「ちゃんと伝える」 [映画（2009）]
『愛のむきだし』に続く、公開が今年2本目の園子温監督作品。前作の規格外で独創的な作風から一転、この『ちゃんと伝える』は拍子抜けするくらいに枠に収まった万人受けを狙ったような作品。予告編を観た印象で予測はできていたものの、園監督ならば何らかの捻りがあるかもしれないと期待したのだが、実にストレートでしかもダブルの難病もの。その扱いも効果がいまひとつとなれば、果たしてこの作品を創った意図はどこにあったのかと首を捻りたくなってしまう。
史郎（AKIRA）は地元である地方都市のタウン誌に勤務し、幼馴染で今は恋人の陽子（伊藤歩）とは結婚を意識した間柄。しかし高校サッカー部で鬼コーチだった父（奥田瑛二）が癌で入院しており余命わずかと宣言されている。それを知らされていない父は退院して史郎と湖に釣りに行くことを楽しみにしている。嘗ては厳しく馴染めなかった父ではあったが、何とか願いを叶えてあげたいと思う史郎であったが、自分も癌に侵され、父よりももっと深刻な状況であると医者に告げられてしまう。親より早死にするのは最大の親不幸と悩む史郎。せめて父より長生きしたいと願うのだが…というお話。
一般的には良いお話なんだと思う。自身も癌で父を失った園監督の素直な気持ちが反映されているのだと思える。しかしそんな現実がありながら、何となくリアルに感じられず感動できなかったのはいったいどうしたことだろう。
僕も叔父を癌で失ったが、この映画の2人のような穏やかな闘病生活とはかけ離れた様子であった。その記憶があるので癌に侵された人がこんなに元気そうなのは嘘に思えてしまった。特にAKIRAは父よりも進行しているのに全くそんな雰囲気がなく、こんな調子なら願い通り父より長生きできるよ、と思えてしまった。全体的に忍び寄る「死」が胸に迫ってこないのが最大の欠点で、園監督が本当に創りたかった作品なのだろうかと疑問に感じてしまった。前作が長さや内容でユニーク過ぎたので、今後スポンサーが逃げ腰になることを恐れ、普通の映画も撮れることをアピールするために創ったのではないかと、意地悪な推測まで頭をよぎる。日本映画の「お家芸」である難病ものも、園監督より上手な監督は大勢いる。あまり畑違いな作品に手を出さない方が賢明に思えるのだが。
そういえば『愛のむきだし』のヒロイン、満島ひかりが女子高生役で出演していた。彼女が出てくると何か期待してしまうのだが、今回はワンポイントのゲスト扱い。ブリブリ演技に思わず笑ってしまった。
お父さんが、そして自分が。。と、それはあまりに辛い状況で少し気になりましたが・・・。
私は父をがんでなくしましたが・・・・・闘病は辛いもんです。。
by duke (2009-09-27 14:16)
『親より早死にするのは最大の親不幸』と一般的には言いますね。
子供が先に亡くなるのは親としてはとても辛いことなのですが、
決して『親不孝』ではないと思います。
僕も親ですが、自分の息子が先に亡くなったとしても、彼のことを
『親不孝』だなんて思いませんからね。
by bamboosora (2009-09-27 15:11)
末期癌の現場のリアルな映像化はなかなか難しいと思います。
救援の来ない、見捨てられた野戦病院のようでした...
by nexus_6 (2009-09-27 19:07)
この監督の作品には人の死がよく出てきますが、
その死は鮮烈なのに紗がかかっているような感じがします。
by CORO (2009-09-28 01:07)
dukeさん、こんにちは。
僕も母が癌で2度手術していますが、早期の発見だったので大事には至っておりません。親戚の何人かが癌で亡くなっているので家系的にそんな体質なのかなと思えます。僕も気をつけねば…。
by 丹下段平 (2009-09-28 08:07)
bamboosoraさん、こんにちは。
僕も子供が先に亡くなるのは仕方のないことだと思うので親不孝だとは思っていません。もっとも自ら命を絶つのは別ですが。
by 丹下段平 (2009-09-28 08:09)
nexus_6さん、こんにちは。
仰る通りですね。悲痛なだけかもしれません。しかし元気すぎるのもどうかなと思えました。
by 丹下段平 (2009-09-28 08:11)
COROさん、こんにちは。
全て観た訳ではないので確かなことは言えませんが、死の深刻さよりも、映画的な話の展開のための死って感じがします。
by 丹下段平 (2009-09-28 08:21)
ちゃんと伝える、ってチラシみたときは普通の映画そうだったけど、
監督の名前見たら園子温だったので変わった映画なのかな、と。
難病モノなんですね。どうしちゃったんでしょ？園さん。
自殺サークルなんて変な映画も撮ってるのに。
by なぎ猫 (2009-09-28 09:36)
園監督って今までの作品から変わった映画を期待してしまいますが、これは至って普通の作品を目指したものでした。こちらの方向性にシフトしていってしまうと淋しいですね。
by 丹下段平 (2009-09-29 08:18)