「さらば夏の日」 [映画-DVD]
ずっと観たいと思っていた映画『さらば夏の日』(ミシェル・ボワロン監督)が先頃ようやく初めてDVDになり、念願叶って観ることができた。
じつはフランシス・レイによるこの作品のサントラ盤を以前から愛聴していることを記事に書いたことがある(☛こちら)。繰り返し聴き過ぎてしまったのでCDの溝がなくなり今では盤面がつるつるになってしまった(ココ一応突っ込みどころです…って同じこと書いてるやん)。そのくらい好きなサントラCDなのに肝心の映画自体は未見のままになっていたのだが、遂にDVDにしてくれる会社が現れた。レンタルなんて言わずに当然購入し、いざ観賞!
と、息巻いてはみたものの、CDの解説書の冊子(って正式には何て呼ぶのだろう?)に詳しくストーリーが書いてあったので、大筋は分かっていたので、あとは映像がどうなっているのかが興味の中心。そしてあの素晴らしいフランシス・レイの音楽はどんな場面に使われているのか…
若い医師のヴァンサン(ルノー・ベルレー)は母と弟の3人で暮らしていた。父は愛人をつくって家を出た。弟のベルナールは大学受験に失敗。ヴァンサンはかねてから計画していた恋人のジュヌヴィエーヴ(フロランス・ラフュマ)とのヨット旅行に傷心の弟を誘って出発した。輝く太陽、きらめく海の上をヨットは順調に進んでいく。途中、弟が会いたがっていた父の住む家も訪れ、また海へ。そして次の寄港地で美しくセクシーな女性モニカ(ジャネット・アグラン)に出会う。最初はヴァンサンを気に入った様子であったが、彼女がいると知ると彼の弟に急接近。しかしモニカの狙いはあくまでヴァンサンであった…というお話。
大した物語じゃないけど、フランシス・レイの音楽がほぼ全編に使われており、かえって込み入った話じゃないために音楽の邪魔にならず良かった。映像もこの作品が作られた1970年当時ならではの美しくもザラッとした感じでなかなか良い。 もし、この作品を若い頃に観たなら、超セクシーなモニカのナイスバディに目はくぎ付けだったろうけど、さすがにいい歳こいているので、
いやぁ~、若いってホントに素晴らしいですよね
と、ちょっと余裕で楽しむことができた。
お勧めするような作品ではないけど、音楽だけは機会があったら聴いてみてほしい。そうすると今度はきっと映画も観てみたくなるはず…(結局観るんかい)。
「冷面虎 復讐のドラゴン」 [映画-DVD]
何故か無性に「ド」がつくくらいのB級映画を観たくなる時がある。面白いけどためにはならない、娯楽に徹したアクション映画。でも大概はそこそこの満足度しか得られないのだが、またそれが良かったりする。こうなっては最早ビョーキなのかもしれない。この『冷面虎 復讐のドラゴン』だってショップで見かけて衝動的に購入してしまったDVD。日本を舞台に創られた香港製カンフー映画で、ブルース・リーのために企画されたが、出演を断ったため代わりにジミー・ウォングが引き受けたというところに惹かれた。日本人では『サインはV』の岡田可愛が出演しているのも懐かしかった。
ところで主演のジミー・ウォングだが、日本での知名度は低いがアジアでは“天皇巨星”と呼ばれたほどの人気俳優。調べてみるとカンフー映画は、元々はジミーが始めたもので、彼の作品を観たブルース・リーが触発されて自身でもカンフー映画を創るようになったのだとか。つまりジミーが本家で、ブルース・リーはある意味パクったことになる。しかし世界的には後出しの方がずっと有名になってしまったのだから皮肉なものである。おまけにこの作品はブルース・リーが蹴った企画の代役みたいなもの。本家としてのプライドはないのかと問いたいところだが、「出してもらえるなら何でもやりまっせ」みたいな拘りのなさがジミーにはあったのかもしれない。
