「彼とわたしの漂流日記」 [映画（2010）]
「都会のちょっといい話」的な韓国の小品。元々こんな映画は好きなタイプで『彼とわたしの漂流日記』にもヒ熊賞をつけようかと思ったけど、いささか最近出し過ぎの感があり賞も軽くなりつつある反省から、少しハードルを上げることに決めたので今回はガマンガマン。
仕事に失敗し多額の借金を抱え、恋人にも見捨てられてしまったキム（チョン・ジェヨン）は人生に絶望してソウル市内を流れる漢江〈ハンガン〉に身を投げた。…が、気がつくと砂浜に横たわっていた。自殺に失敗したキムの居場所は漢江の真ん中にある無人島。両岸から隔たった場所にあり、カナズチなキムは島から出られない。再び自殺しそこなったキムは開き直って原始的なサバイバル生活を始める。魚を獲り、鳥の卵を巣から盗み、キノコを食べ…最初はうまくいかないことも多かったが、次第に環境に順応していく。そんなキムの姿をカメラの望遠で観察しているわたし（チョン・リョウォン）。部屋に引きこもって3年経っている。しかしキムが砂浜に書いたHELLOのメッセージに応えたくなり、深夜に部屋を抜け出してキムの島の上に架かっている橋に向かった…ってな話。
都会の真ん中にある盲点のような無人島に目をつけた着眼点と、そこから出られなくなった男というアイディアがまず良い。前半はこの男の視点で描き、一本調子になりかけたところで彼をずっと見守っていた引きこもりの女性からの視点に変わる構成がユニークで素晴らしい。こんな視点の変化により登場人物の少ないせせこましい映画に広がりがあり、貧しい映画には思えなくなる。監督のイ・ヘジュンは大胆な試みをサラッと違和感なくやってのけ、実に見事でスマートな演出である。
無人島で孤独な生活を余儀なくされた男と、自ら世間から隔離した環境にいる孤独な女。そんな孤独という共通点で結ばれた二人の惹かれ合う姿にホロリ（までいかないけど…）。
おそらくこの作品が観られる地域はかなり限られるであろう。もし幸運にも近くで上映されたなら劇場に足を運んでほしい。埋もれさせてしまうには勿体ない！
やっぱりヒ熊賞を贈ればよかったかな…
最近名古屋の劇場って、色んな作品がスルーしちゃってる気がスルゥー???
by 薔薇少女 (2010-10-04 06:57)
失礼しました、この作品はシルバー劇場で終了しちゃってるわ!
by 薔薇少女 (2010-10-04 07:00)
＞漢江の真ん中にある無人島
この設定だけで、観てみたくなりました。
by hash (2010-10-04 23:19)
薔薇少女さん、こんにちは。
名古屋のような大都市だとたいがいの作品は上映されるでしょうね。
でもミニシアター系は見逃してしまいがち。その点、札幌くらいだと上映される作品は把握できます。あとは時間が許せばってカンジです。
by 丹下段平 (2010-10-04 23:25)
hashさん、こんにちは。
アイディアがいいんですよね。そしてそれをどう料理するか。
その点この作品はなかなかなものでした。
by 丹下段平 (2010-10-04 23:27)
なんだかロマンチックな話のようですね。
by なぎ猫 (2010-10-04 23:52)
ロマンチックな話かもしれませんが、ホームレスと引きこもりのお話なので、甘いだけの作品とは思えませんでした。
by 丹下段平 (2010-10-06 00:02)
面白そうです＾＾
ホラー熱が冷めたら観てみたいとおもいまぁす＾＾
あ、胎教を考えてホラーもライトなものを選ぶ「つもり」です＾＾；
by もももんがが (2010-10-07 12:36)
ホラー熱、冷めますか？
多分ずっとないような気が…
by 丹下段平 (2010-10-09 03:28)