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「ワイルドエンジェル」 [映画-DVD]

先日『団塊ボーイズ』を観ていたら、急にこの作品を観てみたくなった。B級映画の帝王、ロジャー・コーマンが製作だけではなく監督も務めた1966年の作品。主演したピーター・フォンダが、この直後に『イージーライダー』を創ったことから、『ワイルドエンジェル』の影響を受けていたことは明らかで、その意味ではアメリカンニューシネマの先駆けとなった作品であると言えるのではないだろうか。

この映画はその当時、アメリカ国内でならず者集団と鼻つまみになっていた「ヘルズ・エンジェルズ」の実態を彼らの側から描いた作品で、そのエンジェルズ達も出演していたりと話題性豊富で大ヒットを収めたようだ。そんな現在進行形のアウトローを描くなんて作品はなかなか類を見なかったのか、激しい議論を呼んだらしいが、今の視点で観れば「そんなこともあったんだ~」って感じだろうか。それほどストーリー的な展開がないので、面白いという内容ではなかった。

ロジャーコーマンの本.jpg実はこの映画の存在は、ロジャー・コーマンの自伝『私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか―ロジャー・コーマン自伝』という本を読んで知っていた。彼の映画以上に面白いくらいの本なのだが、10年以上前に出版されたため、もう大きな書店でも置いていないかもしれない。この本を読めばロジャー・コーマンの作品を観てみたくなるはず。作品もさることながら、低予算で映画を創っていたため、ギャラの安い若手に仕事を与えていたのだが、その中にコッポラ、ルーカス、スコセッシやボグダノヴィッチ…その他書ききれないほどの監督を排出し、ジャック・ニコルソン、ピーター・フォンダ、ロバート・デ・ニーロ、シルベスタ・スタローンら、若手俳優を多く登用している。はっきり言えば、作品よりもその偉業の方が評価できるのではなかろうか。

まぁ、機会があったら観てほしい。それよりも機会があったら自伝を読んでほしい。低予算映画を魅力的にする秘訣が書かれている本であると思う。
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「明日、君がいない」 [映画-DVD]

この映画の監督、脚本を手掛けたムーラ・K・タルリはオーストラリアの弱冠19歳。

じゅうきゅうさい!?

そんなに若くしてこんなしっかりした映画を創っちゃったんだ、という現実の前に立ち眩みしそうである。自分の19歳の頃と比べてしまうと、あまりの落差に頭が痛くなってくる。思い返せば25歳になった時、「オーソン・ウェルズはこの年齢で『市民ケーン』を創ったんだ」と落ち込んだものだが、それよりもずっと若くして、このタルリ監督は立派な作品を世に送り出した。いったいどうしたら19歳でこんな映画が撮れるのか。

明日、君がいないこの作品の原題は『2:37』。映画の冒頭、舞台となる学校の倉庫で誰かが自殺する。その時間が2時37分。誰が自殺したのかを見せずに物語はその日の朝に戻される。そこから男4人と女2人にスポットをあて、その日を克明に追っていく。各人いろいろな悩みを抱えており、その真相が徐々に明らかにされていく。何気ないやり取りや行為に実は重要な意味があり、伏線になっている。

じゅうきゅうさいが、こんなに緻密に伏線張るか~

と感心するほど上手い。優等生が実は…、女たらしが実は…、なんてどんでん返しが随所に散りばめられており、全く飽きさせない力量に

本当にじゅうきゅうさいなのか~

と感心してしまう(だんだんしつこくなってきた?)。その間、冒頭の自殺のシークエンスが頭に残っているので「この中の誰が自殺するんだ?」なんて不謹慎な興味も時間が近づくにつれ高まってくる。そして意外なラストにはかなり肩すかし食らった気もしたが、ちょっとホッとした気分にもなった(だからいいって訳じゃないけど)。

それにしても監督はついこの間まで高校生だっただけあって、学校でのシーンはリアルで臨場感抜群に思われる。おそらく監督自身の実体験がかなり入っているように思われるのでリアリティを感じられる。まぁ、オーストラリアの高校生の実態たるや酷いもんである。これが日本の高校なら…え、あまり変わりない?…ってことはないでしょう?…であってほしいものである。


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「ヨコハマメリー」 [映画-DVD]

最近の自分が書いた記事を眺めていると、ロマンポルノとか寺山修司とか自主映画とか、どんどんマイナーなベクトルに引きずり込まれている気がしてきました。だれか堕ちるのを止めてくれ~っ!