さて、この『冷面虎 復讐のドラゴン』なのだが、1973年に創られた日本を舞台にした作品だから、さぞやヘンなニッポンが描かれていることだろうという期待に応えてはいるものの、欧米人とは違い同じアジア人であることから、出鱈目な感じはしない。冒頭、流しの岡田可愛の歌で始まるのだが、いきなり中国語。それはおろか、全て中国語で、日本人同士の会話まで中国語である。まるで日本語は存在しないかのような世界。主人公のジミー・ウォングが父の死の真相を探るために一味に加わるヤクザも武器はほとんど使わず、暴力はカンフーで行う。日本を舞台にしているものの、そんなことを忘れさせる香港映画テイストなんである。おまけに舞台の京都で格闘していたはずなのに、いきなり浜名湖の舘山寺温泉ロープウェイになだれ込んで、湖上のロープウェイの中でアクション。そしてジミーはそこから浜名湖への大ジャンプという見せ場もある。撮影が下手なのであまり迫力を感じないのはご愛敬。
全体的に東映B級アクション映画の雰囲気に近いなと思って、昔書いた『女必殺拳』の記事(→こちら)を読み返してみたら笑ってしまった。あちらには流暢な日本語の香港人が出ていた。こちらはその裏返し。やってることも大差なく、五十歩百歩ってところ。きっと欧米人にはどちらが香港映画か日本映画かは見分けがつかないことだろう。
ドB級映画ということを覚悟さえしておけば、ポップコーン片手にツッコミ入れながら楽しめる作品。たまにはこんな映画もいいんじゃないかな。
それにしても原題は『冷面虎』で、英語のタイトルはA Man Called Tigerなのに、日本の副題は『復讐のドラゴン』なのはなぜ? 香港カンフー映画は何でもかんでもドラゴンで売っちゃおうってのは、ブルース・リー映画と間違えることを狙った、どさくさ紛れのセコイ商売じゃない? まぁ、こんないい加減さが昭和っぽくて好きなんだけどね…
「女番長ブルース 牝蜂の挑戦」 [映画-DVD]
長年映画を観てきたけど、どちらかと言えば洋画を観る機会が多く、日本映画は観ていない作品があまりにも多い。中でも東映のプログラムピクチャーは全く観ていないと言っても過言ではない。若い頃から広く(残念ながら)浅く観てきたつもりだったけど、東映映画だけはどうにも好きになれなかったので、特に超B級映画はほとんど手付かずで残っていた。昨年の正月、日活の女番長(スケバン)モノの『野良猫ロック』シリーズを集中的に観て結構気に入ってしまい(→記事1 2 3)、そのジャンルの本まで買ってしまったのだが(→記事)、そこで紹介されていたのが、この池玲子主演の『女番長(スケバン)』シリーズ。何とこれがDVDになってしまったので、量販店の店頭でみつけて、思わず買ってしまった。センスのないバッドテイストなパッケージに「期待しちゃいけない」という気持ちと「ワクワク」する気持ちが入り混じる。昔だったら毛嫌いしていたジャンルなのに、最近は気になってならない俺ってどうしちゃったんだろう?
女不良グループ京都パール団を率いる番長マキ(池玲子)は、今日も団員たちと万引きや売春の斡旋や色仕掛けの詐欺とやりたい放題。そんな京都に大阪のスケバングループ黒百合会が勢力を伸ばすために乗り込んでくる。一方、ずべ公グループに目をつけ、彼女達に売春させて儲けようと企む暴力団・黒地組が背後に迫る。果たしてマキとパール団、そして黒百合会の運命は…というお話。
