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「桐島、部活やめるってよ」 [映画(2012)]

01金ヒ熊賞.gif『桐島、部活やめるってよ』って、らしからぬタイトルが面白そうでこの映画を観てみたのだが、これが予想を上回る面白さで、高校生の学園生活のひとコマがリアルに描かれた傑作だった。…なんて、現代の高校生の学園生活を知っている訳ではなく書いてしまったけど、この世代が抱える焦燥感のような感情が生々しく、密かに彼らの中に潜り込んで間近で目撃しているかのような臨場感に思わず引き込まれてしまった。

物語はスポーツ万能で人気者の桐島が、突然所属しているバレーボール部を辞めたことによって周囲に引き起こる波紋を描いた群像劇。桐島の彼女(山本美月)とその仲の良いクラスメイト(橋本愛ほか)、桐島の親友・菊池(東出昌大)と帰宅部の仲間(浅香航大、落合モトキ)、桐島とは付き合いのない映画部の部長(神木隆之介)と部員たち、菊池に想いを寄せる吹奏楽部の部長(大後寿々花)が桐島の件をきっかけに微妙に各々の関係が変化していく。お話としてはそんなもんなのだが、吉田大八監督による丹念で繊細な描写によってスクリーンに釘付けとなってしまった。

この『桐島、部活やめるってよ』を観ながら、以前観た『明日、君がいない』というオーストラリアの学園生活を描いた作品のことを思い出していた。こちらも高校生をリアルに描いた群像劇で、吉田監督は真似た訳ではないと思うが、コンセプトはかなり近いように思われた。『桐島』を良かったと思われた方は機会があったら『明日』も観てみてほしい。


実は僕も高校生の時に映画部に所属していた。正確に言うと映画部は存在しなかったのだが、映画好きの仲間(男4名)と文芸部の顧問に戯曲を書くことを条件に入部させてもらい、本来の活動は無視して好き勝手に8ミリ映画を撮っていたんである。そんな経験があるので神木隆之介らが演じた映画部の様子や会話が一層リアルなものに映った。「第三者的な視点で見たらこんなか~。これじゃあ女の子にモテるはずがないよね~」ということも分かり胸が痛くなってしまった。もし高校生活をもう一度やり直せるなら今度はモテグループのように…いや、今度も映画部なんだよね、きっと…

桐島、部活やめるってよ.gif


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「ぱいかじ南海作戦」 [映画(2012)]

何を隠そう血液型はO型です

と、いきなりカミングアウトしてみたのは、この映画『ぱいかじ南海作戦』(椎名誠原作・細川徹監督)を観た感想に自分の血液型がかなり関係しているように思えたからである。

仕事はクビ、妻には逃げられたカメラマンの佐々木(阿部サダヲ)はマンションを売り払って西表島にやって来た。レンタカーで道路の行き止まりまで行った先にあったのはコバルトブルーの美しい海。落ち込んでいた気持ちが晴れやかになっていく佐々木は、その楽園のような海岸に住み着いているホームレス4人(ピエール瀧ほか)と出会う。佐々木は楽しそうにサバイバル生活を営む4人と意気投合し、しばらくここで野宿生活しようと決めた。楽しく盛り上がった夜の宴。しかし朝になって目覚めると4人と佐々木の荷物は消えていた。騙されたと悟った佐々木であったが、全財産も盗られてしまったのでどうにもならず海岸に独り留まることになってしまった。そんな中、都会からやって来た若者オッコチくん(永山絢斗)と出会い、行動を共にすることになった。そして関西から来た可愛い女の子二人(貫地谷しほり・佐々木希)とも仲良くなり…ってなお話。

