「パレード」 [映画(2010)]
たまにこの『パレード』のような不思議な感覚にさせてくれる映画に出くわす。それは観ている間は退屈するのに観終わってみると満足感が残る、矛盾とも思える感覚である。僕にとっては先頃亡くなったフランスのエリック・ロメール監督の作品がこんな感じで、この行定勲監督の『パレード』とは作風は全く異なるものの、観賞後に残った印象はとても似ているような気がした。
都内の2LDKのマンションを共同で借りて生活している映画配給会社に勤める直輝(藤原竜也)、イラストレーターの未来(香里奈)、無職の琴美(貫地谷しほり)、大学生の良介(小出恵介)の4名。良介は先輩の彼女に恋をし、琴美は同郷の若手人気俳優と熱愛中、酒乱気味の未来はおかまバーで飲んだくれ、健康第一の直輝は深夜のジョギングを欠かさない。そんなある日、見知らぬ金髪の少年・サトル(林遣都)が部屋にいる。みな良介の友人と思っていたが、良介は知らないと言う。真相は飲んだくれた未来が無理矢理引っ張ってきたのであった。ひょんなことで部屋にやって来たサトルはそのまま部屋に居ついてしまったのだが、どうも怪しげな人物で謎めいている。そんな中、マンションの近所では連続暴行事件が起こっており…というお話。
以前から共同生活している4名はお互いのことを知っているようで知らない、知らないようで知っている微妙な関係なのだが、それで調和がとれている。各々が中心となるエピソードがあるのだが、そのエピソードではその人物を理解できるのだが、他人が中心になるエピソードで脇に回ると妙に白々しく見えてくるのが面白い。そこに異分子のサトルが入ってくることでまったりした4人の関係が動き始めるので、少しダレ始めた観客(僕のことなのだが)を再び映画の世界に引っ張っり込んでくれる。
この作品は極めて日常的なところから、ほんのちょっとずれたところに面白さや気味の悪さを見出そうとしており、行定監督が創りたくて創った過去の作品と共通点も多いことから、彼の作家性の本質はこの『パレード』のような作品群にあるということなのだろう。
地味な上に一本筋が通った構成ではないので、万人に受け入れられる作品とは言えないものの、観る人が観れば面白いと感じられる映画になっていると思う。ミニシアター系が好きな人は試しにご覧いただきたい。
絵の人は藤原竜也??
by なぎ猫 (2010-03-11 09:02)
そうです。似てなかったですね。
次回頑張ります。
by 丹下段平 (2010-03-12 00:07)