さすが東映。日活の『野良猫』シリーズに比べてずっと泥臭くドロドロしている。あちらがアメリカン・ニューシネマのテイストなら、こちらのベースはやっぱりヤクザ映画。仁義切ったりドスを振り回したり血生臭さでは引けを取らない。監督は後に『トラック野郎』シリーズを手掛ける鈴木則文。陰惨になりがちな話に由利徹、岡八郎、大泉滉などをずべ公に騙される役で配して緩和させている。また山城新伍や梅宮辰夫(不良番長役)といった東映のスターも加え、物語を盛り上げる。そういえば仮面ライダーV3の宮内洋の姿を久しぶりに見た。主演の池玲子は実は初めて観る女優だったのだが、これがなかなか堂々とした主演ぶり。可愛い顔にケバイ化粧。脱ぎっぷりもよく東映女優の鑑(?)。ラストシーンはかなりカッコよく決まっていたと付け加えておきたい。決して好きな映画ではなかったが、たまにはこんな映画も観てみたくなる。タランティーノが好きな人なら結構気に入るんじゃなかろうか(このテの映画の時はいつもタランティーノを引き合いに出してしまうなぁ)。
それにしても井筒和幸の『ガキ帝国』や『パッチギ』ってかなりこの映画の影響を受けてるよな~と思えた。それがいろんなところで垣間見られて面白かった。
「SHINOBI」 [映画-DVD]
先日旅行で伊賀(三重県伊賀市)に行った。こんなにいろいろなメディアで有名なのに、僕の周りでは行った事のある人はゼロ。だけど小さい頃から忍者モノを観て育った者としては、一度は訪れてみたいとずっと思っていた場所であった。果たして現代の忍の者たちはどんな暮らしをしているのか…
な~んて外人じゃあるまいし、忍者に会えるとは思わないけど、とにかく行きたかっただけの話。やはりいろんなところで忍者のキャラは使われていたけど、もっとクドイくらいにアピールしてもいいんじゃないかと思えた。だって日本でこんなにアピールするものはないくらいのキャラなのだから、大勢の観光客を集められるはずだと思う。海外からの客は京都・奈良とセットで呼んで来れるはずだ。
それから松尾芭蕉誕生の地という面も、もっとアピールしてもいいんじゃないかと思えた。どこへ旅行しても見かける芭蕉の碑。だけど誕生の地というのは、そのどれよりも強いはず。案外知られていないし、これだけでもうまくやれば観光客を引っ張って来れるんじゃないだろうか。こんなふたつも強烈なものを持ちながら活かしきれていないのはもったいない話である。
…とまぁ、偉そうに語ったところで本題。伊賀に行ったことだし、何か忍者映画でも観てみようということで、レンタルDVDで選んだのがこの『SHINOBI』。本場で実際に手裏剣を投げ、忍者屋敷も見学してきた今の俺はちょっとうるさいゼ、とか思い上がりながら観たのだが、オープニングでこの映画の原作が山田風太郎の『甲賀忍法帖』だと知り、「えっ、伊賀じゃなくて甲賀だったのか。謀られたっ」と思ったが、ちゃんと伊賀も同じくらいの比重で出ていた。
天下統一を果たした徳川家康。戦乱の世が終わり、存在が邪魔になった忍者の戦闘能力を恐れ、敵対するが冷戦状態の甲賀と伊賀の忍者を戦わせた挙句、一掃を企てる。駿府城に双方の頭を呼び、各々5名の代表者同士で戦い、勝った方に天皇家の跡継ぎを与えると告げる。その合計10名の中には伊賀の頭の娘・朧(仲間由紀恵)と、甲賀の頭の息子・弦之助(オダギリジョー)の名もあった。実はこの二人は叶わぬ恋と知りながら逢瀬を続ける恋人同士であった。しかし、お互いの頭同士で戦い、相打ちで死亡したことをきっかけに、伊賀と甲賀の熾烈な殺し合いが始まってしまった。果たして朧との運命は、そして伊賀と甲賀の運命は…というお話。
実は山田風太郎は好きで、この『甲賀忍法帖』も随分前に読んでいた。観ている内に何となく思い出してきて「そうだった、そうだった」とか「そうだったっけ?」なんて思いながら鑑賞。小説のこの作品は、山田風太郎の作品の中でもかなり面白かった記憶があったのだが、映画は…
なんか、あまり面白くない