楽園のような南の島でのスローライフ。多くの人はこの映画を観て「自分も行ってみたいなぁ」と思うのかもしれない。しかしO型の自分にとっては「詐欺のような映画」にしか思えないのである。何かのテレビで観たのだが、O型は他の血液型の人に比べて圧倒的に「蚊に食われやすい」らしい。おそらくO型の血は蚊にとってワインのような魅力があるのだろう(迷惑な話だ)。そして僕も夏になると体のあちこちに蚊に食われて赤い斑点があったりする。この映画の主人公みたいに藪の中で寝泊まりなんかしたら、間違いなく全身食われまくってとんでもない事態になってしまうはずである。もっとも映画の中で主人公が蚊に悩まされる場面はちょっとあったが、ちょっとじゃ済まないのがO型の悲しいところなんである。おまけに自分は皮膚も弱い。以前、日焼け止めを塗らずに海に行ったら3時間くらいで全身火傷のような事態になってしまったことがある。この主人公みたいに何も塗らず一日浜辺にいたらこれまた大変な事態になってしまうこと間違いなし。

こんなO型人間からするとこの『ぱいかじ南海作戦』は「都合の良いところだけを見せる詐欺」のような映画に思えてしまう。こんな楽しいだけのはずはある訳ない、と思えてしまうんである。

それにしても、つくづくアウトドアに向かないな、俺…

ぱいかじ南海作戦.gif


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「幸せへのキセキ」 [映画(2012)]

『幸せへのキセキ』ってありきたり過ぎるタイトルからは内容が全く想像できないけど、原題は〈オラ動物園買っちまっただ〉とストレートなもの。基になった原作本のタイトルも『幸せへのキセキ』なのだが、出版社も映画配給会社ももう少し個性のあるマシなタイトルにできなかったのかと思う。これでは少し経ったら「あの映画のタイトル何だっけ?」ってことになってしまう。

ま、それは置いとき、いきなり脱線して僕の動物園の思い出話など。

僕が幼かった頃、我が家に子供向けの図鑑セットがあった。興味のある本、ない本がはっきりしていて、もっぱら『動物図鑑』『昆虫図鑑』『乗り物図鑑』ばかり開いていた。中でも『動物図鑑』を開く頻度は高く、今でも結構図柄を覚えていたりする。そんなある日、親に連れられて多摩動物園に出かけた。僕には図鑑で気になっていた動物があり、どうしてもこの目で見たいと思っていた。しかし、その動物はいくら探しても見つからず、最後に職員に尋ねていないことが分かりガッカリした。その動物とは〈ジャイアントパンダ〉であった。まだ、日本ではあまり知られていない動物で、その数年後に中国から上野動物園に贈られ大騒ぎとなったのだった。親は「うちの息子は大騒ぎになる数年前から着目していたんだから凄い!」と思いっきり親馬鹿の勘違いをしたようだが、あんな変わった模様の動物が気になるのは当然と言えば当然である。もっとも僕は図鑑に描かれていたジャイアントパンダがかなり獰猛そうだったのに対して、実物の能天気そうな姿を見て、あまりの落差に拍子抜けしたのだった。

さて、映画の話に戻る。物語は…

新聞コラムニストのベンジャミン・ミー(マット・デイモン)は体当たりの取材でそれなりに活躍しているものの、半年前に最愛の妻を亡くして心に傷を抱えていた。息子のディラン(コリン・フォード)、幼い娘のロージー(マギー・エリザベス・ジョーンズ)も同様で、特に思春期のディランは深刻で、学校で度々問題を起こすようになりベンジャミンとの関係も悪化する一方であった。そんな中、ベンジャミンは仕事に嫌気がさして新聞社を退社、ディランは退学処分になってしまった。このままではいけないと考えたベンジャミンは環境を変えるため都会を出て郊外に移住することを決意。何件か物件を見学する内に意中の家が見つかった。が、この家は何と動物園つきだった。家を購入すると同時に動物園のオーナーにならなくてはいけない。諦めるベンジャミンであったが、同行したロージーの喜ぶ姿を目にし、動物園つきの家を購入することに決めた…ってなお話。

