城崎温泉郷はテーマパークだった!(その2) [旅行]
※できれば(その1)からお読みください
旅館を出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。そして浴衣姿の人、人、人で凄い活気に包まれていた。これだけ和服姿の人の波を見る事は滅多に無い経験である。僕らは人の波に身を任せて御所の湯へと歩いて行った。
歩きながらあたりの様子を見てみると、どの宿も純日本的な旅館で、決して近代的なホテルといった建物が無いことに気が付く。しかもどの宿も同じ程度の規模で、こじんまりした温泉宿が軒を並べている。その宿の間に土産物屋や飲食店が営業しており、そして、
あった~! 射的! スマートボール! 手動式パチンコ!
しかも3軒くらい隣接していたのだが、どこも大人気で熱気ムンムン、大繁盛だ。こんな中にいるといったい今はいつだっけ? といった感じになってくる。
まるで昭和30年代の繁華街にタイムスリップしたみたい
な気持ちになってくる。しかもみんなが楽しんでおり、幸せな空気で満ち溢れている。
温泉街の中にある神社の境内ではお祭りのような催しが行われており、それを横目に通り過ぎると目的の御所の湯に到着した。和風の外観だが、いかにも出来たばっかりの綺麗な建物である。チケットを出し、下駄を脱ぐと係りの人がてきぱきとそれを整理する。脱衣所で裸になるっといよいよ温泉だ。人は多いが、館内も広いので充分対応できている。
館内は外との壁が開け放たれているため、中の浴槽と露天風呂とが繋がっており、その奥には滝が流れ落ちている。リニューアルされたばかりらしくサウナやジャグジーといった、いかにも今風な施設もあり、もう大満足である。少し長居し過ぎてのぼせそうになり、あわてて外に出た。浴衣に着替え玄関に行くと、まつや旅館の浴衣姿を見た係員が即座にマツや旅館の下駄を出してくれる。ふと時計を見ると花火大会まであと10分であった。僕らは来た道を少し足早に旅館方向に歩いた。
王橋まで来ると、みんな花火が打ち上がるのを足を止めて待っていた。僕らも王橋の上から花火を見ることにし、見易そうな場所を確保した。そして、いよいよ花火大会開始。夜空に大きな花火が広がる。ボーッとしながら眺めていると実に幸せな気分になってくる。
この、いかにも純日本的でレトロな世界が、いかに人々を優しい幸せな気分にさせてくれているか。いったい日本人は西洋的な近代化を進めて便利な生活を手に入れた代わりに、いったい何を失ってきたのだろうか
なんて高尚な事も考えてみたりした。
それにしてもこの空間を演出しているものは何か? これはただ事ではない。一軒二軒ではなく、街ぐるみでこの雰囲気を作り出しているはずだ。と、考えているうちに凄い計算された演出であることに気が付いたのだった。 (つづく)
城崎温泉HP→ここクリック
城崎温泉郷はテーマパークだった!(その1) [旅行]
気ままな旅だった。会社の同僚3人と自動車で、大雑把な予定しか立てずに日本海側を西に向かっていた。この日は三方五湖から天橋立を経て、城崎(きのさき)温泉に到着した。時間は午後7時を回っていた。
薄暗くなった街に柔らかな街灯の灯りがともっている。城崎温泉駅から温泉街の中心へと入って行くにつれ、浴衣姿の人影が増えていく。
情緒出まくってるな
と思わずもらしたのは誰だったか。とにかく進むにつれ浴衣姿で歩く宿泊客で、温泉郷は活気づいていた。
ここに泊まりたい
4人全員の意見は一致していた。とはいえ、こんな名のある温泉地に空いてる宿があるのだろうか。不安をよそに空室ありと書かれた看板があっさり見つかった。聞いてみると4人泊まれる事が分かり、即座にこの日はこの宿に決めた。今思えば実にラッキーな事に、たまたま泊まる事になったこの宿は、温泉郷のど真ん中に架かる王橋が目の前にある旅館まつやであった。
いかにも温泉宿らしい日本風3階建ての館内に入ると、部屋を用意してもらっている間に番頭さんから城崎温泉に関するレクチャーがあった。
温泉はこの旅館にもあるが、基本的には7箇所の外湯がメイン。外湯は11時まで。
外湯は城崎温泉の宿泊客は無料で入ることができる。但し無料チケットと旅館の浴衣と下駄の着用が必須。
全く下調べをしていなかった我々は、どうして浴衣姿の宿泊客が大勢歩いていたのかが、やっと理解できた。番頭さんの説明はさらに続く。
夏休み期間中の毎週火曜日と木曜日は9時から花火大会が催されている。
おお、なんとラッキー! 今日は火曜日だ! たまたま立ち寄ったにしては出来すぎだ!!
盛り上がる一同を番頭さんも誇らしげに見つめていた。間もなく部屋の用意が終わり、荷物を放り込んだらすぐに浴衣に着替え、外湯に向かった。下駄の音も軽やかに、番頭さんお薦めの、リニューアルオープンしたばかりの御所の湯へと向かった。 (つづく)
城崎温泉HP→ここクリック