という残念な出来。山田風太郎の小説は、主に肉体を使った破天荒な忍術を医学的と言うか科学的と言うか、もっともらしいけど出鱈目な解説があり、忍術と真面目くさった説明とのギャップが面白かったりするのだが、映画では削られている。そのため登場する忍者の人間離れした存在のユニークさが活きず、忍術合戦になっても盛り上がらないのが残念。それから内容面でも、忍者の戦いよりも『ロミオとジュリエット』的なメロドラマに主を置いた感が強く、作品の面白さを妨げている。もっと本来の部分をしっかり描いてほしかったのだが、このキャスティングだからメロウな方向に行ってしまったのだろうか。
それと役者が良くなかった。主役の二人とも時代劇向きとは思えなかったが予想通り。特にオダギリジョーはもっさりとした現代人にしか見えず、過酷な修行を積んだ忍者とは到底見えなかった。彼は良い時と悪い時の差が激しいように思える。それからまだ幼さが残る沢尻エリカが出演しており、この時点では下手っぴぃだったのはご愛嬌。
―とまぁ、予告通り「今の俺は忍者モノにはうるさいゼ」的な感想になってしまったが仕方がない。何たって伊賀で修行してきたばかりなのだから(手裏剣5回投げただけだけど)。
「ゾンビーノ」 [映画-DVD]
かつて大量発生したゾンビと人間との間に激しい戦いがあり、ゾンビの研究をしていたゾムコム社がゾンビを従順にする首輪状の機械を開発したことにより、戦争に終止符が打たれた。その後ゾンビは人間の僕として使用人のような扱いとなった。一方ゾムコム社は強大な権力を握るようになり、治安の維持を一手に引き受けるようになった。
ある小さな町に住むティミー少年の一家も、周りの家庭に遅ればせながら一人のゾンビを迎え入れた。中年男性のそのゾンビはティミーによってファイドと名付けられ、ティミーは直ぐ気に入ってしまった。そんな中、外でティミーとファイドが遊んでいる時に首輪の機械が壊れ、ファイドは暴れて近くに住む老女を食い殺してしまった。ティミーは老女がゾンビになって暴れないよう首を切り落として土に埋めて証拠隠滅を図ったのだが…というお話。
ゾンビ映画なのに、実にほのぼのしたタッチが可笑しい。設定が1950年代くらいの古き良き時代にしたのも効果的で、カメラのセンスが良く、美しい画面にゾンビってのがミスマッチの面白さがあり、ユニークな作品に仕上がっている。全編とぼけた雰囲気でホラーが苦手な人でも楽しめる映画になっている(と思う)。
それにしてもゾンビが大人しくなった様は、まるでフランケンシュタインみたいな感じ。元々フランケンシュタインも死体を繋ぎ合わせて生き返らせたモンスターだから、死者が生き返ったゾンビとさほど変わらないのかもしれない。
やっぱり夏はホラー。ホラーといえばゾンビだよねっ!
「選挙」 [映画-DVD]
まだ小泉自民党だった頃、川崎市議会議員の補欠選挙に自民党から出馬した山内和彦氏の選挙活動を追ったドキュメンタリー。山内氏は川崎市の出身ではなく、自民党に適当な人材がいなかったため公募で選ばれたいわゆる落下傘候補。山内氏の場合は今回が初めての立候補だったため選挙のせの字も知らず、周囲の先輩議員や選挙参謀に厳しく指導(怒られ?)されながら健気に戦うしかない。投票日が近づくにつれて周囲は疲れと緊張感でピリピリムードとなり、献身的だった奥方もついにぶち切れて、八つ当たりされながらも活動を続ける姿は痛々しい。
それにしても立候補すると(と言うか議員になっても)色々な所に顔を出すことになるんだなと感心するやら呆れるやらで、幼稚園の運動会、老人会の運動会、地元の祭りなどに出掛けて行ってはPR活動を実行する。背広にタスキ掛け姿なのに、そんな場面でラジオ体操したりみこしを担いだりする姿は明らかな場違いで滑稽としか表現しようがない。僅かな睡眠時間以外は秒刻みのスケジュールで、ボーッとしているなんて許されない。街頭活動で握手を求めても殆どの人に無視されて、たまに握り返してくれる人がいれば観ているこちらもホッとしたりする。
あ~、こんなの俺はムリ!
