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「きみの友だち」 [映画(2008)]

きみの友だち01.JPG重松清の小説が好きで、すっかり読書しなくなってしまった今でも、彼の作品だけは割りと読んでいる。僕は重松清の作品を読む度に、同世代的なものを強く感じる。登場人物や物語に登場するアイテムとか彼が言いたいことなど、とにかく細かいニュアンスまで「分かる」気がするし、共感するところも多い。しかし、この『きみの友だち』は原作の小説は読んでいなかった。映画を観る前の予備知識は原作が重松清ということだけ。単純に重松ブランドを信用して観ることにしたのだった。原作をヘンにいじらなければ間違った映画にはならないだろうと思えた。もっとも『ヒナゴン』なんて失敗作もあったけど。

この作品は20歳になってフリースクールで絵を教えている和泉恵美(石橋杏奈)が、取材に来たフリーライターの中原(福士誠治)にいろいろと質問されている内に過去の回想になる構成になっており、夫々のエピソードと現在の恵美と中原のドラマとを行ったり来たりする。回想は、

10歳の恵美と由香が仲良くなっていくエピソード

恵美の中学校の同級生ハナ(吉高由里子)が友だちに彼氏ができて寂しい思いをする話

恵美の弟ブンちゃん(森田直幸)の幼馴染の中西君が、ブンちゃんと疎遠になっていくのを寂しく思っている話

ブンちゃんが所属するサッカー部で万年補欠だった佐藤先輩(柄本時生)が、何かと後輩にちょっかいかける話

中学生の恵美が病気で入院している由香(北浦愛)を彼女の誕生日に見舞う話。そして…

といった物語が展開される。夫々の話は一応恵美で繫がってはいるものの、お互いの関連性は殆どなく、独立したエピソードになっている。したがって短編を集めたオムニバスのような形式の作品である。

やはり原作の力が強いのか、夫々のエピソードが良い。最初の少女時代の話では、自動車事故で足が不自由になってしまった恵美と元々体が弱く学校を休みがちな由香が、クラス対抗縄跳び大会で跳べないという理由で縄を回す係になり、二人っきりで練習する様子が健気で物寂しい。なかなか息が合わず、縄が上手く回らない二人の様子を引きのアングルで撮った廣木隆一監督の演出も適切。今後二人に起こるだろう事も予測でき、最初から泣けてしまった。

そこから話は別の人間が中心になるエピソードが続き、観ているこちらは最初は戸惑うのだが、どれも面白いエピソードなので興味は途切れない。そして最後の「もくもく雲」…

ただしこのようなエピソードを並べた串団子のような構成は映画のパワーを弱くするように思える。夫々のエピソードの主人公達はそれっきりで、最後のエピソードに向けて集結するという流れではないため、クライマックスの感動も大きな波が起こるまではいかないのが残念。日本の興行形態では無理だと承知で言うが、短編として独立した作品で見せてくれた方が良かったように思える。話がいろいろ入ってくると余韻に浸る間もなく次、という感じになってしまう。

とは言え、良心的な作品であることは間違いない。主演の石橋杏奈は14歳から20歳までという難しい演技を良くこなしていたと思う。柄本時生は出れば印象に残る役者で目が離せない。その他若手の有望株が何人も出演しているので、そんな観点でもお薦めしたい作品である。

きみの友だち.JPG

そういえば、何年か前に重松清の『流星ワゴン』を映画化する話があったと記憶しているけど、いったいあれはどうなったんだろうか?


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