「イカとクジラ」 [映画(2007)]
この映画も「好き」か「嫌い」かがはっきり分かれる、客を選ぶタイプの作品ではなかろうか。観た人によって「面白かった」あるいは「特に何も起こらず退屈だった」と両極端な意見に分かれそう。僕は「面白かった」し「好き」なタイプの映画。行った事はないけれど、いかにもニューヨーカーな一家の家庭崩壊劇。とは言っても軽いタッチで描かれており、さほど深刻な雰囲気はない。
父・母・兄ウォルト(ジェシー・アイゼンバーグ)・弟の4人家族でテニスは一家揃ってやるものの、家族の絆はあまり感じられない。夫婦揃って作家であるが、父の書く小説は難解で、出版社に受け入れられず落ち目になっており、大学の講義で収入を得ている状況。一方母は売れっ子で、結婚した当時の立場が逆転してしまっている。そんな中、いよいよ離婚。子供2人は日替わりで父と母の家を行ったり来たりする羽目に。その原因が母の浮気と知ったウォルトは母を許せず父と暮らし始める…。とまぁ、ストーリーは大きな展開はせず、こんなやり取りをスケッチ風にユーモアを交えて綴っていく。
父は理屈っぽい学者肌で、スポーツをすると子供相手でもムキになってしまう幼稚な面もあり、知的だが生きるのが下手なタイプ。そんな父を尊敬しているウォルトは、父の影響大で、まるで父を若くしたかのような少年。母からは「チキン」呼ばわりされている。この父と兄のトホホぶりが物語の核になっている。
だけど男ならこの2人のトホホな感じを多少なりとも持ち合わせており、何となく共感してしまう。それに対して母は強く逞しく、おまけにしたたかである。まぁ、所詮男なんて情けなく滑稽な生き物さ、という映画。
タイトルの『イカとクジラ』は、ウォルトが幼い頃に母に連れられて行った博物館の展示物で、怖くてたまらなかった記憶が蘇るところからきている。
そういえば僕も怖かったものを思い出した。昔、井の頭公園の水族館(果たして今もあるのだろうか?)の「なまず」と「山椒魚」が怖かった。家が近くにあったので、幼い頃何度か連れて行かれたが、水族館の薄暗い雰囲気もさらに恐怖感を増幅させ、僕だけ建物には入らず外で待っていたことが何回かあった。あ、これは余談でした。
この映画を観て、男の人は繊細だなぁ〜と思いました。
しかし、「なまず」と「山椒魚」も子供心にはかなりキますねw
TBさせていただきますね(^-^)
by ジジョ (2007-01-15 01:30)
男は子供でも大人でも繊細なんですよ、って何か情けない。
ところで、なまずって多分あの目が嫌だったんじゃないかと自己分析してます。何を考えてるのか分からないようなイッちゃったようなあの目。山椒魚は単純にあの姿ですかね。
by 丹下段平 (2007-01-15 02:08)
こっれは新年1発目として、早速観に行こう~っと。
by アートフル ドジャー (2007-01-16 08:28)
何となくですが、アートさんなら気に入るような気がします。多分。
by 丹下段平 (2007-01-16 21:48)
こんにちは。TB失礼します。
丹下様は本作気に入ったのですね。私はどうもこのカメラワークとダメな両親にガックリきてしまって苦手な映画でした。
この監督をプッシュしてるのがウェス・アンダーソン監督というのもうなずけるほど、ウェス映画にも似てると思いました。私はウェス監督苦手なので…。
ただ、主役のこの家族の演技と特に兄弟、そしてラストでの「イカとクジラ」についての話は面白かったと思います。
by ももも (2007-06-25 14:37)
もももさん、こんにちは。
頭はいいのにダメな人々に幾許かの共感が出来るか否かが、この映画の評価なんだと思います。まぁ、半数いるかいないか位ではないでしょうか。
by 丹下段平 (2007-06-26 03:18)