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「君に届け」 [映画(2010)]

この『君に届け』を観に行ったシネコンのチケット売り場で順番を待っていたら、急にこの作品のタイトルを告げるのが恥ずかしく思えてきた。いいオッサンが“初恋胸キュンムービー”と思われる題名を口にするくらいなら、エロ映画の下品な題名の方がよっぽど恥ずかしくないような気がしてきた。ましてや窓口にはうら若き女性が並んでいる…いや、その間に挟まっているヒョロッとした若い兄ちゃんに言う方がより屈辱に思える。いよいよ次は自分の番になり、あいつに当たらないことをひたすら祈った。「なら、観なきゃいいだろ」と思われるかもしれないが、『虹の女神』が気に入った熊澤尚人監督の新作なので、やはり観たい。運良く兄ちゃんは避けられ、お姉ちゃんから目を合わさずにチケットを買って、いざ劇場内へ…

黒沼爽子(くろぬまさわこ:多部未華子)は真面目で一日一善を実行している心優しい女の子なのだが、大人しく控えめで暗めの性格で髪が長いことも災いし、(『リング』の)貞子とあだ名を付けられ、周囲から不気味がられていた。そんな爽子も高校生となり、入学式の日に学校への道を教えてあげた爽やかを絵に描いて額縁に入れたような風早翔太(三浦春馬)と同級生となった。風早クンはクラスの人気者。爽子は相変わらず気味悪がられてクラスで浮いた存在。しかし風早クンは目立たないところで善行をする爽子に対して好意を持つようになっていく。夏になり肝試をきっかけに千鶴(蓮佛美沙子)とあやね(夏菜)そして風早クンがはじかれ者の爽子と打ち解けていく。そんな様子が風早に思いを寄せる美少女のくるみ(桐谷美玲)の目にとまり…ってなお話。

この映画の原作は椎名軽穂による同名の少女漫画。実はこの漫画は読んでいないのだが、妹がいるので少女漫画は随分読んでいる。とは言っても〈週刊マーガレット〉に『エースをねらえ!』が連載されていた頃だからずっと昔の話。妹は毎号欠かさず〈マーガレット〉と〈少女フレンド〉を買っていたので、読み終わると僕も借りて毎号欠かさず読んでいた(ちなみに『つる姫じゃ~!』が好きだった)。その当時の僕はまとめて読める単行本派だったので週刊の少年漫画雑誌は買っていなかった。したがって定期的に読んでいたのは少年漫画ではなく少女漫画だったのだ。その当時の記憶だと“初恋胸キュン物語”は〈マーガレット〉よりも〈少女フレンド〉に多かったような印象があるのだが、この『君に届け』は〈マーガレット〉(但し〈別冊マーガレット〉だが)に連載されていたらしい。

原作はかなり人気の漫画らしいのだが、昔たくさんの少女漫画を読んだ身からすると、冴えない女の子がクラスで一番カッコイイ男の子に好かれるという

ちゃっかり玉の輿系(あるいは棚ぼた系

は、少女漫画のベタな定番パターンで、そんなに際立ったものには思えないのだが、最近の少女漫画事情は分からないので、案外このテの物語が廃れていたところでこんなベタな物語が新鮮に映ったということも考えられる。

ところで映画なのだが、さすがに熊澤監督、丁寧で繊細なタッチに好感を持った。正直なところ気恥ずかしさしか残らない作品になってやしないかと不安であったのだが、泣けるシーンもあったりして嬉しい誤算であった。何より漫画原作だと絵空事になりかねない極端なキャラクターを多部未華子の絶妙な演技によって説得力のある主人公になり得たことが成功の要因であろう。加えて少女漫画にありがちな「こんな奴いねーよ」と男なら思う“さわやか青年”役の三浦春馬。…いるんだね、こんな王子様のような人が。しかもわざとらしく映らないのが信じられないところ。そんな主要人物の脇に蓮佛美沙子ほか小さい役で東亜優や近野成美など若手で実績のある役者を配したのが映画に安定感を与えている。

