SSブログ

「となり町戦争」 [映画(2007)]

ある日、ある地方の隣接する2つの町で戦争が始まった。いわゆる不条理劇なのだろうこの映画、観る前は筒井康隆の小説『東海道戦争』の規模を小さくしたような話かと思ったが、それ以上にずっと地味なスケールの小さい作品であった。

主人公は戦争が始まった舞坂町の住人の北原(江口洋介)。彼は旅行代理店勤務で、仕事の関係でこの町に住んでいる。そんな彼に町役場の「対森見町戦争推進室」の香西(原田知世)から彼の徴兵の辞令交付式に出席できるかと電話があった。よそ者である彼にスパイ活動をさせようというのだ。戦争中とはいえ、全くその気配が感じられない中、北原は簡単なスパイ活動を始める。やがて北原は香西と夫婦を装い、敵である森見町に住み、スパイ活動をすることになる。極めて事務的であった香西も少しづつ心を開き始めるのだが…というストーリー。

う~ん、もっと面白くなってもよさそうな設定なんだけど、活かされてないな~という印象。話の奇抜さよりも北原と香西の恋愛話に重点が置かれているため、あまり盛り上がらない展開に留まる。小さい町同士の戦争で、それがいったいどこで行われているのか分からず、だけど戦死者は増えていくという不気味さはあるものの、クライマックスで大きなカタルシスを与えるまでに至っていない。できればキューブリックのようなクールな狂気みたいなものが観たかった。

あと役者の良し悪しの差が激しいのが気になった。香西役の原田知世は人間味のない町役場の職員であるが、次第に垣間見せる人間味を的確に表現し好演。北原の上司・田尻役の岩松了も普通のオヤジが実は…というのが不気味で出色。尤も『亀は意外と速く泳ぐ』でも似た感じの役ではあったが、今回の方が見せ場が多かった。この映画の世界観を担っている部分が大きい。

一方、役者の名前が分からないのだが、戦場カメラマンの役者が下手くそで足を引っ張っている。戦争推進室長役の余貴美子も珍しく良くない。ちょっと大袈裟で、主人公2人とトーンが異なる。その部下役の飯田孝男もやりすぎ。ダメに見えた役者はみんなコメディの演技。対するメインキャストは普通の演技。結局方向性が一致していない。これは監督の責任。力量が不足したのか、ベテラン俳優を指導できなかったのかは分からないが、これでは良くならない。

面白くなるはずの素材だったのに、あらゆる面で惜しい!


nice!(1)  コメント(6)  トラックバック(2) 
共通テーマ:映画

nice! 1

コメント 6

キキ

段平さん、こんばんは。

この映画ちょっと面白そう、と思っていましたが残念な仕上がりだったんですね・・・。そういえば私も最近キューブリックの作品を1日で2作見ました。
ズドンときますね。
by キキ (2007-02-21 19:17) 

アートフル ドジャー

まだ観てないのですが、いつまでかかってるんでしょう?丹下さんの△マークや×、○は僕の好みにも大体合ってるのでこの作品はパスしておきましょうかね。
by アートフル ドジャー (2007-02-21 21:51) 

丹下段平

キキさん、今晩は。
確かにこの映画、面白そうなんですが…。
ところでキューブリックの何を観たんでしょう? 僕は以前『博士の異常な愛情』と『バリーリンドン』の2本立てという無茶なプログラムで観たことがあります。さすがにお腹いっぱいになりました。
by 丹下段平 (2007-02-21 22:01) 

丹下段平

アートさん、いつもどうも。
マークでいえば△です。他に特に観たいものがなければ、観てもいいんじゃないでしょうか。直ぐに終わらないとは思いますが…。
by 丹下段平 (2007-02-21 22:04) 

キキ

「フルメタル・ジャケット」と「時計じかけのオレンジ」です。
「フルメタル・・」は普通の人が変わっていく狂気、ありますね。
コレはすごい!と感心しながら「時計じかけ・・」をみたらおかしな人が善人に変わってました。(^_^;
ほんとにお腹いっぱいになります。
by キキ (2007-02-22 22:22) 

丹下段平

『フルメタルジャケット』+『時計じかけのオレンジ』もキツイですね。どっちも傑作ですが、流石にこれは体に悪い?
それにしてもキューブリックは音楽の使い方が天才的ですよね。この2つの映画のエンディングの選曲は「凄い」としか言いようがないです。
by 丹下段平 (2007-02-23 00:02) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。