「ブロークン・イングリッシュ」 [映画(2009)]
この『ブロークン・イングリッシュ』は、映画監督で俳優の故ジョン・カサヴェテスと、女優で公私ともにパートナーだったジーナ・ローランズの間に生まれた娘、ゾエ・カサヴェテスの監督第一回作品。
名監督の娘という注目を浴びる宿命にありながら、実に力の抜けた、悪く言えば野心のかけらも感じられない地味な内容をデビュー作にしたところが、いかにもシニカルなニューヨーカーっぽくて粋である。こんなところがニューヨークのインディペンデッド映画を引っ張ったジョン・カサヴェテスの遺伝子が受け継がれているのかもしれない。
物語は実にシンプル。30代独身の主人公ノラ・ワイルダー(パーカー・ポージー)は大学生の頃は結構イケてたのだが、今ではすっかり男運に見放されて、仕事は順調ながらプライベートは平凡な毎日。昔付き合った男は親友のオードリー(ドレア・ド・マッテオ)に譲ってしまった。やっとできた彼氏には付き合っている彼女がいることも判明。業を煮やした母(ジーナ・ローランズ)に紹介された男ともうまくいかなかった。傷心のノラであったが、気乗りがしなかったパーティで早々に退散しようと思ったところに現れたフランス人のジュリアン(メルヴィル・プポー)。彼の情熱的なアプローチに心を開いていくノラであったが、今度は果たしてうまくいくのだろうか、と実に等身大のお話。
映画に登場するアメリカ人は西海岸のような陽気さはなく、実に地味で自然体に描かれているので、極めてリアルで身近に感じられる。アメリカ映画と言うよりもヨーロッパ映画的な味わいさえしてくる、ハリウッド映画製とは一線を画した作品になっている。あまりにも淡々と描かれているので、正直なところ少し退屈したのも事実。でも僕が観た時の9割方の女性の観客には身につまされる思いをした人も多かったのではなかろうか。女性による女性のための映画に男がふたり(この回の観客約20名中、僕ともうひとりしか男はいなかった)紛れ込んでしまった感じで、ちょっと居心地が悪かった。
でも処女作ながら個性とセンスは感じられたゾエ・カサヴェテス監督。果たして父親の業績を越えることができるのだろうか、なんて期待をもろともせず、マイペースでコツコツと小品を創り続けていくような気もするのだが。
こんにちは。
肩の抜け具合はよかったですよね。
私は主人公の彼女をみて、30代は気持ちひとつで楽しめるはずって思いました。
by クリス (2009-03-07 11:14)
30代って、まだ人生の半分も生きていないんですから、余裕で楽しめるはずだと思います。40代、50代だって楽しみは見つけられるはず、と思いたいですね。
by 丹下段平 (2009-03-07 17:46)