いや、割り切ってやれないことはないけど、自ら望んでしようとは思わない。そこまでして議員になりたいと思わないし、思った事もない。このドキュメントを観て「やってみたい」と思った人は是非チャレンジしてほしい。お祭り好きな人は適任かも。
だけど山内氏って、単に議員になりたかっただけで、川崎市のために何かしたい、なんて気持ちはさらさら持ち合わせていなかったのではなかろうか。案外議員なんてこんなものかも。
だったら山下万葉でもいいじゃないか!? (→参照)
「ゲゲゲの鬼太郎」 [映画-DVD]
物心ついた頃には『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメをテレビで観ていたような気がする。その時分から大好きで、今も変わらないとなると、いったい僕のファン暦は何年になるというのだろうか。正しく言えば水木しげるファンであって、鬼太郎だけではなく『悪魔くん』『河童の三平』やシリーズものではない作品まで広く楽しませてもらっている。
そんな僕が水木ファンの聖地とも言える、水木氏の出身地である鳥取県境港市を訪れたのは2003年のこと。境港駅を基点に、駅前通り(水木しげるロード)を埋め尽くす妖怪のブロンズ像に足を止めつつ進んでいくと、最終目的地である「水木しげる記念館」がある。まさにそれは巡礼の旅だったと言えよう(大袈裟?)。せっかくだからその時の写真を数点ご披露したい。
境港駅前では河童の三平がお出迎え。
ちょっとマイナーなやまびこなんかもいる。
誰が子泣き爺に金を置いていくのだろうか(神様と勘違い?)。
アーケードを見上げると一反木綿がっ!
ゲゲゲの鬼太郎(当たり前?)
説明不要…?
憧れのねずみ男とツーショット!
聖地の終着点「水木しげる記念館」
と、まぁ、実に有意義な旅だったわけだが…
2007年に公開された実写版『ゲゲゲの鬼太郎』に関しては、鬼太郎がウエンツ瑛士だと分かった製作発表の段階で興味を失った。あまりにも主役でタイトルロールの鬼太郎とのイメージがかけ離れていたからで、こんな人気に頼ったキャスティングじゃ内容も知れたもの、と感じた。だから今回TSUTYAでレンタルしたのは、たまたまパッケージが目に入り、衝動的に手が伸びたからで、期待なんか全くせずに観た。別に近々公開される続編に備えて、って訳では全くない。いろんな役者がどんな妖怪ぶりを見せてくれるのか、それだけである。
ねずみ男の大泉洋がなかなか面白く、チョイ役ながら存在感抜群だった輪入道の西田敏行は、テリー・ギリアム監督作品『バロン』のロビン・ウイリアムスを髣髴とさせる怪演だった(ちょっと例えがマイナーだったかな?)。田中麗奈はほとんど素のまま猫娘ができちゃうんだな。ウエンツは予想通り… 以上。
…いや…ホント、そんな感想しかない映画で…
祝・こどもの日 記念企画 「長靴をはいた猫」 [映画-DVD]
よい子のみんなーっ、げんきかな? お父さん、お母さんのおてつだいをちゃんとしてるかなーっ?
きょうはとってもたのしいえいがをしょうかいしちゃうよ。『長靴(ながぐつ)をはいた猫(ねこ)』っていうアニメーションで、これはぼくがきみたちくらいの子どものときに、お母さんにつれて行ってもらって、うまれてはじめてみたえいがなんだよ。
ネコのペロがにんげんのピエールとなかよしになって、こまっているおひめさまをたすけるために大かつやくしちゃうんだ。とーってもおもしろいから、ぜったいみよーね。
ディーブイディーになってるから、お父さんやお母さんにおねだりしちゃおー。
じゃぁ、またらいねんあおうねー!
