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城崎温泉郷はテーマパークだった!(その3) [旅行]

↑王橋を渡って一の湯へ

※できましたら(その1)から順番に読んでくださいね

浴衣姿の雑踏の中から夜空に広がる打ち上げ花火を見ていると、すっかり童心に戻り、小さい頃親と一緒に行った旅行のような気分が蘇る。浴衣姿の雑踏の中から亡き父が「よぅ」と現れて来そうな不思議な感覚に陥る…ってまだ親父は生きてるけど。勝手に殺しちゃいかん。でも例えば大林監督の『異人たちとの夏』のような奇跡もこの場なら起こりそうな感じがした。

僕は花火を見上げながら思わず

完璧だな

と呟いていた。何が完璧なのかその場では把握できていなかったが、その時思った言葉がそれだった。花火はおよそ15分で終わった。15分でも充分堪能できた。そして何が完璧なのか、を考え始めた。

それは全然難しい事ではなかった。この街は全体でコンセプトに則り異空間を成立させているのだ。こじんまりとした和風の温泉宿が並び(洋式のホテルは排除)、レトロな遊戯施設に娯楽は絞り(あまりにもベタな温泉場風景)、かなり抑えた明るさの街灯、温泉街中央を流れる小川と柳の並木、そこに掛かる橋のデザインは昭和を飛び越え大正時代?と思わせるようなデザイン。

そうなんだ、この城崎温泉は街ぐるみで昭和半ばの時代を再現するコンセプトのテーマパークになっているんだ

と気が付いた。いや、これは確かめた訳ではないので、もしかしたら偶然なのかもしれない。しかし、それにしては怖いくらいに上手くいき過ぎている。横浜のラーメン博物館や池袋のナンジャタウンの世界観を街全体で作り上げている。しかも、こちらが圧倒的に凄いのは、浴衣に下駄姿の数え切れないくらいの人数のエキストラ達がいることだ。宿泊客各々は自分がその場の主役ではあるのだが、他人からすれば雰囲気を盛り上げるエキストラなのだ。

う~ん、これは恐れ入った

と、夕食を摂る場所を探し回っている仲間をよそに、ひとり感心ばかりしていた。

ところが飲食店はなかなか見つからない。但馬牛の店は早々に店じまいしてしまっていた。街を彷徨っている内に、また思い出したことがあった。それは旅館にあった名産品展示コーナーに書いてあった文章だ。確か、

展示してある名産品は旅館では販売していないので、土産物屋で購入してください

といった事が書かれてあったのだ。で、また気が付いた事があった。この街では他人の領域は侵さないという事が徹底されているのだ。だから食事は旅館でという事が約束になっているので、逆に僕らは夕食にありつけないのだ。

これは全てにおいて徹底したチームワークで街を繁栄させているのだ

おちこぼれを出さず共存共栄させることで、街が一体となって素晴らしい方向に動いているのだ。僕は腹を鳴らしながら心の中で拍手を送った。

やっと開いている蕎麦屋を見つけ、簡単に夕食を済ませる。旅館の横のカキ氷屋でビール一杯飲み、その日は就寝。朝は外湯が開く7時に起き、勇んで一の湯へ。一の湯は温泉街の中央にあり、場所も風格ある外観も、まさに城崎温泉を代表するメインの風呂である。実は昨日は休館日で入れなかったのだ。

旅館の外は(当然だが)すっかり明るくなっていた。明るい中で見渡す温泉街は、昨夜と打って変わって平凡な温泉街に映った。まるで魔法が解けてしまったかのようだ。やはり舞台装置として夜に勝るものは無い。

昨夜は7つの外湯の内、1箇所しか行けなかったので、あわてて一の湯から鴻の湯地蔵湯と3箇所制覇(?)したところで体力の限界。素泊まりなので朝食も無いため、湯から上がるとすぐにチェックアウトし、城崎温泉を後にした。

それにしても、時間が許すならもう一度行きたい温泉地であった。はっきり言って、温泉地でもう一度行ってみたい場所なんてそれ程多くは無いのだが、城崎温泉にはもう一度行きたい!

交通が不便で、恐らく行くだけで1日以上かかったのではないかと思われる時代に、遥々東京から城崎温泉に何度も訪れた志賀直哉。

直哉、あんたの気持ちはよ~く分かる。

(おしまい)

城崎温泉HP→ここクリック


タグ:城崎温泉
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