崩壊寸前な家族の絆を取り戻していく話を軸に、経営困難な動物園を立て直すべく飼育員たち(スカーレット・ヨハンソンら)と連帯して取り組む話が交差し、ディランと最年少スタッフのリリー(エル・ファニング)との淡い恋、ベンジャミンの兄(トーマス・ヘイデン・チャーチ)との兄弟愛などが絡んだ人間ドラマを中心に据えたキャメロン・クロウ監督の判断は正しく、映画は爽やかで感動的な出来となっており気に入った。ただ人間ドラマが充実した分、動物がらみのエピソードが乏しいところで多少の物足りなさも残った。個人で動物園を所有するという特異な設定で、経営的なもの以上に動物との交流と言うか悪戦苦闘ぶりが観たかったような気がする。まぁ、商業映画の限られた枠ではこれが限界だったのかもしれないけど、設定を活かしきれていないように感じ、勿体ないように思われた。

加えて残念だったのは、この動物園にジャイアントパンダがいなかったこと…って、そりゃあ小さな動物園じゃ無理だよね。

幸せへのキセキ.gif

(タイムリーなことに上野動物園のパンダに子供が産まれたんだってね)


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「ミッドナイト・イン・パリ」 [映画(2012)]

01金ヒ熊賞.gif

映画の冒頭で映し出されたのはパリの街角の風景。昼から夕方、そして夜と魅力的な映像に心奪われる。と、同時にウディ・アレン監督1979年の名作『マンハッタン』と街は違えど同じパターンであることに気付いた。『マンハッタン』はニューヨークの街への愛をドラマの背景に込めた大好きな作品。ならば今回はパリなのかと、タイトル前から期待にドキドキワクワク。

人気脚本家のギル(オーウェン・ウィルソン)は彼女のイネズ(レイチェル・マクアダムス)、彼女の両親と共に大好きなパリに訪れた。映画の脚本家として成功しているギルではあったが、小説家に転身しようと処女作を執筆中で、イネズはそんな彼の野望に反対していた。そんな二人の前に現れたイネズの知り合いの大学教授であるポール(マイケル・シーン)。なんでもうんちくをたれるポールにギルは鬱陶しさを感じていた。行動を共にする彼らから離れ、ひとりパリの街をぶらつくギルの前に現れたレトロな自動車。誘われるがままに乗り込んだギルが連れて行かれたのは社交クラブのパーティ。そこにいたのは本物のフィッツジェラルド夫婦、コール・ポーター、ジャン・コクトー、そして憧れのアーネスト・ヘミングウェイだった。ギルは1920年代のパリにタイムスリップしていたのだ…ってなお話。

ギルと共に昔のパリに迷い込んだ感覚が楽しく、次は誰と出会っちゃうのかワクワクしてしまう。ウディのパリの街への愛よりもパリの街が育んだ文化への憧憬がひしひしと感じられる。映画の雰囲気は『マンハッタン』よりも『カイロの紫のバラ』だろうか。以前ならウディ・アレン本人が演じただろう主人公もオーウェン・ウィルソンが演じた分、コメディよりもロマンチック度がアップしたように思える。まぁ、ウディ主演の『ミッドナイト・イン・パリ』が観たかった、などと無い物ねだりするのはよそう(とか言いながら書いちゃってるんだけどね)。とにかく、ここ数年の作品の中では飛び抜けて好き。最後に一言

こんなウディ・アレンの映画が観たかったんだよ!

ミッドナイトインパリ.gif


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「虹色ほたる~永遠の夏休み~」 [映画(2012)]

02銀ヒ熊賞.gif「ひと夏モノにハズレなし」と何度か書いてきたけど、このアニメーション『虹色ほたる~永遠の夏休み~』はひと夏ものに加えて、ダムに沈んだ村で過ごす少し昔の物語と、郷愁てんこ盛りのハズレな訳がない最強の設定。これでダメだったら宇田鋼之介監督以下スタッフの面々は才能を疑われたところだが、単なるノスタルジーだけではない、設定を活かした見事な作品に仕上がっていた。

2001年夏、小学6年生のユウタは独り山へ昆虫採集に来ていた。そこは亡き父と訪れたことのある思い出の場所。なかなか昆虫が見つからず森を彷徨っているとひとりの老人に出会った。老人はユウタに大雨になるから注意するよう告げる。雲ひとつない天気に信じられないユウタであったが、やがて急に豪雨となり、大水に足を取られたユウタはダムの貯水湖に流され意識を失ってしまった。目を覚ましたユウタはさえ子と名乗る少女と出会った。彼女はユウタをいとこだと言う。近所の少年ケンゾーと共にさえ子の家に連れて来られたユウタは1977年のダムに沈んだ村にいることを知り…ってなお話。