ってことで、今回はDVDで観た『ヨコハマメリー』。


ヨコハマメリー横浜に初めて訪れたのは中学校の社会科見学だったと思う。1970年代後半の横浜は東京の中学生にとっては、嘗て見たことのないような風景のカッコイイ街だった。観光バスから見えた街角の自転車屋の看板に書かれていた英語の文字。それはデザイン的にお洒落とかではなく、ごく日常的に必要だから書かれていたもので、風景にマッチした無造作なカッコ良さがあった。もちろん自転車屋に限らず、どの店の看板にも英語が併記されていた。港の近くには倉庫があるためか、鉄道の貨物専用の引込み線が走っており、踏み切りの警報機にもCAUTIONと当たり前のように書かれている。

カックイイー!

と思えた。全てがさり気なく、異国の風を感じる街。無自覚なカッコ良さは10代の少年をハードボイルドな世界に誘った。

そんな街も観光地としての自覚を持つようになったのか、ぶっきらぼうな魅力を美しいとは思わなかったのか、どんどん創られたお洒落な装いに変貌していく。引込み線は廃止になり遊歩道になった。店の看板も意識した綺麗なものに変わっていった。ほっぽらかしだった赤レンガ倉庫もお洒落なスポットになり、埋立地には高層ビルも建った。すっかり観光客を意識した美しい街並みは、多少なりとも昔を知るものには急激に魅力を失っていくように映った。

そんな変貌していく街を戦後ずっと街角で見続けていた、ハマの人間なら知らない人はいないくらいの有名な娼婦のメリーさんを取り上げたのがこのドキュメンタリー映画。厚化粧の異様とも思える白塗りで、老人となり腰が曲がってしまっても街角で通り過ぎる男に声をかけ続けたメリーさん。そんな彼女も1995年を境にハマから姿を忽然と消してしまった。噂が噂を呼び、都市伝説の如く語られるようになった彼女と親交のあった人間にインタビューし、彼女の存在とはいったい何だったのかを追い求めた映画である。

と、本来はその目的で創られ始めた映画であったと思われるのだが、彼女と一番親しかったと思われるシャンソン歌手の永井元次郎氏の半生に多くの時間を割いていたり、昔の悪の巣窟のような店の説明であったり、彼女を取り巻く人や場所に創り手の関心が移る。意外にメリーさん自身のことはよくは取材されているのだが深みに欠けた印象を受けた。彼女に対するインタビューに客として接した人が登場しなかったり、腰が曲がって客がつかなくなってからはどう収入を得ていたのかとか、そんな下世話な興味を満たす証言はなかった。

そして映画の方向性は彼女を中心にそれを取り巻く人々という感じで広範囲なものになってくる。そこで見えてくるものは横浜という、特異な街そのものである。クールなんだけど人情も残っている、都会なのに場末の雰囲気がある、無頓着な振りをして実は街をこよなく愛している、何よりメリーさんのような変てこな風来坊を受け入れる懐の大きさ。そんな港町らしい魅力が伝わってくる。そこには創り手自身の横浜という街への思いが滲み出ていたのだと思う。

僕も最近では仕事で横浜に出向くことが多くなり、野毛に行きつけの飲み屋なんかもあったりするようになった。そこのママは横浜への愛が言葉の端々から窺えるのだが、実はどこか田舎から出てきた人であるらしい。出てきたと書いたが本当は流れてきたという表現の方がこの街には似合う。それは日本だけに限らない。中国、台湾、韓国、アメリカ、みんなどこからか流れてきた人。メリーさんもどこかの田舎から流れてきた。横浜はそんな人たちが行き着く街。だからこそメリーさんのような人が生き延びてこれたのだと思う。街の様子は変貌しても風土は変わらない。

バーのママが「この街は去る者は追わず、来る者は拒まずなんだよ」と語っていたが、そんな芝居がかった台詞も臭くならない。多少本来の製作意図とはずれてしまったと思われるが、横浜の街を表現した魅力的なドキュメンタリーであった。


