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「マイ・ブラザー」 [映画(2010)]

サム(トビー・マグワイア)は美人の妻グレース(ナタリー・ポートマン)と2人の娘に恵まれ幸せにくらしていた。父(サム・シェパード)とそりが合わずグレてしまった弟トミー(ジェイク・ギレンホール)とも仲は良かった。しかし、罪を犯して服役中だったトミーが出所するのと入れ替わるように、米軍兵士のサムは戦地であるアフガニスタンへと旅立った。数日後グレースの元にサムが戦死した知らせが届いた。誰からも愛されたサムを失い、周囲の人間は悲しみに暮れる。お互いの喪失感を埋めるように、今まで疎遠だったトミーとグレースの距離が縮まっていく。一方、戦死したと思われているサムはアフガニスタン軍の捕虜として過酷な状況にいた…というお話。

帰還兵が日常生活に馴染めなくなる話は今までも幾つかあったと思う。最近では『ハートロッカー』も主人公が戦争こそ日常で平和な生活が非日常となってしまい、結局自分の居場所である戦場へと戻っていく話だった。ただ、そのギャップはこの『マイ・ブラザー』の方が深刻で、心の傷はより深い。別人のようになってしまったサムに第二の喪失感を味わっている周りの人間がどう対処していくかが核になっており、ジム・シェリダン監督の押えた演出や主要キャストの好演もあり、味わい深い作品であった。

しかし、『ハート・ロッカー』を観た時にも思ったのだが、どうも中東の人の扱いに引っかかるものが残ってしまう。冷酷・残忍な現地人に手を焼くアメリカ兵士という構図が、アメリカ側に都合良く描かれているように思えて仕方がない。これだけ酷い人々に描けばアメリカ軍の行為も正当化されてこよう。これがどうにも釈然とせず、素直に感動できなかった。争い事は両方の立場が分からないと真実は見えてこない。どんなに正しく思えても一方からだけでは事実が歪んでくる。そんな意味ではクリント・イーストウッドの戦争映画2部作(『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』)は正しい方法論であったと改めて思えた。

マイブラザー.gif


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duke

イラスト、すごくなごみました。
トビーも喜んでくれるかも・・・^^
by duke (2010-06-20 19:57) 

artfuldodger

600投稿!
by artfuldodger (2010-06-20 21:52) 

丹下段平

dukeさん、こんにちは。
トビー喜んでくれるかなぁ…?
僕の似顔絵は、描かれた本人には喜ばれたことがなかったので、多分無理でしょうね…。
by 丹下段平 (2010-06-21 02:51) 

丹下段平

アートさん、こんにちは。
始めて4年半で記事の数が600になってました。本人とすればもっと書いてるような気もしたり、よくここまで続いたよなぁ、と感慨があったりと、複雑な気持ちが入り混じっております。
初期の頃から読んでくださったアートさんがいたからこそ、ここまで来れました。ありがとうございます。
by 丹下段平 (2010-06-21 02:57) 

なぎ猫

私もこちらの方がより深刻に感じました。彼の心の傷は一生消えないと思うし。
父親達の星条旗は、戦争は勝ったから幸せと言うことでもなく、やはり人の人生を変えてしまうのだ、というのを描いてる点が素晴しいと思いました。
硫黄島は、敵国でも死んだ兵士に追悼と敬意を払ってるように感じられて素晴らしいと思いました。よく出来た反戦映画と思いました。
by なぎ猫 (2010-06-21 22:03) 

丹下段平

なぎ猫さん、こんにちは。
戦争は無益であることを訴えるために戦争映画が存在するのでしょうね。
それにしてもアフガニスタン側から描いた映画も観てみたい気がします。
by 丹下段平 (2010-06-22 01:57) 

hash

>ジム・シェリダン監督
ベテランらしい手堅い演出で、的確に表現していましたね。
by hash (2010-06-25 00:51) 

丹下段平

hashさん、こんにちは。
手堅いってカンジでしたね。真面目な作品です。
by 丹下段平 (2010-06-26 07:49) 

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