何と30年ぶりの東映アニメーションのオリジナル作品なんだとか。さぞや伝統的な風格がありそうなものだが、登場するキャラクターたちがラフなスケッチのごとく、描き込まれていないポヤッとした雰囲気なので、どこかマイナー感があると同時に違和感を覚える。が、やがて時間が経ち絵に慣れてくると、そんな違和感は薄れてきて物語が素直に受け入れられてくる。同時に自分の体験も物語に混じっていくような気がしてきてキャラクターたちを身近に感じられるようになる。もしかしたらポヤッとしたキャラクターは自分や身近な人物たちを重ねやすいようにと、宇田鋼之介監督ら創り手たちの意図であったのかもしれない。

創り手が作家であったなら、2011年の震災がその後の作品に影響を与えることは当然のことで、この『虹色ほたる~永遠の夏休み~』もメッセージ性の強い作品になっている。そのメッセージはぜひ劇場のスクリーンから受け取ってほしい。広い年齢層に耐え得る日本アニメの良心作。お薦め。

虹色ホタル.gif


タグ:宇田鋼之介
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「キリング・ショット」 [映画(2012)]

ある程度の映画ファンがこの『キリング・ショット』を観たなら、おそらく多くの人がクエンティン・タランティーノ作品の模倣であることに気がつくだろう。これがデビュー作のアーロン・ハーヴェイ監督はよっぽどのタランティーノ映画のファンに違いない。パクッたと言うよりも、大好きな作品(特に『パルプフィクション』)をお手本にして一所懸命に創り上げた、といった印象であった。

犯罪組織に属するテス(マリン・アッカーマン)は前の仕事でミスをし、組織のボス(ブルース・ウィリス)に汚名返上するため仲間と共に次の仕事に取り組んでいた。それはとあるダイナーで行われる麻薬の取引を横取りしようというもの。しかし、一向に取り引きが行われる様子がなく、苛立ったテスらは強硬手段に打って出た。しかし仲間のカラ(ニッキー・リード)が女性店主に撃ち殺され、ドーンも客のトラック運転手に射殺された…。一方、謎のセールスマンらしき男(フォレスト・ウィテカー)が自動車の故障で立ち往生しているところに警官が現れた。警官が故障の様子を調べていると、男はいきなり警官を射殺した。制服を盗んだ男は…ってお話。

一応、大筋はこんな感じなのだが、タランティーノ風なので、各エピソードの時系列がバラバラに繋がれておりアチコチに話が飛ぶユニークな構成になっている。しかし、この手法はかなりセンスがないと上手くいかないことが分かる結果になってしまった。物語を先に進めず、何度も何度も前に戻ったり、横道に逸れたりを観ている内に緊張感が途切れてくる。いい加減先に進めよと言いたくなってくる。そして次第に物語への興味も薄れてくる。現に僕の横と後ろにいたオッサン(声から推測して)は途中から同時に大いびきをかき始めて、迷惑千万であった。まぁ、大いびきこくほどつまらない映画ではないと思ったのだが、タランティーノの失敗作のように見えてしまい残念な出来であった。

まだまだ新人監督にとってタランティーノの域に達するにはちと遠い。それよりも次回は〇〇風ではなくオリジナリティを出してもらいたいもんだよなぁ。

キリングショット.gif


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「アーティスト」 [映画(2012)]

02銀ヒ熊賞.gif以前の記事で「『雨に唄えば』が大好き」と書いたことがあった(→記事)。こんな僕だから尚更感じたのかもしれないが、このアカデミー作品賞・監督賞(ミシェル・アザナヴィシウス)・主演男優賞(ジャン・デュジャルダン)・衣裳デザイン賞・作曲賞の5部門に輝いた『アーティスト』は、設定や物語の大筋が『雨に唄えば』とかなり似通っている。『雨に唄えば』をシリアスにして、白黒サイレンスでリメイクしたのが『アーティスト』だ、と言ったら過言になるかもしれないけど、創り手がかなりの影響を受けていることは間違いなかろう。