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「ボクサー」(寺山修司) [映画-DVD]

この映画が創られたのが1977年。その年一番話題になった作品が『ロッキー』の1作目であり、同じ年の『ロッキー』公開後に公開されたボクシング映画となれば、当然「二番煎じ」を狙って慌てて創られた作品というイメージになってしまう。当時中学生であった僕もそんな印象を受け、馬鹿にして見向きもしなかった。それから数年後、この『ボクサー』を監督したのが前衛芸術の旗手ともいえる寺山修司であると認識して、初めて観てみたくなったものだ。前衛的な作品を創ってきた彼が唯一大手映画会社に残した作品であり、東映のエースである菅原文太と、デビューしたばかりでアイドル的な人気もあった清水健太郎主演という異色の組み合わせが興味深く思えた。しかしその後観る事無く長い月日が過ぎてしまい、寺山は亡くなり、シミケンはシャバとム所を出たり入ったりという堕落ぶり。

ボクサー [DVD]先日近くの量販店でこの映画のDVDを見つけ、思わず購入した。ついに寺山修司の『ボクサー』とご対面することに。映画が始まるとボクサーがリングに向かって長い廊下を歩いていく後姿をワンカットで捉えたシーン。その途中、何人もの試合に敗れてボロボロになって帰っていくボクサーとすれ違う。ATGならこのショットに主人公のモノローグが入りそうであるが、それはメジャーな東映ではやっていない。それでもアンダーグラウンド感漂う雰囲気に期待が高まる。はっきり言ってこの作品は物語への期待よりも、寺山修司と東映というミスマッチなコラボがどんな融合をみせるかが一番興味あるところであったが、冒頭からなかなかいい感じである。

天馬(清水健太郎)は足が不自由ながら世界チャンピオンになるため沖縄から上京して来た新人ボクサー。生活のため働いている工事現場でクレーンを操作中に事故を起こしてしまい、同僚を死亡させてしまう。その兄の隼(菅原文太)は元東洋チャンピオンのボクサーであった。足の悪い天馬は所属するジムから見放されており、こんな悪い状況で知り合った隼にコーチを依頼する。弟を死なせた天馬を拒否する隼であったが、次第にその情熱に絆されていき…という物語。

他の寺山作品に比べると、全くと言っていいほど抽象的な表現のない、ストレートで観易い作品になっている。東京下町の貧しい地域が舞台で、ユニークな取り巻きたちに寺山らしさが垣間見えるが、彼としてはかなり観客に歩み寄った演出になっている。菅原文太もらしさを失う事無く、寺山ワールドに溶け込んでいるのが意外だったが、元々この作品は菅原文太の企画であったらしく、彼としては勝算があっての寺山への依頼だったのだろう。

とても興味深く、面白い作品であったが、唯一の難は寺山の資質が少し冷めた視点であるため、ボクシング映画としてはやや迫力に欠けるところだろうか。スポーツとしての高揚感よりもボクサーを取り巻く人間模様にスポットが当っており、それはそれで間違いではないが、盛り上がりという面では『ロッキー』に適わない。それでもとてもユニークな作品に仕上がっているので、寺山修司に興味のある方にはお薦めしたい一本である。

 


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「HELP!」 やっと出た! [映画-DVD]

去年の7月にDVDにしてほしい映画、という内容で幾つかの作品名を挙げたのだが(→記事)、その内の一本『HELP!』が遂に発売になった。勿論早速購入したのだが、画質、音質とも素晴らしく、はっきり言って映画館で観た時(遠い過去なのだが)よりも数段上で、嬉しくなった。

僕がこの『HELP!』を初めて観たのは未だ中学生の頃。今からかなり遡らなくてはならないほど以前の事。地元の公立中学に入学した途端、周りの同級生達が急に洋楽など聴き始め、僕も出遅れはしたものの、友人に教えられたザ・ビートルズのファンになった。グループとしては既に解散はしていたのだが、4人夫々がソロで活躍をしており、丁度ポールがウイングスというバンドを組んで『ヴィーナス・アンド・マース』を発表し盛り上がっていた時期だった。同級生のK昭二は「これからは俺のことをショージ・ハリスンと呼べ」とくだらない発言をしていたことを思い出した(誰もそうは呼ばなかったが)。

