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「007 慰めの報酬」 [映画(2009)]

あんまり007らしくないよなぁ、と思って前作の『カジノロワイヤル』の記事(→こちら)を読み返してみたら、案の定、今回感じたことをまんま書いていた。もうこの歳になると人間の進歩はなくなり、脳味噌も皺が減って硬くなっていく一方なので、なかなか新たなものは受け入れにくくなっている。だからどうもダニエル・クレイグになってからのニュー・ジェームズ・ボンドには馴染めない。これなら007じゃなくてもいいんじゃないの、って感想も変わらない。

この作品で一番気に入らなかったのはアクションシーン。超アップで撮影して短いカットで繋ぐ編集が続くのだが、こんな見せ方だと迫力はあるのだけど…

いったい何が起こっているのか分からない

ので置いてきぼりくらったような感じになってしまう。冒頭のカーチェイスからして、ボンドが黒いアストンマーティン、追っ手である敵が黒いアルファロメオ。ドアップが多いのに同じ黒い車なので、観ていて区別がつきにくい。いったい今、ボンドはどういう状況なのかが把握できない。車が大破してからやっとそれが敵のものだったことが分かる(尤も始めっからボンドがやられるはずがないけど、『ロシアより愛をこめて』みたいなパターンもあるし…)。こんなことでは迫力と引き換えにサスペンス性が失われてしまう。観客に状況が伝わらなければ手に汗握ることもない。これは映画全般に言えることだが、いったいいつからこんな撮り方が主流になってきてしまったのか。いくら迫力があっても、そこにサスペンスがなくては絵に描いたモチみたいなもののように思えるのだが。監督はヒューマンドラマが得意なマーク・フォースター。こんなアクションシーンなんてお手のもの、じゃない人だからアクションシーンは他人に任せてしまったのだろうか。

物語は前作の『カジノロワイヤル』から直後の設定。ボンドは失った恋人の復讐を果たすために、上司のM(ジュディ・デンチ)の制止を振り切って敵を追い詰めていく、というもの。前作のポーカーのシーンみたいなアクションと違った見せ場がない分、単調な印象さえ受けた。つまり、

あまり感心しなかった作品

ってことなのである。

そもそも今の時代にスパイが活躍する映画は成立させにくい。西側東側の大国同士の冷戦もとっくに終わっている。そんな時代の中で、どんなミッションが説得力を持つのか。僕のように007という名前だけで観に行ってしまう観客がいるので、作品は創られていくのだろうが、創る側は相当難しいことだろう。いっそ時代背景を冷戦の時代に戻してしまえばよかったものの、その選択はしなかった。今起こっていることにした方がインパクトはあるが、今後どんな敵をこしらえなければならないのか。エンディングのクレジットでシリーズは続くと予告していたが、果たして…

007慰めの報酬B.gif


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コメント 6

nexus_6

嘗ての007はルパン三世的な脳天気さがあったと思いますが、
最近のはどうなんでしょう? 全然観ていないので...
by nexus_6 (2009-01-29 01:36) 

丹下段平

能天気と言うかイギリス的なユーモアが嘗ての007にはありましたが、今回は皆無でした。
by 丹下段平 (2009-01-30 07:44) 

hash

こんばんは。
仰るように、アクションシーンは見辛かったですね。
冒頭のシーンで、Mは撃たれたとばかり思っていました。

>時代背景を冷戦の時代に戻して
その方がいいかもしれませんね。
by hash (2009-02-01 23:38) 

丹下段平

何だかよく分からない内に結果が出て初めてどうなったかが理解できるアクションの撮り方でした。撮影と編集によって誤魔化されている印象を受けました。
せっかくのシーンが活かされていないですよね。
by 丹下段平 (2009-02-02 20:51) 

ジジョ

こんにちは♪
アクションは、ほんとに分けわからなかったです(^-^;
今回のイラストも冴えてますね!ww
by ジジョ (2009-02-09 13:11) 

丹下段平

ジジョさん、今晩は♪
イラストは『カジノロワイヤル』がダニエル・クレイグだったので、他の人から一番描きやすそうだったMにしました。それにレギュラーがいいかなと思ったので。
by 丹下段平 (2009-02-09 22:06) 

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