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市川崑監督 [映画-雑記]

2月13日、市川崑監督が92歳で亡くなられた。市川崑監督と言えばヘビースモーカーで有名だったが、それでも92歳まで生きられたというのは、僕のような喫煙者にとっては希望の星であり、天寿を全うされたという感が強い。

僕が生まれて初めて観た映画が市川崑監督の『東京オリンピック』だったらしい。らしいというのは未だ物心がつく前の話だからだ。お袋が小さな僕を連れて映画館にこの作品を観に行ったところ、最初に太陽がド~ンと出るところで僕が大泣きしたため、慌てて劇場を後にしたらしいのだが、そんな小さな子供を連れて行くなんてあまりにも無謀な話である。でもそんなことをしてまでも観たかったくらい、この映画は当時話題になっていた作品だったらしい。記録か芸術かという論争を引き起こし、日本のみならず海外でも話題となり、その後の記録映画のありかたを変えたくらいの影響力があった作品であった。

僕が最初に市川監督の存在を認識したのはネスカフェのテレビコマーシャルであった。今も続いているシリーズで、市川監督は「違いの分かる男」として登場していた。子供でよく分からなかったが、何となくカッコイイと思った。そしてそれが映画監督はカッコイイ職業としてインプットされ、今に至っている気がする。

犬神家チラシ.JPGその頃、市川監督はテレビで『木枯らし紋次郎』を手掛けていた。画期的なテレビドラマという評価なのだが、子供には画期的とかそんな意識などなく、長い楊枝を銜えてプッと吐く姿と上条恒彦の主題歌がカッコよくて観ていた記憶がある。身近にあんな長い楊枝などなかったので、よく割り箸を代用品にして飛ばしたものだ。当然カッコよくは飛ばず、ただみっともない姿にしかならず親に怒られたものである。

そして市川監督は映画『犬神家の一族』を手掛ける。この映画は角川書店の宣伝も抜群に上手く、日本中で大ヒットを記録し、空前の横溝正史ブームを生み出すと同時に、その後の角川映画の快進撃も産み出した。もちろん宣伝だけではなく、内容も優れた映画であったための結果である。僕も逆立ちして少し足を広げ「スケキヨ~」とかやったものである(馬鹿だね~)。

ビルマチラシ.JPG市川監督は一応巨匠と言う扱いではあったものの、多作であったためかハズレの作品も結構あり、例えば黒澤明監督とは違い軽い印象の人だった。言い換えれば敷居の低い監督であったのだが、あまり巨匠という称号は似合わない印象である。アニメーター出身であるためかは分からないが、極端なアップを使ったりするため個性的な映像作家として鬼才の称号がしっくりくる人である。このタイプの監督は往々にして人間ドラマを描くのが下手な人が多いのだが、市川監督はそんなことはなく『ビルマの竪琴』のようなヒューマンドラマも手掛け、正攻法で撮ったりしており、作品に合わせた手法を使っている。

実は最初に挙げた『東京オリンピック』はその時限り観ていない。物心つく前に観たにも関わらず太陽の映像の印象は残っているのだが、それっきりになっている。追悼の意味でもぜひちゃんと観てみたいと思っている。合掌。

 


タグ:市川崑
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coco030705

>黒澤明監督とは違い軽い印象の人だった。言い換えれば敷居の低い監督で>あった。

なるほど、そういう人だったんですね。私は「細雪」をTVで見て、きれいな映画だなあと思いました。「犬神家…」も見ましたが、なぜかほとんど覚えていません。「木枯らし紋次郎」も有名だったけど、あまり見なかったし、名前を知っている割には、この監督の作品はあまり見ていませんね。これから、もう少し作品を振り返ってみようかしら。
by coco030705 (2008-02-16 10:48) 

丹下段平

記事には書きませんでしたけど、ココさんの仰るとおり『細雪』は美しい映画でした。僕は大好きです。
で、市川崑監督は名作も多い割りに箸にも棒にもって映画も結構あるんですよ。おまけに「何でこんなの市川監督が撮らなきゃいけないのっ」って疑問符がつく、シロートが考えても良くなりそうにない作品もやっちゃうわけです。
いや、そういうのは避けていたんで観ていないんですがね。例えば『竹取物語』とか。ポスターにはかぐや姫を迎えに来た巨大UFO。こんなみうらじゅんが喜びそうなの巨匠が撮っちゃいけないんですよ、本来は。でもやっちゃう。
まぁ、そんな幅の広さが良くも悪くも敷居の低い印象なのかなと思います。
by 丹下段平 (2008-02-16 23:46) 

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