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「ウェディング・ベルを鳴らせ!」 [映画(2009)]

セルビア共和国のエミール・クストリッツァ監督による現代のお伽噺的なラブコメディ。日本の昔話に着想を得たと監督自ら語る物語の核は、田舎で育った青年(少年?)が都会に花嫁を探しに行くという単純なもの。登場するキャラクターは皆ユーモラスで、残忍なマフィアさえとぼけており、銃撃戦があっても殺人事件が起こっても、何かしらほのぼのとしたものが残る。これが舞台が日本の現代という設定ならば、あまりにも現実離れしてしまい印象は芳しくなかったのかもしれないが、セルビアのド田舎という想像すらできない場所のお話なので、お伽噺的な語り口も自分の中ですんなりと受け入れることができた。

セルビアの山奥にある小さな村に暮らすツァーネ(ウロシュ・ミロヴァノヴィッチ)は祖父(アレクサンダル・ベルチェック)と二人暮らし。通っている学校は先生(リリャナ・ブラゴイヴィッチ)と生徒のツァーネの二人だけ。ある日役人が視察にやって来て、ついに廃校が決定してしまった。思春期を迎えたツァーネに祖父は街へ行かせることを決意する。祖父は彼に牛を連れて行かせ、牛を売って聖ニコラスのイコンを買う、土産を買う、花嫁を見つけるという3つのことを命じる。早速都会にやって来たツァーネは女子高生のヤスナ(マリア・ペトロニイェヴィッチ)に一目惚れ。アタックを開始するが、街を牛耳るマフィアのボス(ミキ・マノイロヴィッチ)もヤスナを娼婦にしようと狙っており…というお話。

実にとぼけて飄々としたユーモアがすっかり気に入ってしまった。「田舎良いとこ」というテーマも含んでおり、映し出される風景も温かみのある自然の色調。監督自ら気に入って都会から移り住んだというロケ地の村への愛情が画面からも伝わってくる。その気持ちがあるか無いかで作品の深みが変わってくる。そしてCGを使った作品が多くなりつつある映画界へのアンチテーゼとも思えるアナログ感溢れる質感。作品に登場する小道具の数々もアナログでやけに可笑しい。人間に血が通っている限りは、最後はデジタルではなくアナログの魅力には敵わないと個人的に思っているので、まさにそんな作品になっているのが嬉しい。

それにしても主人公が都会から連れ帰った花嫁、田舎の生活に退屈して結局街に帰ってしまったとさ、という後日談にならないかと余計な心配する自分は、すっかり都会の生活に毒されてしまっているのかなぁ…

ウェディング・ベルを鳴らせ!.gif


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コメント 6

薔薇少女

関係無いコメントでゴメンナサイ!
おかげさまで2列ビンゴ達成出来ました!
気にかけて頂いてありがとうございました!
今から仙台へ行ってきます!
by 薔薇少女 (2009-06-16 08:37) 

クリス

こんばんは。
この作品の突き抜けたほのぼの感、笑いに笑わせて頂きました。
ありえないって何度心の中でつぶやいたことか!
でも、いいですよね。こういう御伽噺。
ツァーネもヤスナもキュートでした。写真でみる限り、ツァーネの性別がはっきりしませんでしたが^^;
by クリス (2009-06-16 19:26) 

丹下段平

薔薇少女さん、お気をつけて。
お土産は萩の月ですか?
by 丹下段平 (2009-06-16 22:13) 

丹下段平

クリスさん、こんにちは。
僕もポスター見て、この子(ツァーネ)って男だよな? と思いました。並んだもう一人が明らかに女性だったので、男性だろうと想像できた次第です。
それにしてもいい映画でした。
by 丹下段平 (2009-06-16 22:16) 

duke

楽しそうな映画ですね。
花嫁連れて帰れるのですね!!それはスゴイスゴイ^^
邦題の「ウェディングベルをならせ」はなんだか都会の婚カツ映画っぽいですね^^

by duke (2009-06-19 18:25) 

丹下段平

田舎の青年が都会に来て婚カツする映画です。
まともな婚カツではありませんが、それが面白いんですよ。
by 丹下段平 (2009-06-20 08:23) 

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