「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」 [映画（2006）]
実は結構期待している映画だった。「こりゃぁ、泣けるでしょう」と思って観に行った。
で、やはり泣けた。しかし、諸手を挙げて「良かった！」とは言えない残念な部分も多々あり、ちょっと終盤は引いてしまった。尤も良い所も多いので、尚更残念に感じているのだが…。
冒頭のやりとりは正直「何じゃ、こりゃぁ！」な漫画的なやり取り。篠原涼子も主人公の母親というにはリアリティが感じられない。貧乏の設定なのに生活感がない雰囲気だからか。観客動員を考えたキャスティングなんだろうけどミスキャストに感じられ、「ちょっと厳しい映画になりそうだな」と憂鬱になりかけたのも束の間、主人公の少年が車に轢かれたあたりから面白くなっていく。
ストーリーは割愛するが、主人公の友人で父親が死んでしまった少年が、運動会の借り物競争で「お父さん」の札が出てしまい、立ち尽くしてしまうエピソードは無条件に泣けてしまった。あまりにも切なく、その後幽霊になって父親（杉本哲太 イイんだよ彼が！）が登場するところでまた泣けた。この映画の中で、ここが一番泣けたかな。
この映画は原作を読んでいなかったから、親のいない少年が幽霊になった両親に出会うという『異人たちとの夏』的な内容を想像していたのだが全然違った。
少年が幽霊に導かれて両親（特に父）を理解していく話
だった。だから劇場にいた父親世代は皆泣いていた。子供が主人公なのに、主人公が父を理解していく事ではなく、子供に自分達の気持ちが理解されていく、という視点で観ていて感動した様子である。だから賢明にも（？）少なかった若い世代の観客は結構引いていたようにも見えた。父親世代だけど子供がいない俺は感動しながらも案外冷静だった。つまり、この映画は
父親のための映画
と言い切って過言ではあるまい。だから
少年が幽霊に導かれて両親（特に父）の気持ちを理解してくれる話
と言い換えたほうが正しいのかもしれない。
このように父親世代に大きくアピールできたのは、父親役の西村雅彦の好演に拠るところが大きい。人の良さが滲み出ているのは、演技以上に彼自信の持っている素の部分に拠るところが大きいのではないかと思う。実際に会った訳ではないので断定はできないのだが…。ただ残念なのは、元漁師だが漁に出て嵐に遭い親友を死なせてしまい、それ以来漁師を辞めタクシー運転手をしているという設定で、タクシー運転手は板について見えるのだが、どう見ても元漁師には見えない点だ。これは役者の演技力云々ではなく、西村雅彦本人の資質として漁師という職業が合わないからなのではないか。だからエピローグで再び漁師に戻った様子が写し出されるが、「似合ってねぇな～」という印象に留まってしまう。かと言って他の役者の方が良かったのかと言われると考えてしまう。キャスティングって難しいよね。
クライマックスでＣＧが良くなかったり、それまでいた祖父が急にいなくなっても皆まったく気にしない（観客の俺でも心配してるのに…）等、問題点も多々あるのだが、全般的に好印象な出来ではあるので、機会があったら観てほしい（特に父親世代は）。
はじめまして！
あちこち共感しましたのでＴＢさせていただきました。
借り物競走や、父親世代におすすめなところなど。
特に西村さんに漁師が似合わない、というところは薄々思いつつも杉本さんと見比べて体格のせいかしら、と思っていたのですが
＞＞資質として漁師が似合わないからではないか
がとても腑に落ちました！
（わたしも勿論、直接には存じ上げませんけれども・笑）
他の映画も読ませていただきますね♪
by じゃすみん (2006-09-10 02:44)
じゃすみんさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
やっぱり俳優って演技力ではどうにもならない部分ってあると思うんです。西村雅彦は好きなんですが、海とか山とか似合わない。基本的に都会人なのではなかろうかと思います。
by 丹下段平 (2006-09-10 03:46)
＞＞都会人
「漁師が似合わない」のソフトな表現(^^)お上手ですね！
アウトドアとか、身体を鍛えるとか、全然興味ないというインタビュー聞いたことがあります。
・・・でも、
＞＞かといって他の役者の方が良かったかといわれると考えてしまう
キャスティングの不思議なところですよね！
篠原涼子と北村一輝の子供なら、あの一路くんにはならなそうですし！
by じゃすみん (2006-09-12 15:28)
篠原涼子×北村一輝＝思いっきりクドイガキ…かな？
by 丹下段平 (2006-09-12 23:22)
原作が秀作だけに製作者の手腕が問われる作品でしたが・・当方もほぼ、丹下氏の意見に１票って所でしょうか？篠原 涼子は女性に支持されてるせいかドラマ等でもひっぱりダコですが映画をこなせる程の演技力は？ん～、邦画のレベル↑はまだまだ、ん～ 難しいかな？。
by アートフル ドジャー (2006-09-15 11:29)
篠原涼子よりずっと下の世代の女優に期待してます。このブログで名前を出した女優はビジョンがしっかりしている印象で好感持てます。特にこれからは谷村美月に期待してます。それにしても、男優の方が厳しいような…。ジャニーズが出てるだけで観たくなくなる。
by 丹下段平 (2006-09-15 22:44)
こんにちは！TBさせていただきました＾－＾
おっしゃるとおり、まさに父と息子、父と父、といった男の映画でしたね～。
by izura (2008-05-05 21:55)
izuraさん、コメントありがとうございます。
本来は少年を中心とした家族の話なのでしょうけど、創り手の思い入れが父親に対して強かった結果、このような作品になったのかな、と思えました。
by 丹下段平 (2008-05-06 00:43)