「マルクス一番乗り」 [映画-DVD]
競馬の映画ということで、このブログにうってつけの組み合わせである。
マルクス兄弟の代表作は『我輩はカモである』『オペラは踊る』の何れかというのが世間一般の評価であろうが、彼らの芸を堪能できるという点ではこの映画が一番ではないだろうか。
3人の役割はいつもと変わりなく、立場的には一番上だが出鱈目な人物のグルーチョ、セコい詐欺師のチコ、ほとんど危険人物のハーポ。この映画ではグルーチョは獣医であることを偽って診療所の医者に収まり、チコはその診療所の運転手、ハーポはチコの友人の元騎手。その3人がつぶれかけた診療所と隣接する競馬場で大暴れするドタバタコメディである。
この映画の目玉の一つは、ストーリーには直接関係ないが、チコの超絶テクのピアノ演奏と、ハーポのハープの名演奏が楽しめるコーナーが設けられているところである。特にハーポは演奏を始めるといつもの危ない表情が素に返ったような真剣な表情に変わるのが印象的だ。
また、この映画はいかにもMGMらしくミュージカルシーンも散りばめられているのも売りのひとつになっている。ハーポを中心とした黒人労働者達とのナンバーが一番の見所だが、その他にもグルーチョの抱腹絶倒のダンスもある。また、マルクス兄弟が全く絡まないナンバーさえあり、最後にはそれをぶち壊しにするのかと思って観ていると、結局何も手を出さずに大人しく終わってしまった。このシーンは会社側が無理に入れたものなのか。とにかくMGM映画なんだなぁ、と思わせるシーンになっている。
マルクス兄弟の映画を観ていると、W・アレン監督作品『アニー・ホール』を思い出す。この映画の冒頭で本人が自分の恋愛観を述べるのだが、それが「自分を入れるようなクラブには入りたくない」というグルーチョの言葉を引用している。いかにもへそ曲がりなこの2人が実は大好きなのである。
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