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「なごり雪」 [映画-DVD]

なごり雪 デラックス版友人に薦められて大林宣彦監督作品『なごり雪』をDVDで観た。

大林映画、随分久しぶりだなぁ、と一瞬思ったのだが、よく考えてみたら一昨年、この映画より後に作られた『理由』を見ていた。しかし、あの原作をよくまとめたものだと思ったものだが、大林映画を観たという印象はなかった。だからこの『なごり雪』が久々の大林作品に感じたのだろう。

昔のように「A MOVIE」とは出なかったが、隷書体のクレジットが大林映画っぽい。いきなり伊勢正三が唄う画面にタイトルクレジット。そういえば『時かけ』のラストで原田知世も唄ってたけど、基本的に大林監督は唄ったりするのが好きなんだなぁ、などと感傷に耽るのも束の間、三浦友和演じる祐作が妻に逃げられ遺書を書いているところに故郷からの電話。かけてきたのは旧友のベンガル扮する水田で、彼の妻が危篤で祐作に会いたがっている筈だから帰って来てほしいというもの。祐作は電車で帰郷する事にし、そこに彼の高校時代の出来事が回想される。

あ、これは『帰らざる日々』(以前記事にした→こちら)みたいだなと思い出す。やはり帰省するというのはドラマチックな出来事なのか。故郷というものが無い自分には実感できないのだが。

演出意図もあり、役者の台詞は殆ど感情を抑えた棒読み。以前から大林映画はそのようなところがあり、個性的になるよりも美しい台詞回しを重視している(映像特典のインタビューで監督が語っている)。結果的に小津安二郎っぽい古典的な雰囲気が漂う。これは上手い役者には良いが、実力が伴わない役者がこれをやるととてつもなく下手にしか見えない。この映画でも若手の役者には厳しかった様子で、特にベンガルの娘役の女優の演技は絶望的に思えた…のだが、世の中何が起こるか分からない。今やこの女優は主演作が何本もある超売れっ子。この映画を観たらその後の展開はアンビリーバボーである。

役者の演技はともかく、映画はあまりにも哀しく切ない。ある意味、嘗ての大林映画の主人公たちの後日談にも思え、青春時代のほろ苦い経験は、やがて取り返しのつかない深い悲しみに終わる。この映画は若い人よりもある程度年齢を重ねた人が観て切実に感じる作品になっており、嘗て尾道3部作を好きだった人には必見である。


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