「北国の帝王」(今月のおススメ) [映画-今月のおススメ]
先月初めてDVD化された『北国の帝王』。男臭い世界を描かせたら天下一品のロバート・アルドリッチ監督による、1973年製作の傑作B級アクション映画である。僕はこの作品はずいぶん前にテレビで観た。しかし何となくチャンネルをいじっていたらやってたのでそのまま観た、という不完全極まりない感じでの鑑賞だったため、前半部分は観ていない。それでも充分面白かったのだが、以降この作品をちゃんと観る機会に恵まれなかったので気にはなっていた。しかしこのDVDのお陰で、ようやく作品全てを鑑賞することができた。
未曾有の大不況だった時代のアメリカ(今じゃないよ)。職を失った男たちは浮浪者になり、ホーボーと呼ばれていた。彼らは列車を無賃乗車して街から街へと移動してはブラブラしていた。鉄道側もそんなホーボーたちに手を焼き、何とか食い止めようとしていた。特に19号列車の鬼車掌ジャック(アーネスト・ボーグナイン)は徹底的で、彼の列車に無賃乗車しようとし、阻止された揚句に命を落としたホーボーも2ケタを超えている。その19号列車に無賃乗車すると、タダ乗り王のAナンバーワン(リー・マーヴィン)が予告状を叩きつけた。そこにホーボー界でビッグになろうと野心に燃える若者シガレット(キース・キャラダイン)も加わり、男と男の意地を賭けた戦いが始まった…というお話。
簡単に言えば無賃乗車男と鬼車掌が対決する話であり、よくよく考えればセコイことこの上ない。でもこんな題材でも面白く見せてしまうのは監督の力量と役者の魅力であろう。特に悪役である車掌を演じたアーネスト・ボーグナインの存在感は唯一無二で、彼の存在なしにはクライマックスはこれほど盛り上がらなかったに違いない。おそらく彼ほどの個性派は今後現れないかもしれないと思えるほどに印象的である。
それにしてもよくこんなロジャー・コーマン的な企画が、大手の映画会社(20世紀フォックス)で通ったものだと感心する。この作品が創られた1973年当時は、まだベトナム戦争が泥沼化していた頃で、戦争に反対する反体制のムーブメントの真っ盛りだった背景も大きかったのかもしれない。何たってタダ乗りする浮浪者が主役で、悪役は職務を全うする(し過ぎなのだが)車掌なのだから、今からすればユニークな設定である。
まぁ、単純明快なストーリーなので能書きはこれくらいにして、手に汗握りながらいい歳こいたオッサンたちのガチンコバトルを楽しんでもらいたい。
こんばんは。
私も昔、TVで観た記憶があります。
リー・マービンは渋かったですね。
アーネスト・ボーグナインは強烈でした。
同じR・アルドリッチ監督で、2人も出演している「特攻大作戦」は面白かったです。
by hash (2009-04-01 00:28)
hashさん、こんばんは。
確かに『特攻大作戦』も面白かったですね。アーネスト・ボーグナインでいえば『ポセイドンアドベンチャー』の使われ方も印象的でした。いずれにしても、彼が出れば他の役者を食ってしまいますね。
by 丹下段平 (2009-04-01 00:40)
男臭い俳優達……時代と共に消えますねえ!
by 漢 (2009-04-01 12:19)
今の感覚では状況を思い浮かべただけで笑ってしまいますが、当時は
制作側も観る側も至って真剣で、決して笑かそうとした訳ではないんですね。
by nexus_6 (2009-04-01 21:30)
漢さん、こんにちは。
男臭い俳優は世界的にいなくなりつつありますね。時代がそんな人たちを求めていないのでしょうか。
by 丹下段平 (2009-04-02 07:43)
nexus_6さん、こんにちは。
コメディじゃないことは確かです。笑わそうとは思っていないでしょうけど、楽しませようとは思っているはずです。立派な娯楽映画になっていると思います。
by 丹下段平 (2009-04-02 07:47)