まだ映画がサイレンスだった頃のハリウッド。ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は俳優としてキャリアの絶頂にあった。新作の舞台挨拶が終わり劇場から出たところで出会ったペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)は役者の卵。エキストラをして下積みの身。ジョージと撮影所で再会しても身分の差はあまりにも大きい。そんな中、トーキー映画が発明された。「くだらない」と一蹴するジョージであったが、時代は大きくトーキー映画へと変わっていく。急激に落ち目になるジョージと入れ替わるように、トーキー映画の新スターとしてペピーは注目されていく…ってなお話。

『雨に唄えば』が好きなんだから、やっぱりこんな映画は相性が良い。主人公の置かれる立場が過酷になって、心が躍るような展開ではなかったとしても面白く、技術的にも見応えのある作品であった。それにしてもハリウッドのような煌びやかな世界を白黒サイレントで撮るなんて大胆な試みは商売第一のハリウッド資本では許されなかったのではあるまいか。ハリウッドが舞台ではあるがフランス映画ならではこそ成立したように思える。そんな作品にオスカーを与えたハリウッド。懐が広いのやら狭いのやら…?

アーティスト.gif


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「僕達急行 A列車で行こう」 [映画(2012)]

昨年の暮れ、森田芳光監督の訃報を耳にした時、あまりにも突然の出来事に驚く一方、実感が沸かず「悲しい」気持ちになれなかった。何しろ途切れることなく作品を精力的に撮り続けていた印象の森田監督。病気で久しく作品が途絶えていたなら訃報も受け入れられたのかもしれないが、そんなことなど全く知らなかったし想像すらしなかった。

森田芳光監督には、他の監督とは違った特別な思い入れがある。一般映画の監督デビュー作『の・ようなもの』(1981年)を公開初日の舞台挨拶つきで観ているのだ(→関連記事)。そして、その日から何年間かは一番注目していた監督であったし、若くしてキャリアの絶好調期で、短期間に何本も手掛けたものの『家族ゲーム』(1983年)を筆頭に作品の質は高く、僕もほぼ皆勤賞で封切りの劇場で鑑賞していた。やがて大手の作品が多くなると作品の質が下がり、次第に森田作品から離れていった。それでもたまに『キッチン』『(ハル)』など小品に「らしい」傑作もあったので、全く観なくなった訳ではない。まぁ、そんな浮き沈みも含めて、森田監督とはデビュー初日から付き合ってきたのだった。 

最後の新作『僕達急行 A列車で行こう』は『の・ようなもの』から繋がる「らしい」系列の作品で、それが嬉しかった。鉄道マニアの主人公たち(松山ケンイチ、瑛太)に趣味人な監督が重なり微笑ましかった。森田監督の場合、オタクではなくマニアという言い方が相応しいように思える。その差を説明はできないけど、やっぱりオタクじゃなくてマニアなんだな。

作品としてフィルモグラフィーを代表するものとは言い難かったけど、僕なりに森田監督とお別れができた。でもホントにこれでお別れ? (まだ実感が沸かない…) 

僕達急行.gif


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「いちご白書」(をもう一度) [映画(2012)]

荒井由実作『「いちご白書」をもう一度』を当時無名だったフォークグループ、バンバンが歌ってヒットしたのが1975年。僕はまだ子供だったので、歌詞をちゃんと理解できなかった。しかし『いちご白書』(スチュアート・ハグマン監督)とは映画のことだってことくらいは分かっていた。ただその時点ではこの映画を観てみたい、という気持ちにはなっていなかった。すこし時が経ち、映画に興味を覚えた頃から次第に観たいと思うようになったのだが、ずっとどこの名画座にもかからず、ようやく観ることができたのは映画の主人公たち(ブルース・デイヴィソン、キム・ダービー)と同じくらいの年齢になってからだった。

不思議なことに『いちご白書』はあまり書籍等で取り上げられることもなく、今のようにインターネットで何でも調べられるような時代ではなかったため、内容的なことは全くと言っていいほど情報がなかった。バンバンが『悲しい場面では涙ぐんでた』と歌っていたので、そんな内容なんだろう、ってなくらいなもの。そんなまっさら状態で観た『いちご白書』。