ビートルズ3本立て.jpg 

そんな我が校でビートルズの人気が沸騰していた頃、ビートルズの映画の3本立てがリバイバルで公開されることを知り、怪獣映画を観なくなってから遠ざかっていた映画館に久しぶりに出掛けた。場所は日劇前(まだあったんだよ)の階段を地下に下りた所にあった日劇文化という小さな映画館。中に入ると超満員。やっと空席を見つけ、ワクワクしながら開映を待ったことが昨日の出来事のように思い出される。

話は長くなったが、その3本立ての1本目が『HELP! 4人はアイドル』だったのである。テンポ良く軽やかな演出とビートルズの演奏風景。もうすっかり魅了されてしまった。ストーリーは単純。ある宗教団体の生贄の儀式に必要な指輪が紛失。なぜかリンゴ・スターの指にあることを知った主宰とその部下が指輪を取り返そうとした挙句、リンゴを生贄にしようと追い回す。そして4人(ポール・マッカートニー、ジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、リンゴ)はその追っ手から逃げ回る…という話。これを実にイギリスっぽい皮肉っぽいナンセンスな笑いで描いている。「ドーバー海峡はどっち?」という小ネタは特に気に入っていた。

満足、満足、大満足のうちに映画は終わる。続けて観た『レット・イット・ビー』『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』よりも遥かに『HELP!』の印象が強い。今観ても実に楽しい映画で、DVDを購入し、冒頭だけちょっと観ようと思ったものの、結局一気に最後まで観てしまった。そして改めて、この映画と前作は後のアイドル映画とPVに多大な影響を与えたことを実感した。そしてこの映画こそが究極のアイドル映画であり、PVでもあり、後の作品にこれを越えたものはないと断言したい(…いゃ、多分)。

この映画を観たことがきっかけで、僕は音楽以上に映画にはまっていった。つまり僕の映画ライフの原点がこの『HELP!』なのだ。そんな個人的に記念のこの作品、昔は定期的にリバイバル公開されていたが、最近では全く観る機会がなかったと思う。観ていない人も多いと思うので、是非観てもらいたい。

それにしてもショージ・ハリスン(ジョージじゃないよ)は実はポールのファンで、右利きなのに左利き用のベースギターを買ってしまったのだが、ちゃんと弾けるようになったのだろうか?

 


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「尻怪獣アスラ」 [映画-DVD]

尻怪獣 アスラ [DVD]この記事をお読みの皆さんは、ある日突然

ものすっっごく、くっっっだらない映画

を観たくなることはありませんか?

僕はあります。まさにそんな気分だったのです。

で、レンタルショップで物色していて見つけたのが、この『尻怪獣アスラ』だったわけです。横にあった『チアリーダー忍者』とどっちにしようか迷いに迷った末にこちらを選んだのです。ある意味僕の希望通りで正解だったのですが、それにしても

予想をはるかに超えたくだらなさ

に驚愕した次第です。しかもとことん安っぽい創りに、休日にこんなの観てる自分が情けなく思えてきました。

え、どんな内容かって?

書きますか? 書かなきゃダメですか?

あのぉ、下のイラストだけで勘弁してやってください。

どうかひとつ…


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「気球クラブ、その後」 [映画-DVD]

気球クラブ、その後 [DVD]この映画を観て感じたのは「懐かしい感覚」である。もうそれが全てだと言ってもいいくらいだ。従来の商業映画的な常識を排し、おそらく殆ど自然光のみで(と感じるように)撮影しているため、夕暮れのシーンではそのままの薄暗さなため、役者の顔もよく分からない。

この感じって8mm映画だよなぁ

と、昔少しかじった人間にはそう思えた。園子温監督は自主映画出身。プロの現場しか知らない監督にはこんな映画は創れないし、創ろうとも思えないだろう。もしかしたら(かなり確率は高いのかも?)一般の観客には単なる下手くそな映画に見えるのかもしれない。絶対万人受けするとは思えない作品。

