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「あなたになら言える秘密のこと」 [映画(2007)]

あなたになら言える秘密のことちょっと意味深なタイトルではあるが、内容は実に硬派な人間ドラマである。

工場で働くハンナ(サラ・ポーリー)は勤務態度が真面目すぎるため、上司から無理矢理一ヶ月の休暇を与えられる。家族も趣味もないハンナはとりあえず旅に出る。たまたま立ち寄った街で看護婦を探している男と出会い、ハンナは志願する。彼女がヘリコプターで連れて行かれた先は、海上の油田掘削所。そこで起こった火事で重傷を負った男・ジョゼフ(ティム・ロビンス)を看病するのが彼女の役目。男は火傷、骨折に加えて火で角膜もやられており目が見えず、ベッドから動くことが出来ない。それでも陽気なアメリカンである彼は、あれやこれやユーモアを交えてハンナに話しかけるが、彼女は一切それに答えない。

しかし世間から断絶した油田掘削所でジョゼフやそこに働く僅かな人々と暮らしていく内に、次第にハンナも心を開き始める。そしてジョゼフもハンナも辛い過去を話し始めるのだが…。というストーリー。

寡黙で感情が無いかのようなハンナと、陽気ではあるが実は…という過去を持つジョゼフが看護婦と患者という立場で出会い、次第に心を開いていく様子を丁寧に描かれている。限られた空間で限られた登場人物。しかし役者が素晴らしいために全く飽きる事は無い人間ドラマになっている。後半のハンナの過去を語るシーンでは旧ユーゴスラビアの独立戦争の様子が語られる。あまりにも凄惨で過酷な事が起こっていた事を、同じ時代に生きながら知らなかった事に驚く。戦いの中で起こった非戦闘員への出来事の告発と戦争への嫌悪感。監督のイサベル・コイシェは人間ドラマの中だけに収まりきれない怒りをハンナというキャラクターに背負わせている。

映画が終わっても単純に「良かった、良かった」ということにはならないが、一見の価値がある社会派な人間ドラマの佳作に仕上がっている。


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