「虹色ほたる~永遠の夏休み~」 [映画(2012)]
「ひと夏モノにハズレなし」と何度か書いてきたけど、このアニメーション『虹色ほたる~永遠の夏休み~』はひと夏ものに加えて、ダムに沈んだ村で過ごす少し昔の物語と、郷愁てんこ盛りのハズレな訳がない最強の設定。これでダメだったら宇田鋼之介監督以下スタッフの面々は才能を疑われたところだが、単なるノスタルジーだけではない、設定を活かした見事な作品に仕上がっていた。
2001年夏、小学6年生のユウタは独り山へ昆虫採集に来ていた。そこは亡き父と訪れたことのある思い出の場所。なかなか昆虫が見つからず森を彷徨っているとひとりの老人に出会った。老人はユウタに大雨になるから注意するよう告げる。雲ひとつない天気に信じられないユウタであったが、やがて急に豪雨となり、大水に足を取られたユウタはダムの貯水湖に流され意識を失ってしまった。目を覚ましたユウタはさえ子と名乗る少女と出会った。彼女はユウタをいとこだと言う。近所の少年ケンゾーと共にさえ子の家に連れて来られたユウタは1977年のダムに沈んだ村にいることを知り…ってなお話。
何と30年ぶりの東映アニメーションのオリジナル作品なんだとか。さぞや伝統的な風格がありそうなものだが、登場するキャラクターたちがラフなスケッチのごとく、描き込まれていないポヤッとした雰囲気なので、どこかマイナー感があると同時に違和感を覚える。が、やがて時間が経ち絵に慣れてくると、そんな違和感は薄れてきて物語が素直に受け入れられてくる。同時に自分の体験も物語に混じっていくような気がしてきてキャラクターたちを身近に感じられるようになる。もしかしたらポヤッとしたキャラクターは自分や身近な人物たちを重ねやすいようにと、宇田鋼之介監督ら創り手たちの意図であったのかもしれない。
創り手が作家であったなら、2011年の震災がその後の作品に影響を与えることは当然のことで、この『虹色ほたる~永遠の夏休み~』もメッセージ性の強い作品になっている。そのメッセージはぜひ劇場のスクリーンから受け取ってほしい。広い年齢層に耐え得る日本アニメの良心作。お薦め。
少年の頃の夏休みは黄金色の思い出。
by k_iga (2012-06-10 22:13)
名古屋市内では上映無かったようですね!
by 薔薇少女 (2012-06-10 22:55)