最後に余談。主人公の母親役が富田“さびしんぼう”靖子だったのはちょっとショックだった。

…いいんです、分かる人だけ分かってもらえれば…

君に届け.gif


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よーじっく

こんにちはぁ(^_^)/
私は、富田“さびしんぼう”靖子の登場は
嬉しかったですよ。
時間の流れによる変化は別にして
スクリーンで会えるって事が、嬉しいです。
by よーじっく (2010-10-14 08:42) 

もももんがが

このマンガすごいにんきで読んだことありますが、
まさに棚ボタ系のご都合系で、まさに
「男性が嫌うタイプの少女マンガの王道」
のようなマンガでしたね。もももんががも年齢を重ねてスレまくってるせいで、
全然楽しめなかったんですけど。。。


by もももんがが (2010-10-14 16:02) 

なぎ猫

少女漫画のパターンなんて案外普遍的なもので脈々と続いているのか?それとも巡り巡ってこれが新鮮ってことなのか。お洋服の流行みたいに。って最近の少女漫画は読んでないから知らないんですが。多部ちゃんが主役ってだけでも見たくなる映画ですが時間があれば・・・。
by なぎ猫 (2010-10-14 23:11) 

丹下段平

よーじっくさん、こんにちは。
僕も嬉しくはあったのですが…
最初に彼女を観たのは『アイコ16歳』だったっけなぁ、と思うとあまりにも時が流れてしまったと感慨に耽ってしまったのでしょた。
by 丹下段平 (2010-10-15 01:22) 

丹下段平

もももんががさん、こんにちは。
案外こんなパターンが今は新鮮なんでしょうか?
それにしても、もももんががさんがよくこのような漫画を手に取ったと思いました。
by 丹下段平 (2010-10-15 01:30) 

丹下段平

なぎ猫さん、こんにちは。
多部美華子がとにかく上手いので、実際にいそうな女の子に見えたのが良かったです。他の女優ならわざとらしく見えただろうキャラクターに説得力があって、映画を楽しむことができました。
by 丹下段平 (2010-10-15 01:34) 

もももんがが

>もももんががさんがよくこのような漫画を

んまっ。
もももんががの本棚は「少女マンガ」のすぐ横に「楳図かずお」と、「伊藤潤二」
と「御茶漬海苔」が並んでますわ。

あ、「伊藤潤二」は「うずまき」の原作者で、
「御茶漬海苔」はスプラッタホラーの漫画家です。
ダンナさんに「この本棚、意味不明すぎる」とよく言われますの^^

補足、失礼しました^^
by もももんがが (2010-10-15 13:46) 

丹下段平

ははは、やっぱりこっちの方がしっくりきますね。
「日野日出志」書き忘れてない?
by 丹下段平 (2010-10-16 00:14) 

バラサ☆バラサ

大概の作品は、余裕で一人で鑑賞できるわたしも、これを観るのはかなりのプレッシャーでした。
しかし、気合入れて観てよかったですよ。わたしも熊澤監督は相性がいいです。
by バラサ☆バラサ (2010-10-21 16:27) 

丹下段平

バサラ☆バサラさん、こんにちは。
こんな映画は一番ハードル高いっすよね。
記事には書きませんでしたが、劇場に入ってみると周りは女子小学生と女子中学生ばっかり。暗くなるまでずっと下を向いていました。
by 丹下段平 (2010-10-22 01:56) 

薔薇少女

>『つる姫じゃ~!』
とか、少女フレンドとか、懐かし過ぎて
涙がチョチョギレまするぅーーー!!!
少フレ派、里中満智子ファンでした。アリエスの乙女たちとか?!
by 薔薇少女 (2010-10-22 20:37) 

丹下段平

薔薇少女さん、こんにちは。
里中満智子さん、少フレ(と略すんですね)でしたね。彼女の漫画はどういう経緯か分からないけど、水島新司とコラボした『野球狂の詩』が最初だった記憶があります。
by 丹下段平 (2010-10-23 09:06) 

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