ストーリーは極めてシンプル。以前少しの間活動していた気球クラブ「うわの空」のリーダーであった村上がオートバイで事故死する。その追悼のため5年ぶりに当時のメンバーが集まる…というだけ。ストーリーと言うよりシュチエーションの群像劇。現在のメンバー各々が携帯で連絡を取り合うところにクラブがあった頃の回想が織り込まれる。それぞれがそれ程の連帯感もなく、リーダーの死に対してもあまり悲しむ者もいない。5年ぶりに集まっても、それはその場限りのものであり、あっさり離れ離れになっていく。そしてその儀式の終わりががそれぞれの青春時代の終わりだと感じられる、とまぁ、何とも薄情な人間の集団なのだが、この人間関係の希薄さがかえってリアルに思える。

この映画を観ていて、園監督は昔の8mmのような映画をまた創りたくなったのかな、と感じた。あの手作り感はプロの現場ではなかなか味わえないと思えるのだが、できるだけその感覚に近づけたかったのではないだろうか。また、それを成立させてしまったのだから大胆な試みである。

薄暗い画面を観ながら8mm映画を創っていた当時の記憶が蘇り、それが画面の中の登場人物の心情と重なり、ちょっと切ないほろ苦さが残り、無性になんだか叫びたい気持ちになった。


タグ:園子温
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「あなたにも書ける恋愛小説」 [映画-DVD]

あなたにも書ける恋愛小説1980年代、僕はロブ・ライナー監督作品の虜だった。『シュア・シング』『スタンド・バイ・ミー』『恋人たちの予感』はどれも大好きな作品。特にロブ・ライナー自身の体験が元になっているかのような『シュア・シング』と『恋人たちの予感』は格別。どちらもちょっと変人とも思える主人公たちの恋愛模様。男も女も不器用なうえに変なこだわりがあって、それが笑えると同時に共感を生む。

そんなロブ・ライナーも『ミザリー』を最後に急に魅力を失う。その後の作品は観たいと思わせるものがなく、僕としてはすっかりご無沙汰の監督になってしまった。いや、役者としてウディ・アレンの『ブロードウェイと銃弾』に出ていたっけ。でも接点はそれだけ。この『あなたにも書ける恋愛小説』で随分お久しぶりのご対面と相成った。

多額の借金を抱える作家のアレックス(ルーク・ウィルソン)。ヤバいところから借りてしまったため、30日以内に返さないと殺すと脅されて、慌てて1ヶ月で作品を仕上げ、そのギャラで返済しようと決める。しかし借金取りにパソコンを壊されてしまったため、口述筆記しようと速記係を依頼する。訪れてきたのはエマ(ケイト・ハドソン)であったが、弁護士事務所と偽って依頼したため、アレックスは怪しまれて、エマは帰ろうとする。引き止めようとするアレックスだったが…というのが話の導入。

この後、当然であるがエマはアレックスの小説の口述筆記を引き受ける。エマとアレックスの話と並行して口述筆記される小説の内容がケイト・ハドソンとルーク・ウィルソンに加えてソフィー・マルソーによって演じられる。内容は少し昔の時代の三角関係がもつれる物語。

こんな二重構造のお話で、いかにも面白くなりそうなのだが…あまり面白くなかった。2つの物語夫々が結局薄い内容になってしまっているし、工夫もあまりなく盛り上がらない。通常の映画の枠で2つの物語を語ろうとしているのだから、あまり凝った展開もできずあっさり味。観ている最中、作家の話とその書いている物語が同時進行する映画ってあったよな、と思い出したのが『おかしなおかしな大冒険』。残念ながら(?)あっちの方がずっと面白かった(詳しくは書かないけど)。

それにしてもロブ・ライナー監督作品を久しぶりに観たのに、がっかりしてしまった。一番得意なジャンルのはずだったのに…。悲しいかなひとつ痛感した。それは

才能は枯渇する

ってこと。何だか淋しくなって薄ら寒さが身に凍みて風邪をひいてしまった。


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「殺人狂時代」(岡本喜八) [映画-DVD]

殺人狂時代岡本喜八監督の作品が好きだ。とは言っても、まだ観ていない作品も沢山ある。だから控えめに「大ファン」とは言わずに「ファン」くらいに留めている。でも新たに作品を観る毎に、更に好きになっていく。この作品も今回初めてDVDで観たが、

サイコーに面白かった!