実は観られるまで時間がかかり、「じらされた分膨らんだ期待程ではなかった」というのが初めて観た直後の率直な感想。メロウな青春映画と予測していたのだが、学生運動の映画でビターなラストに面食らった気持で、何となく胸にモヤモヤしたものを抱えながら帰路についたのであった。

しかし…

何時間、何日過ぎても辛いストップモーションのラストカットが頭に残り、主人公たちの痛みが自分の痛みのように感じられてきた。感動が時間が経ってから…

じわじわっ

と、やって来たのだった。丁度同じ時期にアメリカンニューシネマの傑作『卒業』を観ていたく感動したのだが、こちらは日を追うごとに「良かったのはサイモン&ガーファンクルの歌で映画自体は大したことなかったんじゃないか」とトーンダウンしていった。いつしか僕の中では『卒業』と『いちご白書』の位置は逆転し、「アメリカンニューシネマの青春映画」=『いちご白書』となっていった。

あれから数十年、DVDになることなく、『午前十時の映画祭』の選からももれた『いちご白書』を拾ってリバイバル公開する会社が現れた。「若い頃の感動が今の自分には受け入れられるのだろうか」という不安もあったが、この機を逃すと再びスクリーンでは観られないかもしれないという思いから観に行くことにした。そして、最初に観た時よりも映画の深さが理解できたような気がした。名作は何度観ても名作なんである。

ユーミンは観るだろうか~『いちご白書』を~(余計なお世話)

いちご白書.gif

あれ、札幌では上映終わってらぁ。(またやっちまった…)


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「TIME/タイム」 [映画(2012)]

気が付けばもう3月になっていた。早っ。こちとらまだ正月気分だぜ! …は大袈裟にしても、2012年になってから2ヶ月間、いったい自分は何をしていたんだろう。時の流れの速さに愕然としてしまう。

そんな「時」が管理され、通貨代わりになっている世界を描いたSFサスペンス『TIME/タイム』(アンドリュー・ニコル監督)。僕のように時間を無駄使いしてる暇がありませんよっ。

人間の成長が25歳で止まり、その後は僅かな持ち時間で余命が決まる。時間は通貨代わりになり、収入や支出も時間でやり取りされている。腕に刻まれた時計で自分の余命が分かる…そんな世界。スラム街でその日暮らしのウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)は、ある日裕福ゾーンから来た男(マット・ボマー)をギャングから救い出す。しかし〈時間持ち〉な男は人生に絶望しており、密かにウィルに残り時間を譲り自殺した。突然莫大な時間を譲り受けたウィルは困惑するが、目の前で母親(オリヴィア・ワイルド)が時間切れで絶命したことで、社会の矛盾を感じ、裕福ゾーンに乗り込む。スラムとは全く異なる環境で、大富豪とその娘シルビア(アマンダ・セイフライド)と出会う。一方、ウィルに殺人容疑がかかっており、警察代わりの〈時間監視局〉のレオン(キリアン・マーフィ)が追い詰めようとしていた…ってなお話。

設定にタイムリミットがあるってだけでサスペンス度がアップする。しかも制限時間が腕に刻み込まれたデジタルな時計で示されるので分かりやすくなっているのも効果的…なのだが、そんな明確になっているにも関わらず、肝心なところ(クライマックス)で大失態やらかす奴がいて、「そんなの馬鹿過ぎるだろ」と思わず文句言ってやりたくなってしまった。それに主人公たちを追う警察の役割の時間監視局って組織が貧弱で、レオンだけが孤軍奮闘しているように見えてしまうのもいかがなものかと思えた。設定が良かっただけに、それを活かしきれなかった残念な作品、というのが結論である。

それにしても自分の余命が常に分かったら、落ち着かなくておちおち寝てもいられないだろうな。そうしたら時の流れがあっと言う間、なんて感覚じゃなくなるかも。いや、それを望んでる訳じゃないんだけどね。

TIME.gif


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