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「アメリカの夜」(今月のおススメ) [映画-今月のおススメ]

アメリカの夜チラシ.JPG1974年度アカデミー外国語映画賞に輝いたフランソワ・トリュフォー監督の名作。初公開時にはタイトルの前に副題がついて『映画に愛をこめて アメリカの夜』だったが、どうにもこれが鬱陶しい。

物語はイギリス人のパメラ(ジャクリーン・ビセット)と結婚したフランス人のアルフォンス(ジャン=ピエール・レオ)が、妻を両親に紹介するため故郷に戻ったところ、父親のアレクサンドル(ジャン=ピエール・オーモン)とパメラが恋に落ちてしまい、駆け落ちしてしまった。残されたアルフォンスと母親のセヴリーヌ(ヴァレンチナ・コルテーゼ)は…といった内容の映画『パメラを紹介します』を撮っている撮影隊の様子を描いたもの。一本の作品を撮影していく過程で監督(フランソワ・トリュフォー自ら監督役で出演している)やスタッフに降りかかる数々のトラブル。そして役者の仕事と私生活の苦悩が撮影の進行を阻むようになり、現場は混乱の極みになっていく。

監督で監督役も兼ねているF・トリュフォーのモノローグが要所で入るため、映画の視点は監督にあることになるのだが、必ずしもクローズアップされてはおらず、スタッフやキャストたちが同じくらいの比重で描かれる群像劇となっている。あえて作品の核になるものを探すなら、みんなで取り組んでいる映画撮影そのものということになるのだろう。

タイトルの『アメリカの夜』とは、カメラのレンズにフィルターをかけ、昼に撮影して夜のように写す当時のアメリカ式撮影方法を指している。映画の虚構、胡散臭さみたいなニュアンスが含まれており、劇中でも映画スタッフをなじる女性も登場し、トリュフォーの自嘲気味な面も感じられるが、そんな嘘を必死に創り上げようとしている人々の姿が愛情込めて描かれており、最後に撮影が終わって各々が別れていく場面は感動的である。

僕はこの作品を10代の頃に観た。そして自分も作品を創ってみたい、映画の仕事をしてみたいと思い憧れた。残念ながら若き日の夢は実現しなかったが、改めてこの作品を観てみると当時の気持ちがよみがえってくる。こんな不可思議な世界に身を投じてみたいと思えてくる。そんな気持ちにさせてくれる『アメリカの夜』は永遠の青春映画なのかもしれない。例えどんな年齢の人でも、映画を撮るという行為が人の気持ちを若くすると思えるからである。

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD


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コメント 8

なぎ猫

未見です。ちょっと鬱陶しい副題でも映画そのものを表しているのかもしれませんね。見てみたくなりました。余談ですが、最近はかっちょいい邦題の映画が減ってきてるような気がします。気がするだけかもしれませんが。
by なぎ猫 (2010-01-08 12:06) 

丹下段平

感心するような邦題ってないですね。原題をそのままカタカナにしたのが昔より多いです。おそらく観客の英語力が上がったと判断しているのか、宣伝部員の日本語力が低下したのかなのでしょう。
by 丹下段平 (2010-01-09 03:11) 

よーじっく

こんにちはぁ(^_^)/

大好きな作品です。いままで観た映画で1番か
2番かというぐらい、好きです。

極端な言い方だけれど、映画が全部詰まっている気がします。
とにかくビセットのファンになった記念すべき作品。(^_^)
トリュフォーに親しみを感じた初めての作品。ドルリューも
この作品がキッカケでサントラを集め始めました。

DVDでも仏語版と英語版があるけれど、出来ればフランス語で
見たいですね。かなり雰囲気が変わります。
by よーじっく (2010-01-09 11:32) 

@ミック

お若い頃から、リテラシーをお持ちだったんですね~
素晴らしいです^^
人間関係の機微みたいなものが、繊細に描かれていますよね。
私も10代の頃初見しましたが、見事に挫折しました^^;
去年のNHKBSの放送で、やっと内容が理解できました。
何度見ても、ビセットがよろめくシーンが悔しくてたまりません(笑)
by @ミック (2010-01-09 12:52) 

duke

面白い切り口の映画ですね。見てみたいです。
by duke (2010-01-09 23:09) 

丹下段平

よーじっくさん、こんにちは。
僕はこの作品の前に『おかしなおかしな大冒険』(これもフランス映画)を観てJ・ビセットのファンになりました。『アメリカの夜』はその後少し経ってから漸く名画座で観ることができました。あの当時はレンタルビデオなんて無かったので、過去の作品は名画座が頼りでした。
実はレーザーディスクからソフトが出た時、喜んで購入したのですが、何と最初のソフトは英語版で、もの凄く違和感を感じたものです。おそらく購入者から大ブーイングがあったのでしょう、すぐフランス語版が再発されました。なので、LDは2種類所有しております(と言うか、そんな羽目になってしまったのです)。
by 丹下段平 (2010-01-10 01:32) 

丹下段平

@ミックさん、こんにちは。
リテラシーなんて立派なものではなかったです。漠然と、って感じでした。大学生の頃8ミリ映画を作ったりしましたが、自らの才能のなさが身にしみたので挫折いたしました。
by 丹下段平 (2010-01-10 01:36) 

丹下段平

dukeさん、ぜひご覧ください。
映画を創っている映画って幾つか存在しますが、この作品が決定版と言って過言ではないと思います。
by 丹下段平 (2010-01-10 01:41) 

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