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「帰らざる日々」 [映画-DVD]

帰らざる日々夏の終わりが感じられ始めた今日この頃。映画のジャンルとして「ひと夏もの」というのが洋の東西問わずあり、夏の始まりとともに芽生えた恋も、夏が終わると淡い思い出となる、なんてストーリーも多く作られている。

この作品も夏の淡いというよりも痛い思い出が、回想と今(作られた年)と絡み合って進行する。監督は藤田敏八。実は藤田監督作品はあまり好きではなく、有名な『八月の濡れた砂』(これもタイトル通り夏の映画)もあまりピンとこなかったのだが、この作品は別。あまりにも切ない展開に心打たれる。

舞台は長野県飯田市。最近多く作られている地方を舞台にした映画の走りなのかもしれない。この山間の地方小都市が映画の切なさにマッチしており、実に効果的だ。主演は永島敏行と江藤潤。僕はこの2人を当時「マイナー映画の両巨頭」と勝手に名付けていた。マイナー映画とは当時の大手東宝・東映・松竹以外の作品で、彼らは大手3社以外の作品で多く主演していた印象があったからだ。今なら浅野忠信とオダギリ・ジョーといった感じか。また竹田かほりも花を添えている。彼女もこの作品に出ていないが森下愛子とともに「マイナー映画の2大ヒロインと勝手に名付けていた。そんな当時のマイナー映画のエースが集結したこの映画、夏の終わりに決まって観たくなるのだ。

1978年(今)、父親の葬式のため長野県飯田市に帰省するため特急列車に乗り込んだ野崎辰夫(永島)は車窓を過ぎ去る景色を眺めながら、1972年の夏にあった故郷での出来事を思い出していた。

高校3年の夏、辰夫はいけ好かない不良っぽい隆三(江藤)に、なぜか気に入られてしまう。辰夫には憧れの喫茶店のウェイトレス・真紀子(浅野真弓)がいて、彼女は隆三の従妹である事が分かる。隆三は辰夫に彼女との仲を取り持つと言って近づき、やがて2人に友情が芽生えていく。そんな中、辰夫の中学の同級生(竹田)と再会する。彼女は辰夫に好意を寄せていた。

やがて真紀子に妻子ある恋人(中尾彬・当時から濃い~キャラ!)がいる事を知る。高校生ではどうにもならない現実に打ちのめされ、辰夫に好意を寄せ、初体験の相手でもある彼女(竹田)も遠くに去ってしまう。辰夫は隆三に誘われてバイトを始めるが、やがて悲劇が…。一方故郷に着いた今の辰夫にも衝撃の事実が待っていた!

それにしても切なく、観ていて心に傷を付けられるような痛みを感じる映画である。散っていく友情・失恋・出会いと別れ・大人社会とのギャップ・初体験など、いわゆる「青春映画」のキーワードのてんこ盛りである。観ている人間も辰夫が回想する青春時代を自分の出来事であるかのように同化して観てしまうので、後半は本当に切なくやるせない気分になる。中岡京平によるシナリオのオリジナルタイトルは『夏の栄光』。実に逆説的なタイトルなのだが、アリスの主題歌を入れたために、その主題歌をこの映画のタイトルにしてしまったようだ。

それにしても、DVDの作品データによると、この映画のクランクインは1978年6月27日、クランクアップが8月3日、初号試写が何と8月9日、封切日が8月19日とある。この頃の日本映画って本当に突貫作業で作ってたんだね! 製作は日活。当時ロマンポルノを作っていたが、たまにこのような一般映画も作っていた。


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遠雷

今 夜中だ 私は酔っている。私はこの映画を学生時代に見た。
酔っ払いの戯言を聞いてくれ。(´ω`)つЦ←(酒) ウイ~ アハハ
私はこの映画は邦画最高の映画だと今でも思っている。
当時の私の心情にとても近い物だ。
誰しもが心に宝物を持ち、一抹の不安を抱きながら社会人になった。
故郷の風景 友情 恋愛 憧れ 将来に対する不安と期待 今も同じ様に
人はそれらの物を内包しながら、生きていくと思う。
この映画は、その 青春と呼ばれる時代の若者が見て考える作品だと思いたい。私はまさにその瞬間にこの作品に出会えた。(感謝)

本当にこの映画に感謝したい。
by 遠雷 (2007-01-08 02:34) 

丹下段平

遠雷さんはじめまして。酔っ払った勢いで書き込んでいただいたようですが熱い想いが伝わってきました。
僕はリアルタイムに観た訳ではなく、青春時代を少し過ぎた時期に出逢い感動しました。そんな人達にも是非観てもらいたい作品だと思います。
by 丹下段平 (2007-01-08 03:27) 

遠雷

(・ω・)∩ まさか返事が書いてあるとは、思いもよらなかった。w
実はこの映画が見たくて 映画館に行ったわけではなかった。
当時 田舎では映画は二本立てが普通で、もうひとつの上映作品 [高校大パニック]が学生の間で すこ~しだけ話題になっていた。(本当に?) その理由は当時新人女優の浅野温子の放尿シーンが有るという高尚な理由だけである。 (´д`)γ~~ フー 駄目駄目な学生だな・・・
しかし[高校大パニック]は 冒頭の飛び降りシーンと浅野温子以外、記憶のかけらも残っていない。あまりにも素晴らしい脚本だった。シュールです
そんな私を救ってくれたのが、この作品でした。内容については みなさまで確認してもらいたいですね。 それではお休みなさい。
by 遠雷 (2007-01-10 23:38) 

丹下段平

『高校大パニック』は元は8ミリ映画で、それが評判になったので劇場映画になったという珍しいパターン。石井聰互のメジャー映画のデビュー作ですが、監督は澤田幸弘と共同でした。それが祟って変な映画になってしまったようですが、こんなこと書いといて観てません。その後もあまり観る機会がなかったと思うので貴重な体験だと思いますよ。
by 丹下段平 (2007-01-11 23:36) 

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