と、ただただその一言で尽きてしまう。これぞ娯楽映画! 細かいカット割による小気味良さは編集の賜物か。役者も軽くコミカルな演出意図を理解し、主演の仲代達矢のオトボケぶりが可笑しく、他の映画(例えば黒澤明監督作品)とは全く異なる魅力を見せてくれる。相手役の団令子もいつもより色っぽくミステリアスに好演している。仲代の相棒には岡本組常連の砂塚秀夫。敵役にはこれまた常連の天本“死神博士”英世が務め、いつもの岡本喜八映画より出番が多くファンを喜ばせてくれる。

ひょんなことから溝呂木博士(天本)率いる殺し屋組織「全日本人口調節審議会」から命を狙われることになった、大学で犯罪心理学を教える桔梗信治(仲代)。追われる中で知り合ったルポライターの鶴巻啓子(団)と自動車泥棒のビル(砂塚)を率いて組織に立ち向かうことに。しかし啓子が敵の手に落ちてしまい…というストーリー。

自分の文章力が不足しているため、この面白さを伝えきれないのが残念。

とにかく騙されたと思って(騙してないけど)観てほしい!

特に日本映画はつまらないと思っている洋画ばっかり観ているアナタ!! 絶対目から鱗が落ちるからさぁ。観てよ、ねぇ…


最近1960年代の東宝映画を観ていると、たまたまなのだが団令子が出ていることが多く、何となく気になる存在になってきた。このブログで記事にした2本のクレイジーキャッツ映画に出ていたし、黒澤明監督の『椿三十郎』『赤ひげ』にも出演していた。調べてみると小津安二郎監督が東宝で撮った『小早川家の秋』にも出ているし、川島雄三監督、成瀬巳喜男監督にも起用されており、凄いキャリアの持ち主だった。かと思えばプログラムピクチャーだって出てしまう。尤もその頃の東宝専属女優なんてみんなそんなものかもしれないが、元気の良い(当時の)現代っ子な感じが魅力的で多くの監督に可愛がられたのであろう。残念なのは既に故人だってこと。2003年に68歳で亡くなられたそうで、もっと活躍してほしかったと今さらながら思う。

 


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「さよなら、さよならハリウッド」 [映画-DVD]

さよなら、さよならハリウッド自分の中でウディ・アレンの作品は大きく2つに分類している。それはウディ・アレン本人が出演しているかいないか。そして僕は彼が出演している映画の方が圧倒的に好きである。なにしろ彼が出ていないと、どんなに良く出来た作品でも物足りない。どうにもウディ・アレンの映画を観たという満足感が得られない。彼が出演していない『カイロの紫のバラ』『ブロードウェイと銃弾』は良く出来ているし面白くて好きなのだが、それよりも一般的にはあまり評価されていないが彼が出演している『カメレオンマン』『ブロードウェイのダニー・ローズ』『ニューヨーク・ストーリー(の中の一編)』の方がよっぽど好きだ。あの神経質で皮肉屋なニューヨーカーというキャラこそウディ・アレン映画の真骨頂と思える。

この『さよなら、さよならハリウッド』は観損ねていたウディ・アレン監督・主演作。僕にとっては正調ウディ・アレン映画。ワクワクしながらDVDにて鑑賞。

ヴァル(Wアレン)は2度もオスカーを受賞している映画監督だが、今はすっかり落ちぶれてまともな仕事がない。そんな彼に願ってもない映画監督の仕事が舞い込む。しかし、依頼者のプロデューサーは別れた元妻で、製作会社の親玉は寝取った男。ヴァルは未だに許せない気持ちでいるが、仕事の魅力には勝てず、依頼を引き受けることに。久々の映画、しかも超大作に張り切るヴァルだったが、クランクイン前日になって神経症がでてしまい目が見えなくなってしまった。どうしても仕事を降りたくないヴァルは目が見えないまま撮影を開始した。そして…というお話。

いやぁ、ウディ・アレン節炸裂。

ファンには大満足の一本。いつも同じようだと指摘する人がいるかもしれないが、僕に言わせれば

それがいいんだよっ!

って感じ。ウディ・アレンの映画は落語みたいなもの。彼の毎度のキャラは八っつぁん熊さんと変わらない。落語の名人芸を楽しむように観ればいい。後は配給会社がもう少しセンスある邦題をつけてくれればそれでいい。


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