「地獄」(中川信夫) [映画-DVD]
若い頃に観て感心しなかった映画であったのだが、量販店でこのDVDを見かけた瞬間、突然観直してみたい気分になり、衝動的に購入してしまった。若い時分は今よりもずっと真面目、というか融通が利かなかったので、この手の作品は苦手だったが、ずいぶんといい加減になった今なら受け入れられるかもしれない、という自分自身に期待しながらモニターに向かった。
冒頭、製作会社である新東宝のマークがど~んと出るのだが、真っ赤な背景に安っぽい社章。さらにその周りを金の塵のようなものが渦巻いている。最初にこれを観た時に、まだ本編が始まっていないのに、かなりの衝撃を受けたことを思い出す。あまりにもキッチュ、あまりにも悪趣味。と、本編が始まる前に、既に衝撃を受けていたのだが、タイトルクレジットになると一変、半裸女性の悩ましいポーズが映し出される。その妖しげなこと。もう最初からこの映画はキワモノですよと言っているかのよう。これから始まるエロ・グロ・ナンセンスな世界観を言い表している。
本編が始まると暗く重苦しいムードになる。最初に観た時にはこれに嫌悪感を覚えた。主人公の大学生(天知茂)が、その同級生(沼田曜一)によって人生設計が目茶目茶にされていき、遂には殺されて地獄行き。そして様々な責苦を味わう、と簡単に言えばこんな話。とにかくこの映画が凄いのは、
登場人物のほとんどが死ぬ
という戦争映画以外有り得ない展開を見せること。そしてみんなで地獄めぐり。もうムチャクチャ。この地獄の様子も現代のCGと違ってアナログ感漂うもので、それがチープなんだけど変な迫力に満ちている。まるで
廃れた温泉街にある秘宝館に誤って入ってしまった
かのような感覚である。安っぽい展示物にただ笑うしかない、そんな感じ。
こんな作品を負のオーラに包んだのが、役者の怪演である。主人公を絶望のどん底に落とし入れる友人役の沼田曜一が凄い。この映画の異常なトーンは彼の功績が大である。本当に嫌悪感を抱く異常さが作品の原動力であることは間違いない。それを受ける天知茂は暗さを醸し出している。彼を観ているだけで憂鬱がうつってくる。悲惨もここまでくれば立派なもの(?)である。彼らを取り巻く役者達もみんなヘンで、異様な雰囲気をさらに盛り上げてくれる。
最初に観た時は大嫌いな映画であったが、こうして観直すとなかなか面白かった。悲惨もここまでくれば滑稽に思えてくる。まぁ、物好きな人は観てみてはいかが?
最後にこの映画を一言で言い表せる言葉が見つかった。それは
究極の胡散臭さ
「ハレンチ学園」 [映画-DVD]
それは僕が小学生になったばかりの頃の話。同級生のMは「それ」の名手として周囲の男子から一目置かれた存在だった。いや、「それ」は大した技術が必要ということはなかったのだが、勇気と言うか、思いっきりが必要なことではあった。「それ」をやってしまうには、まだ10歳に満たない時分であっても、後々のことを考えてしまうと、やりたくても手を出しにくい行為であったのだ。しかし身近にMがいた僕は、自ら手を汚さずに「それ」を堪能することが出来た。案の定、Mはその後、女子の親からやり玉にあげられ、厳重注意される羽目になった。
もうお気付きとは思うが、「それ」とは…
スカートめくり!
いったい「それ」がいつから始まったのかは知らないが、永井豪のマンガ『ハレンチ学園』のヒットと共に一大ブームとなり、当然親世代からは永井豪はバッシングの対象になってしまったものの、子供世代からは圧倒的な支持を勝ち得たのだった。
『ハレンチ学園』の人気はマンガだけに留まらず、何とこんな内容がテレビでドラマ化された。当然(?)僕も観たいと思ったのだが、当時テレビは一台しかなかったため、このドラマを親と一緒に観なくてはならず、それではあまりにも居たたまれなかったので、泣く泣く観ることを断念したのだった。
時な流れ、『ハレンチ学園』の実写版がDVDになった。これは以前観たかったテレビドラマではなく映画。どちらが先かは知らないし、そもそも映画になっていたことすら知らなかったが、ヒロインはどちらも児島美ゆき。彼女イコール『ハレンチ学園』。これで当時テレビドラマを観られなかった敵討ちができるってもんだ。
で、念願の実写ドラマなのだが…
…ユルい…
の一言。馬鹿馬鹿しいだけで全く面白くなく頭を抱えてしまった。もう、すっかり忘れていたヒゲゴジラや丸越とかのキャラクターを思い出すことはできたが、それ以上でも以下でもない。お色気と言っても、今からすれば他愛のないものである。まぁ、僕のように以前観たくても観られなかった人が、昔を懐かしがって観ることくらいしか、残念ながら価値がない。決して期待などしないように。
僕は小学校3年生の時に転校したので、その後付き合いはなくなってしまったのだが、風の噂によると、後年Mは見事東大に入学したらしい。さすがやるときはやる男だったのだ。まさに文色両道。いったい今はどんな立派なエロ親父になっていることやら…?