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「時をかける少女」(2010) [映画(2010)]

『時をかける少女』も「また?」ってくらいに繰り返し映画やテレビ化されるようになった。以前だったら『伊豆の踊子』や『青い山脈』が定番だったけど、今やその地位は『時かけ』なんだろう。良く言えば「原作(筒井康隆)が不朽の名作だから」、悪く言えば「企画力に乏しく安直な発想」ってこと。とは言っても僕のように文句垂れながらもついつい(騙されて?)観てしまう観客がいるからこそ、人を変えて何度も創られているのだろう。

高校3年生の芳山あかり(仲里依紗…アニメ版『時かけ』の主役の声も彼女)は、母・芳山和子(安田成美)が勤務している大学の薬学部に合格した。あかりは母と二人だけで暮らしており、カメラマンの父は幼い頃に出て行ったきり。ある日和子の幼馴染のゴローちゃん(勝村政信)が近所に住む深町という老人から和子に託された封筒を渡す。和子が開けると見知らぬ少年と並んだ中学生の頃の和子の写真。和子が中学校実験室での記憶が甦りかけた時に交通事故に遭い、昏睡状態になってしまった。動揺しながらも看病を続けるあかり。そして突然和子は目を覚まし、1972年4月の土曜日に深町一夫に会うため中学校の理科実験室に行く、と言い起き上がろうとした。それを止めたあかりは「代わりに自分が行く」と言い母の大学実験室に向かった。そこには母が発明した過去に戻ることができる薬がある。あかりがその薬を飲んで行き先を唱えたのは1974年2月。間違えて行くはずだった1972年の2年後にタイムスリップしてしまったのだった…というお話。

『時かけ』なんだけど、原作からいただいてるのはタイトルとキャラクターだけ。物語は全く別物のオリジナルで、ここまで原形をとどめていないなら、最早これは

『時をかける少女』とは呼べない作品

である。逆になんでタイトルを変えなかったのか不思議なくらいで、せめて副題をつけるくらいのことをした方が、紛らわしくなくて良かったのではなかろうか。作品自体もどちらかと言えば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『バブルへGo!』に近い世界観。現代の女の子が自分と同じくらいの年歳の母親(石橋杏奈)たちに遭遇していく展開になるのだが、それ以上に創り手が重点を置いているのが、あかりが居候することになる大学生・溝呂木涼太(中尾明慶)との交流や70年代の生活体験の部分で、本来の『時かけ』から離れたところに創り手の表現したかったことがあった、ということになろう。

それは『時かけ』の趣旨からは外れているのだが、中尾明慶が70年代の人に見え、おまけに8mm映画を創っていたりするもんだから、こちらとしても(僕もやってたので)懐かしくあったりするので結構楽しめた。しかし本来核となるべき母や父となる人物とのエピソードが活かされていないのは残念。『時かけ』ならばこちらにもっと深く関わっていくのが筋じゃないかと思えたし、いっそのこと全く無縁の作品にしてしまった方が創り手だって伸び伸びできたように思える。

それにしても現代の女の子が1974年に行っても全然驚かれないってのは合点がいかないなぁ…(イラストに続く)

時をかける少女2010.gif


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artfuldodger

丹下さんの投稿でアニメ版を観た時は良かったですっが・・その後亜流?結構時かの別Ver出て正直・・ですね。
by artfuldodger (2010-03-23 05:57) 

丹下段平

アートさん、こんにちは。
タイムスリップ物、ここ最近増えてきましたね。僕は結構好きなので、つい観てしまいます。
by 丹下段平 (2010-03-23 07:31) 

なぎ猫

ここの記事読んで、「あれ、時をかける少女ってこんな話だっけ??」と思いました。なるほど、題名拝借ものなのですね。
by なぎ猫 (2010-03-23 09:18) 

よーじっく

おはようございます(^^)/
観たいですね。こちらは公開がGWなので
待ち遠しいです。アニメ版もそうだったけれど
タイトルだけで、観ようと決めてしまう
稀有な作品でもあります。(^_^)
by よーじっく (2010-03-24 07:09) 

丹下段平

なぎ猫さん、こんにちは。
興行上『時をかける少女』とからめてありますが、創り手は原作に縛られない箇所こそやりたかったんだろうな、と思えました。
by 丹下段平 (2010-03-26 23:19) 

丹下段平

よーじっくさん、こんにちは。
マンネリな企画だよなぁ、と思いながらも観てしまう…『時かけ』には期待を持たせる何かがありますね。
by 丹下段平 (2010-03-26 23:22) 

ネジ

こんにちは。
私も見終わった後、話としては悪くないんだけど
丹下さんと全く同じ意見で、しっくりこない
居心地の悪さを感じてました。
かえって「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
が見たくなりました(笑)
by ネジ (2010-03-27 00:09) 

丹下段平

ネジさん、こんにちは。
確かに話としては悪くないんですよね。かえって『時をかける少女』という原作から解放されるべきだったのでは、と思えました。あるいはもっと原作寄りにするか…。どっちつかずで中途半端な印象ですね。
by 丹下段平 (2010-03-27 09:01) 

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