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「気球クラブ、その後」 [映画-DVD]

気球クラブ、その後 [DVD]この映画を観て感じたのは「懐かしい感覚」である。もうそれが全てだと言ってもいいくらいだ。従来の商業映画的な常識を排し、おそらく殆ど自然光のみで(と感じるように)撮影しているため、夕暮れのシーンではそのままの薄暗さなため、役者の顔もよく分からない。

この感じって8mm映画だよなぁ

と、昔少しかじった人間にはそう思えた。園子温監督は自主映画出身。プロの現場しか知らない監督にはこんな映画は創れないし、創ろうとも思えないだろう。もしかしたら(かなり確率は高いのかも?)一般の観客には単なる下手くそな映画に見えるのかもしれない。絶対万人受けするとは思えない作品。

ストーリーは極めてシンプル。以前少しの間活動していた気球クラブ「うわの空」のリーダーであった村上がオートバイで事故死する。その追悼のため5年ぶりに当時のメンバーが集まる…というだけ。ストーリーと言うよりシュチエーションの群像劇。現在のメンバー各々が携帯で連絡を取り合うところにクラブがあった頃の回想が織り込まれる。それぞれがそれ程の連帯感もなく、リーダーの死に対してもあまり悲しむ者もいない。5年ぶりに集まっても、それはその場限りのものであり、あっさり離れ離れになっていく。そしてその儀式の終わりががそれぞれの青春時代の終わりだと感じられる、とまぁ、何とも薄情な人間の集団なのだが、この人間関係の希薄さがかえってリアルに思える。

この映画を観ていて、園監督は昔の8mmのような映画をまた創りたくなったのかな、と感じた。あの手作り感はプロの現場ではなかなか味わえないと思えるのだが、できるだけその感覚に近づけたかったのではないだろうか。また、それを成立させてしまったのだから大胆な試みである。

薄暗い画面を観ながら8mm映画を創っていた当時の記憶が蘇り、それが画面の中の登場人物の心情と重なり、ちょっと切ないほろ苦さが残り、無性になんだか叫びたい気持ちになった。


タグ:園子温
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コメント 4

まさみ

はじめまして。
記事を読ませていただきました。
TBもさせていただきましたm(_)m

そうか!この映画の独特の暗い映像の感じは
8mmで撮影してるからなのかも知れないですね^^
なかなかこだわりのありそうな映像だな~と思っていました。
by まさみ (2008-01-12 11:13) 

丹下段平

まさみさん、はじめまして。コメントありがとうございます。

8mmフイルムでは撮影していないと思いますが、そんな雰囲気の質感がありました。シロートっぽさが逆に臨場感があったかな、と思えました。
by 丹下段平 (2008-01-12 23:38) 

まさみ

あっそうですよね。
さすがに8mmでは撮影しないですよね(^。^)ヾ

椎名林檎の「翳りゆく部屋」の情報ありがとうございました♪
by まさみ (2008-01-13 21:58) 

丹下段平

これは8mmではありませんが、イギリスのデレク・ジャーマンは8mmで撮影したフイルムを35mmに引き伸ばして一般の劇場で公開した作品がありましたので、全く無い話ではありません。
by 丹下段平 (2008-01-13 23:35) 

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