくさいユースホステルの
ヘルパーとか、旅先で出会う色っぽい臼田あさ美(唇が役柄に
ぴったり)もおかんの堀ちえみ(本当に好演。スチュワーデス物語
とかスター誕生とか嘘みたいだ。)とかもちろん主演の渡辺大和も、適材適所。
岸田繁の「音楽は武器や。」ってセリフは本人がミュージシャン
やからリアルに聞こえた。
青春映画は星の数ほどあるけど、久々に私にもヒットでした。
ちなみに、去年名古屋でやっていた妖怪フェスティバルにみうらじゅんが
ゲストとしてやってきたのでトーク聞きました。基本的に収集家なんですね。
by なぎ猫 (2009-08-23 22:31) 

CORO

通信教育で空手。
激しくツボです^^
by CORO (2009-08-23 23:59) 

丹下段平

なぎ猫さん、こんにちは。
役者が良い映画でしたね。面白かった。
それにしても妖怪フェスティバルのゲストがみうらじゅんって興味惹かれますね。参加したかった~。
by 丹下段平 (2009-08-24 08:00) 

丹下段平

COROさん、こんにちは。
空手を通信教育で、みたいなトホホなところが逆に魅力になっている映画です。
by 丹下段平 (2009-08-24 08:02) 

duke

気になってました!トモロヲ監督ですか、みうらじゅんですか、仏教系高校ですか!!面白そうですo(^-^)o
by duke (2009-08-24 15:10) 

丹下段平

dukeさん、こんにちは。
僕は私立キリスト教系共学校だったので仏教系男子校の様子は興味津津でした。仏教の時間で「法然!法然!」とロックコンサートのように大合唱なるのは不思議な光景でした。
面白いので観てみてください。
by 丹下段平 (2009-08-25 08:06) 

よーじっく

おっしゃるとおり、登場人物が生き生きしているところが
この作品の魅力ですね。

峯田和伸には、驚きました。テレビで見る素(?)とは、
かなり違っていて、存在感がありましたもんね。

岸田繁も、飄々としたヘタウマ感が最高でした。
by よーじっく (2009-10-16 22:56) 

丹下段平

実はテレビはニュースとスポーツくらいしか観ないので、素の峯田和伸は知らないのです。

岸田繁=ヘタウマ ホントにそんな感じでした。
by 丹下段平 (2009-10-17 11:28) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 6

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。